社長の一言集

第206号「侍ジャパンはなぜ勝てたのでしょうか?」

2023/08/30

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「侍ジャパンはなぜ勝てたのでしょうか?」

                2023年206号
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暑い夏を更に熱くした第105回全国高校野球選手は、神奈川の慶応高校の107年ぶりの優勝で幕を閉じました。
今年は、WBCでの侍ジャパンの優勝、大谷翔平選手達の大活躍で、野球に感動し、愛する人たちが増えてきているようです。
侍ジャパン監督の栗山英樹氏の当時の思いが書籍になっていましたのでご紹介します。


侍ジャパンの監督だった栗山英樹氏執筆の『栗山ノート2 世界一への軌跡』光文社刊より
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無私道
侍ジャパンはなぜ勝てたのでしょうか?これまで何度も受けてきた質問です。
14年ぶりの世界一奪還を果たしたいまなら、勝因をあげることはできます。
ただ、どの試合も簡単ではありませんでした。
特に準決勝と決勝は本当に紙一重で-----薄紙一枚ほどの差が勝敗を隔てたと感じます。
結果が求められる大会だからこそ、やはり過程が大切です。過程にこだわるから
ドラマが生まれ、そのドラマが唯一無二の美しさを放つ。
人はなぜ生きるのかと問われて、「誰かに喜んでもらうために」と答えた方がいました。
そのとおりだと思います。

野球が日本で盛んになった昭和初期、競技の本質はこう教えられていました。
無私道-------。
己を捨てて、チームを、チームメイトを生かす道を究める。
人として大切なことを学び、身につけ、教え、広めることができるからこそ、
野球はかくも長きにわたって愛され、多くの人たちに感動を届けてきたと思うのです。
侍ジャパンとして戦ってくれた選手たちは、己のプライドを脇に置いて、日本野球のためにすべてを懸けてくれました。
彼らは甲子園出場を目指す球児のようなひたむきさと謙虚さ、それに我慢強さを持っていました。

(中略)

私自身は、難しい決断の連続でした。最適解を探し当てたつもりでも、すべての決断にはプラスとマイナスの要素が共存しています。
見えている事実の表層だけで判断すると、チームの利益を損ねてしまったり、デメリットを生じさせたりしてしまうことがあります。
複数の選択肢のなかで、どれを選ぶのか。突き詰めて考えると、日常の生きざまが導きになると思えてなりません。
私たちが幼少期に祖父母や両親から教えられた、人間としての道標-----正直に生きなさい。嘘をついてはいけない。
人に迷惑をかけてはいけない。感謝の気持ちを忘れずに過ごしなさい。ゴミが落ちていたら拾いなさい。
そういった小さな営みを、自分の生活に丁寧に織り込んでいく。
それによって、自分が目ざすべき方向へ、自然と導かれていくと感じるのです。

優勝後のシャンパンファイトや記者会見までが全て終了したところで、翔平が監督室に入ってきました。
「監督、写真撮りましょうよ」
彼がファイターズを離れるときも同じでした。二人で写真を撮りました。
私たちは多くを語りあう関係ではありません。
けれど、心が通じ合っているという感覚は、おそらく共有できています。
言葉が行き来しなくても、胸にはほんのりとした温もりが広がるのです。
彼はきっと、「最高の時間でした!」と思っているに違いない。そして私は、「こういう戦いがしたかったんだな」と感じました。
写真を撮り終えると、私は翔平に言いました。
「今回がオレの最後のユニフォームだから、それに関しては本当に感謝している。ありがとうな」
翔平は少し驚いたような表情を浮かべて、いたずらっぽい笑みをこぼしました。
「え、何言っちゃってるんですか?3年後もやればいいじゃないですか」
------そんなことを言ってくれましたが、私は笑みを返すだけにとどめました。

翔平をはじめとする侍ジャパンの選手たちは、これからも「新しい何か」を求めて自分を磨いていく。
それはとても険しい道のりなのでしょうが、大好きな野球に精いっぱい打ち込めることが、とても羨ましく、眩しく感じられました。
翔平に返事をしない代わりに、私は心のなかでエールをおくりました。
翔平、誰も歩いたことのない君の旅が、また明日からはじまる。
自分自身との勝負は、まだまだ続く。 
これからだよ!
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人生には、色々な困難、苦難がありますが、自分は犠牲者だと悲観して取り組むと「人生の消耗」です。
しかし、志を持って「誰かに喜んでもらうために」という取り組みだと「人生を磨く」ことができます。
同じ出来事が、人によって天と地の開きがあるのですね。
栗山監督の、正直に生きなさい。嘘をついてはいけない。人に迷惑をかけてはいけない。は、京セラの故稲盛会長の数々のお言葉と重なっています。
一流と言われる人々は、共通して仕事以上に人間としてどうあるべきかをきちんと持っておられるのですね。
昔の日本人の大切な教えでしたから。
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台湾にはいまも「日本精神(リップンチェンシン)」という言葉があるんです。
真面目、勤勉、正直、無私などを総称していうのですが、その言葉が根づいたのは、
やはり台湾に来ていた日本人が「日本精神」でもって台湾の近代化に尽力してくれたからだと思います。
                                台湾の元総統、李登輝氏の言葉

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株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光