商業施設を運営するデベロッパー企業は、リーシング、ショップ支援、販売促進、デジタル化といった多岐にわたる課題を抱えています。
それらの課題を調査すべく、運営企業のご担当者様154人に「特に重視している・優先的に取り組みたいと考えている課題」についての独自のアンケートを行った結果、リーシング、デジタル化に次いで、「データ活用」が課題として挙げられました。
今回は、「データ活用」だけに焦点を当てた独自アンケートをもとに、ご担当者様が抱えている課題を掘り下げていきます。
さらに、日本全体のデータ活用率や海外との比較データも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
関連コラム|商業施設を運営するデベロッパー企業のご担当者様が抱える課題(アンケート)
商業施設運営に関する課題 編
リーシング業務の課題 編
売上報告・チェック業務の課題 編
【アンケート概要】
調査期間:2024年7月~2025年2月
調査期間:自社調査
調査対象:商業施設の運営および関連企業のご担当者様
調査方法:アンケート調査
有効回答数:53人
※独自アンケートの結果は後半で紹介します。
以下では、先にオープンデータをもとにした情報を掲載しています。
日本企業のデータ活用の現状と明らかになった課題
まずは、日本企業全体における、データ活用の現状と想定される課題について、詳細なデータをご紹介します。
データ活用ができる環境を構築している企業は
年々着実に増えている
出典:「企業IT動向調査報告書2024」(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)※78頁に記載
ビジネスシーンでは、データ活用の重要性がますます高まっており、その傾向は具体的な数値にも表れています。
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会が発表した「企業IT動向調査報告書2024」によると、データ活用の取り組み状況において、「組織横断的にデータ活用ができる環境を構築し、ユーザーが利用している」または「一部の事業や組織でデータ活用できる環境を構築している」と回答した企業の割合は、2019年度には60.1%でしたが、2023年度には70.3%まで上昇しました。
これにより、データ活用の基盤を整備している企業が着実に増えていることが分かります。
また、「データ活用に取り組んでいない」と回答した割合は、同期間で19.3%から10.8%まで減少しており、多くの企業がデータ活用に向けて前向きに取り組みを進めている状況が伺えます。
日本企業のデータ活用は進展するも、
他国との差はまだ大きい
総務省が発表した「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負 成果報告書 2024年」では、日本・米国・ドイツ・中国の企業を対象に、個人データ(顧客の基本情報、登録情報など)と個人データ以外(製品の稼働状況、利用状況など)の活用状況が調査されています。
出典:「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負 成果報告書 2024年」(総務省)※214頁に記載
まず、「積極的に活用している」と「ある程度活用している」を合わせた、日本企業における個人データの活用率は60%です。
それに比べて他国は、米国:96.5%、ドイツ:86.7%、中国:98.7%と、日本企業が遅れていることが分かります。
さらに、「積極的に活用している」と回答した企業の割合も日本は低く、米国や中国と比べると1/3以下にとどまっています。
出典:「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負 成果報告書 2024年」(総務省)※214頁に記載
個人データ以外の活用状況でも他国との差があり、日本は58.7%に対し、米国:89.6%、ドイツ:81.2%、中国:95.8%と大きな開きがあります。
また、2つの調査を通じて「活用する予定はない」と回答した割合は日本が最も高く、約13%の企業がデータ活用に前向きではないことが伺えます。
日本企業のデータ活用率は年々増加しているものの、依然として他国に遅れを取っているのが現状です。
データ活用の課題は収集・管理に係るコストの増大と
情報漏洩等のリスクが最多
上記のアンケートでは、データの活用状況だけではなく、各データを活用するにあたり、想定される課題や障壁についても調査されています。
個人データに関しては、「データの管理に伴うインシデントリスクや社会的責任の大きさ(データ漏えい等)」が最も多く回答されています。
次いで、「データの収集・管理に係るコストの増大」「個人データの定義が不明瞭であり、線引きが難しい」が多く、上位3つの課題は他国と共通する結果となっています。
個人データ以外に関しては、「データの収集・管理に係るコストの増大」が最も多く、「データの管理に伴うインシデントリスクや社会的責任の大きさ(データ漏えい等)」「データの利活用方法の欠如、費用対効果が不明瞭」がそれに続きました。
このように、個人データ・個人データ以外のどちらにおいても、データの収集・管理に係るコストの増大と情報漏洩等のリスクに関する課題が企業共通の懸念点となっていることが分かります。
出典:「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負 成果報告書 2024年」(総務省)※215~216頁に記載
商業施設のご担当者様に聞いた
データ活用の課題とは?
