商業施設は、変化する消費者行動や競合の多様化、技術革新など、多くの課題に直面しています。
人々の消費の在り方も大きく変化したことで、消費者は実店舗に単なる購買以上の体験を求め、これに応えるため商業施設は独自の体験価値を提供しなくてはいけません。それに加え、魅力あるテナントを誘致し、長期にわたり契約を維持するための試行錯誤も必要です。
また、デジタル技術の進化は、顧客データの収集と分析を通じて、よりパーソナライズされたサービス提供を可能にしましたが、これには高度な技術とプライバシー対策が求められます。
このような状況下で、商業施設を運営する企業が感じている優先課題とは何なのでしょうか。
今回、運営企業のご担当者様154人に「特に重視している・優先的に取り組みたいと考えている課題」についての、独自のアンケートを行いました。そのアンケートの結果をもとに、商業施設が抱えている課題について掘り下げていきます。
【アンケート概要】
調査期間:2022年8月~2024年4月
調査期間:自社調査
調査対象:商業施設運営企業のご担当者様
調査方法:アンケート調査
有効回答数:154人
ご担当者様154人に聞いた
「商業施設の優先課題」とは?
2022年8月~2024年4月にかけて、商業施設を運営する企業のご担当者様に、「特に重視している・優先的に取り組みたいと考えている課題は何ですか?(複数回答可)」というアンケートを継続的に実施したところ、最も多かったのは「リーシング」でした。ご担当者様154人のうち、実に50人ものご担当者様が課題として回答しています。
リーシング業務は、商業施設が新規オープン、リニューアルする際や空き区画が生じた際にテナントを誘致し、契約に至るまでの業務を指します。商業施設にとってリーシングは、業績に大きな影響を与えるため、非常に重要な業務です。このため、多くのご担当者様が課題を感じているという結果が出ました。
次いで多かったのが、「デジタル化」です。昨今、多くの業界でこの傾向が見られ、商業施設においても同様の取り組みが進められていますが、多くの業務がアナログなままということが伺えます。特に、商業施設はデベロッパー企業とテナント企業との間で必要なやり取りが多いため、デジタル化は迅速に対処すべき課題として考えられるでしょう。
次いで、データ活用、テナント支援、今後のビジネスモデル等が課題として回答されました。ここからは、課題として多かった「リーシング、デジタル化、データ活用」の具体的な内容と、「その他」の中で際立った回答をご紹介していきます。
※自由回答形式の内容を課題ごとにカテゴライズして集計しております。(複数回答含む)
【課題:リーシング】回答内容
・テナントリーシングについて、最近の好不調業種、好不調テナントなどを知りたい。
・圧倒的にリーシング実務者の育成が当社に限らず求められていると認識している。
・リーシング知識がない人間が多いこと。
・退店が続く中でのリーシングで十分にテナントへのアタックが出来ていない。小規模区画が多く、誘致に苦労している。
リーシングに対する回答の中には「経験不足・人手不足」という内容もいくつか見受けられました。ただ、リーシング全体に広く課題を感じているご担当者様が多く、商業施設運営における重要かつ難しい業務の1つであることが伺えます。
商業施設におけるリーシング業務の課題について深堀したアンケート、回答内容はこちらをご参考ください。
【商業施設運営企業のご担当者に聞いた】アンケートから見えたリーシングの優先課題(リゾーム調べ)
【課題:デジタル化】回答内容
・紙の受領証などには印紙税がかかります。近年、国税も拡大解釈して印紙税の課税強化を打ち出していますので、その点でもDX化は急務です。
・デベロッパーとテナント間のデジタル化が課題です。
・テナントからデベロッパーへ報告する際、「紙」を使用しておりますが、その廃止。
デベロッパー企業と、テナント企業とのやり取りを効率化するといった課題だけでなく、国の政策によりデジタル化が課題となったご担当者様も少なくありませんでした。また、紙の申請書などの保管に悩まれ、デジタル化を課題に挙げられているケースもありました。
商業施設のデジタル化課題、特にここでは売上報告、チェック業務について深堀したアンケート、回答内容はこちらをご参考ください。
【商業施設運営企業のご担当者様に聞いた】アンケートから見えた売上報告やチェック業務の優先課題とは?(リゾーム調べ)
【課題:データ活用】回答内容
・公式LINEはあるが、集客に対するデータ活用ができていない。そのためリーシングの際にも住民にとってどのような店舗が求められているか、売り上げを上げていけるかといったようなことがはっきりと見定められない。
・テナント管理システムに蓄積されたデータの活用が課題。
・データの収集はコストをかけて充実させているが、そもそも社員の知識としてデータの活用方法がまだまだ勉強及び意識不足。
データ活用が課題と回答されたご担当者様に共通していることは「活かしたいデータはあるが活用できていない」ということのようです。それらのデータを活用し、自施設のターゲット層に向けた集客や買い回り策などの効果的な販促やテナント支援につなげることが課題解決への糸口となりそうです。
【課題:その他】回答内容
・安心安全な施設づくりとして、AIを使ったサービス強化に取り組んでいる。
・SCの活性化などの案までAIにアイディア出しをしてもらえる時代にならないかなと思います。
・不動産管理業務の半自動化を目指し、生成AI以外のAIについては活用を行っている。ただ、生成AIの導入までは至っていないので、取り組みたいと考えている。
その他の中で際立ったキーワードとして、「AI」に関する内容がいくつか見受けられました。商業施設の課題を解決するには、AIを積極的に活用していくことが今後のカギになるのかもしれません。
商業施設の課題まとめ
商業施設を運営する企業のご担当者様に課題を聞いたところ、「リーシング」が最も多い結果となりました。リーシングは、商業施設の業績を左右する重要な業務だからこそ、課題として感じているご担当者様が多いのでしょう。
リーシングに次いで多かったのは「デジタル化」で、「データ活用」、「テナント支援」、「今後のビジネスモデル」と続き、「その他」ではAIに関する内容がいくつか見受けられました。
商業施設を取り巻く状況は多くの課題に直面していますが、それらに一つ一つと丁寧に向き合いながら、施設全体の魅力を高めるための持続的な改善とイノベーションを継続することが重要となりそうです。
リゾームでは、商業施設における運営業務をサポートする製品を多数ご用意しております。リーシング、デジタル化、データ活用など課題解決に向けたご相談などお気軽にお問い合わせください。
今後、商業施設の課題として回答されたリーシング、デジタル化(売上管理・賃料管理等)、今後のビジネスモデル等について掘り下げた内容も配信予定ですので、是非ご参考ください。
▼ 商業施設におけるリーシング業務の課題について深堀したアンケート、回答内容はこちらをご参考ください。
▼ 商業施設における売上報告、チェック業務の課題について深堀したアンケート、回答内容はこちらをご参考ください。