社長の一言集

第45号 魔がさす

2010/02/25
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  魔がさす
                                            2010年45号
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数年前に、松下幸之助翁の愛弟子であり"ミスターファックス"と呼ばれた
木野親之先生から「経営の道」について教えて頂いた事があります。
経営者が絶対やってはいけない、人を騙す「邪道の経営」。
次に、我が世を謳歌する圧倒的な力による「覇道の経営」。
競合のない世界でのブルーオーシャン戦略の「王道の経営」。
世の中への貢献、人の幸せを目指す究極の「天道の経営」です。

今回のトヨタ社のリコール問題は、
この経営の境地が問われた瞬間でもありました。
経営は常に"魔"との戦いです。
魔とは、正しい判断・行いをしようとする時に出てくる邪(魔)の心です。
人は、誰しもが生身の人間ですから、当然欲望があり、本能があります。
そうした中、突然襲ってくる"魔"との戦いにどうやって勝っていくのかが
「経営の道」の分かれ目なのかもしれません。
限られた情報の中での私の見解ですが、トヨタ社が今回一番守ろうとしたのは、
顧客(命)の声より「品質のトヨタ」というブランドではなかったのか、という事です。
品質、ブランドに対する過去の圧倒的評価により生まれた自負と、
ブランドに傷がつく恐れ。そのためらいが対応を遅らせ、
問題を更に大きくしたのではないでしょうか。
正に"魔"がさしたように私には感じられました。
しかし、トヨタ社は真面目な企業ですから、逆境をしっかり受け止めて、
更に素晴らしい会社に発展される事と思います。

逆境の越え方について、
ある雑誌で京セラ名誉会長・稲盛和夫氏が語られた言葉があります。
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いまから十年前のこと、ちょうど第二電電を始めにかかっておりましたときに、 
京セラ人工骨問題が起こったんです。 
(略)
そのときに悩んで悩んで、妙心寺派の何代目かの管長になる資格を持った老師さんが
円空寺というところにおられて、大変親しくさせていただいておりますので、 
そこへ行って、
「老師、こういうことが起きてきて......」と話しましたら、
ケロッとして、「それはあなたが生きているからですよ。 」
生きてているから、そういう事になる。いいじゃありませんか。」という。 
生きているからって、そんな人ごとみたいに言われたって、 
連日、新聞・雑誌で書かれて、身も心も置きどころがないように思っているのに、
老師はケロッとして「生きているからです。」と言う。 
ただ、そのときのその次の言葉に救われました。 
「それはカルマがとける時なんですよ。だから喜ばなければいけません。 
あなたが背負っていたカルマ、業が、その程度のことで消えるなら、
ありがたいことじゃありませんか。人間、どんな災難があるかもしれない。 
その中で、その程度で終わるなら、ありがたいことです。 
だから、災難を、災難と思って苦しむのか、
災難をその災難によって 自分がしょってきた業が消えるんだと思えば、
赤飯炊いて喜ばなきゃならんことだ」と言われて救われました。
 
だから、私は本当に不幸に見舞われて、 身も心もないという人には、そう言って
あげるんですよ。 
「業が消えるんです。だから、その程度のことだったらいいじゃないですか。」と。 
本当に偉い方っていうのは、一般に不幸と思うことを良いほうへ取っていらっしゃいますね。
これは本当に大事なことです。
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人生で失敗したことが無い人間は皆無です。
人も会社も、大なり小なり多くの失敗を経験しています。
どんな失敗でも前向きに受け入れ乗り越えるコツを掴んだ人(経営者)は幸せです。
人の幸せ、会社の目標は、失敗しない事ではなく、
失敗を糧に成長する事なのではないでしょうか。
今という時代は過去の延長線ではなく、新しい時代が始まっているようです。
歴史でもなく、資金力でもなく、規模でもなく、「人」の時代です。
その「人」の持つ大きな要素は、「前向きな素直さ」に尽きると私は思います。

                        株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光

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