ここまでは、日本企業全体のデータ活用についてお伝えしましたが、ここからは商業施設に焦点を当てて、データ活用についてさらに掘り下げていきます。
弊社では、商業施設を運営する企業や関連企業のご担当者様に対して、「データ活用において、特に重視している課題は何ですか?(複数回答可)」という独自アンケートを継続的に実施しました。
その結果、商業施設のデータ活用における課題として最も多く挙げられたのは、「データの活用方法」でした。
次いで、「分析スキルの不足」が多く、この2つは半数以上のご担当者様が課題として感じていることが分かりました。
他にも、「社内におけるデータ活用文化の醸成」「データ精度・質」「データの可視化」などが課題として挙げられました。
また、日本企業全体では、漏洩のリスクなどの課題が上位でしたが、そのリスク以上に商業施設においてはデータ活用の難易度やそれに伴う分析スキルの重要性が課題となっていると考えられます。
ここからは、半数以上のご担当者様が課題として挙げた「データの活用方法」と「分析スキルの不足」について、その解決策を詳しく見ていきます。
データの活用方法:解決策
データの活用方法に課題を感じているご担当者様の多くが、「データはあるが、具体的にどのように活用すべきか悩んでいる」という状態かと思います。
この課題を解決する方法の一つとして、同業他社のデータ活用事例を参考にすることが挙げられます。そこで、ご担当者様の課題解決の参考となるよう、商業施設などでデータが活用されている事例をいくつかご紹介します。
1つ目は、売上や販促結果などのデータをショップ向けに活用している代表的な事例です。
ある商業施設では、ショップ向けに直近の売上状況や同業種との売上比較、実施中のイベント状況、販促施策への反応状況などのデータを定期的に提供しています。その際、朝礼や店長会といった場やITツール等を活用し、多くのショップに効率よく情報共有が行われています。
また、この施設はショップごとの売上状況をまとめた「ショップ別レポート」も作成しています。このレポートには売上データだけでなく、施設のポイントカード会員情報も紐づけられており、来店客の年齢や性別などの属性まで把握できるため、ショップはターゲットを明確にしたイベントやキャンペーン施策の立案に役立てることができます。
実際に、特定の年齢層や性別を意識した販促施策に活用することで、売上や顧客満足度の向上に成功した事例も生まれています。
2つ目は、「人流データ」を活用した事例です。 近年、商業施設でも人流データの収集が進んでおり、これを基にした多様な施策の立案・検討が行われています。
例えば、顧客の導線を分析し、ショップのゾーニングを最適化する取り組みや、ターゲットの居住地域を分析し、広告の配布エリアを最適化することなどが挙げられます。こうしたデータ活用は今後さらに広がっていくと期待されています。
データを有効に活用するには試行錯誤が必要ですが、戦略的に取り組むことで商業施設の価値向上につなげることができます。
分析スキルの不足:解決策
データの活用方法に課題を感じている方の中には、その背景として分析スキルの不足があるケースも少なくありません。
例えば、精度の良いデータを収集できていても、適切な分析ができなければ、十分に活用することが難しくなります。データを正しく分析することで、売上向上や集客強化につながる可能性があるため、分析スキルの不足を解決することが重要です。
分析スキル不足を解決する方法の一つとして、まず分析ツールの導入が挙げられます。
目的や求める分析結果に適したツールを選定することで、データの集計や可視化を効率的に行え、専門的なスキルがなくても正確な分析が可能になります。
また、現在使用しているツールが古い場合、操作性の悪さや処理速度の遅さが課題となり、分析作業に時間がかかることがあります。より直感的で誰でも操作がしやすく、処理速度が向上したツールに切り替えることで、分析作業の効率を図るとともに、特定の担当者のスキルに依存しない仕組みづくりにもつながります。
さらに、外部企業にデータ分析を依頼する方法もあります。高度な分析が可能になるメリットがある一方で、ノウハウが社内に蓄積されにくく、継続的なコスト負担が発生するため、自社の状況に応じた選択が求められます。
総じて、分析スキルの不足を解消することが、データ活用の効果を高める重要なポイントとなりそうです。
データ活用に関する課題は
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リゾームでは、アンケートで浮き彫りとなった「データ活用」に関する課題を解決するソリューションを多数揃えております。
「分析スキルが不足している」「データを可視化できていない」などの課題をお持ちのご担当者様は、お気軽にお問い合わせください。
▼顧客分析システム
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▼デベロッパーマネジメントシステム
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商業施設、ショップの売上・賃料分析に特化した
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データ活用の課題まとめ
商業施設を運営する企業や関連企業のご担当者様にデータ活用の課題を聞いたところ、「データの活用方法」と「分析スキルの不足」が際立って多い結果となりました。
この2つの課題は密接に関係しており、どちらかに課題があると、データを十分に活用し、成果を最大化することができません。
課題が散財する中、全てを解決することは難しいですが、商業施設の価値を高め、持続的な成長を実現するには、データ活用が不可欠です。
適切なデータ活用により、売上向上や業務効率化、顧客満足度の向上といった具体的な成果が期待できます。まずは、自社にとって優先度の高い課題を見極め、できることから少しずつ取り組んでいくことが重要となりそうです。
リゾームでは、商業施設における運営業務をサポートする製品を多数ご用意しております。データ活用以外にも、運営業務の課題解決に向けたご相談などお気軽にお問い合わせください。