社長の一言集

第199号「イバラの道でも進むべき道がある」

2023/01/30

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「イバラの道でも進むべき道がある」

                2023年199号
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2023年も、早一ヶ月を過ぎようとしています。

メディア等では、コロナ禍、悪いインフレ、ウクライナ問題等で、多くの企業が景気後退の到来を予測しています。
しかし焦点は景気後退が来るかどうかではなく、それがどの程度深刻なものになるかです。
今までに経験したことのない大きな嵐に備え、大手テック企業は躊躇なく、人件費の大幅な削減に取り組み始めました。
イーロン・マスク氏が買収したツイッター社従業員の過半数にあたる3,700人をはじめ、メタ(旧FB社)の11,000人、アマゾン・ドット・コム社18,000人、マイクロソフト社ですら、3月までに10,000人の解雇を発表しています。 

アマゾンの経営陣は全社会議で、「さらなる倹約を徹底」するよう従業員に通達しています。
どこまで深刻な状態になるか、予測がつきません。ショックは複雑に絡み合い、まさに負の連鎖です。

① コロナショック(景気減速・倒産増加・DX対応の企業格差・経費削減等)
② ポピュリズムショック(政治の劣化:崩壊・暴徒・独裁・大衆への迎合)
③ 気候変動ショック(異常気象・甚大化する自然脅威・食料・水・エネルギー問題)
④ インフレショック(物価高・特に電力等エネルギーの高騰・生活困窮・企業業績減速)
⑤ 人口ピラミッドショック(超高齢化・少子化・労働人口減少・人材の争奪戦)

このような中、日本の代表的グローバル企業トヨタの豊田章男社長の2023年頭あいさつがとても心に響きました。

「イバラの道でも進むべき道とは」 2023年 豊田社長年頭あいさつ( toyotatimes.jp)
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(前略)
いま、私たちは、「何が正解かわからない時代」を生きています。
その中では、これまでに経験したことのない「危機」に直面することがあります。
その時、必ず、私たちの前には「2つの道」が現れます。

「短期的な成功や一発逆転を狙う道」と「自分たちに強さをもたらした本質・思想に立ち戻る道」です。

13年前、赤字転落やリコール問題という会社存亡の「危機」に際し、私は後者を選びました。
トヨタの思想、すなわち「もっといいクルマ」をつくり、各地域のステークホルダーに愛され、
必要とされる「町いちばん」の会社を目指す道です。
言い換えれば、「商品」と「地域」を軸にした経営ということになります。

これは、ものすごく時間がかかり、すぐに評価されることのない道です。
むしろ、短期志向の人たちからはバッシングを受けます。
いわば、「イバラの道」でした。

この13年間、皆さんと一緒に「イバラの道」を進む中で、私自身が「現場」に立ち、
自らの「行動」で、「トヨタの思想」を示し、大切にすべき「価値観」を変えてきたと思っています。

(中略)

私たちが目指すべきは、「幸せの量産」であり、「もっといいクルマ」をつくり、
お世話になっている「町の人たちを笑顔にする」ことです。

そのために、トヨタの価値観を変えようと努力してまいりましたが、なかなか変わりません。
それが私の本音であり、一番の悩みでもあります。

「本社」よりも「地域」
「会議室」ではなく「現場」
「肩書」ではなく「役割」
「決裁」ではなく「相談」
「説得」ではなく「共感」

仲間と一緒に挑戦し、一緒に失敗し、一緒に改善をしていく。
みんなで努力して、そんなトヨタをつくってまいりたいと思います。

「サラリーマン」という仕事はありません。皆さんの仕事は「クルマ屋」です。
トヨタの思想と技と所作を身につけた、町いちばんの「クルマ屋」を目指して、努力を続けてほしいと思います。

そして、皆さんが危機に直面したときは、「もっといいクルマ」「町いちばん」「自分以外の誰かのために」
この3つを道しるべに、行くべき道を選んでいただきたいと思います。

たとえ、それが「イバラの道」であったとしても。
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この豊田章男社長の2023年の年頭あいさつには、ITやAIという言葉は出てきません。
ITやAIは、経営にとって当然必要なことですが、あくまでも手段なのです。
企業として常に目指すべきは「もっといい商品づくり」、「目の前のお客様に笑顔になっていただく」、「利他の実践」だと、私なりに解釈させて頂きました。

人、会社の真価が問われる最も大事な場面を「正念場」といいます。
その場面は、誰も経験したことのない、先が読めない生死を賭けた場面です。
最後は、正しい心で、決断、実行をしなければなりません。
それを果たし、未来を創り出すことが今からのリーダーです。


坂村真民(仏教詩人)『坂村真民一日一言』(致知出版社)より
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「危機の中で 人は成長し 危機の中で 人は本ものになる」
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1月26日、トヨタ自動車は4月1日付けで豊田章男社長が代表権のある会長に就任し、佐藤恒治執行役員が社長に昇格する人事を発表しました。
日本の自動車産業の未来のためにご活躍を期待します。


株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光