社長の一言集

第197号「目的意識をもって生きるという人生が一番つまらない」

2022/11/29

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「目的意識をもって生きるという人生が一番つまらない」

                2022年197号
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どんな時にも揺るぎ無く、独自の人生観、人間観、仕事観を持った人物がいらっしゃいます。

出口治明氏(生涯1万冊以上を読破し歴史と知の巨人、元ライフネット生命保険会社創業者・現立命館アジア太平洋大学<APU>学長)です。
出口氏は昨年、脳卒中で生死をさまよい、その後毎日3時間のリハビリをおこない、見事に社会復帰を果たされました。身体・言語障害を負いながらも、以前よりも精力的に社会活動に邁進されています。
その出口氏は、その苦難を経ても「無条件で楽しい」、「何も変わることはない」と淡々と語られます。

「運命に抗うなかれ『偶然』に適応する力」
「Letter 未来の日本へ by河合香織」月刊誌『Wedge』2022年11月号より抜粋
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運命に抗うなかれ「偶然」に適応する力

「目的意識をもって生きるという人生が一番つまらない」
人生に目標を立て、それを達成し、自分の人生をコントロールしていく。そういう考えを、出口は病気になる以前から一貫して否定してきた。
還暦でベンチャーを立ち上げ、古希で多国籍な大学の学長になったことは、出口が選択してきたように見えるが、実はすべて「偶然」だったという。ベンチャーは助けを求められたから関わり、学長も国際公募に推挙されたからだ。
大切なのは、川の流れに抗うことではない。このような「偶然」を受け入れることだと考えてきた。

「しょせん、人間の考えることなんて大したものではないんです」
出口は、人類学者のレヴィ・ストロースの言葉を紹介する。
<世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう>(『悲しき熱帯』)
世界というものは、人間の意思や認識などとは関係なく、勝手に始まり勝手に終わる。そのような運命に人間ごときがどう抗っても無意味だ。

出口は自分の運命を受け入れた。その思いをダーウィンの進化論に重ねる。
人間を含めて地球上の生物は適応、つまり何かが起こった時にどう対応するかを重ねて進化してきたという。
出口は不自由になった体ですぐに適応した。リハビリを進めていく上で、「歩く」ことと「話す」ことのどちらを優先するかを選ばなければならない場面があった。出口は歩行よりも"言葉"を重視した。歩くことは車椅子で代替できるが、話すことは学長復帰のために必要なことだと判断したからだ。

「偶然に対応できたものだけが生き残る。計画的に進めようとしても、その先に何が起こるかは誰にもわからない」


それは病だけではない。新型コロナウイルスの蔓延で、人々の生活は大きく変わった。ソーシャルディスタンスやテレワークが当たり前になり、社会は新しいライフスタイルに適応した。
「今回のパンデミックのような自然現象は、いずれまた起きるでしょう。その時、過去はどうやって対応したかを知っておくことで、生き残れるかが決まる。歴史を学ぶ大切さは、これに尽きます」

自分の人生を切り開いてきたと自負する人は、得てして人間の意思を重要視しがちだ。
しかし、大きな世界の流れ、歴史の流れ、地球の流れからみれば、生物の一生というものは偶然の持つ要素が大きいと出口は言う。
その偶然に、いかに適応するか。「運と適応」こそが本質だ。
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今ほど、未来についてどうなるか分からない、予測もつかないという時代はありません。
人には、宿命と運命があります。宿命は変えられません。いつ、どの国(地)に、どの親のもとに生まれてくるかは自分の意思では変えられない。今風に言えば「親ガチャ」です。

しかし、運命は変えることが出来ます。与えられたいかなる環境の中でも、努力、偶然、ご縁の組み合わせで変えるチャンスが訪れます。正に生き残りをかけた変化・適応のタイミングです。
しかし、チャンスをどうとらえ、それをどう活かすかには大きな個人差があります。

『偶然を奇跡に変える17のルール』(オグ・マンディーノ)
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「恵まれている点に目を向ける」
「給料以上の働きをする」
「過去の失敗や不幸を引きずらない」
「1日の労苦は円満な家庭で癒す」
「楽天的考えを土台に今日という日を築く」
「行動に自分を語らせる」
「"今日の不幸"に"明日の幸福"の邪魔をさせない」
「時間は"小事"に浪費せず"大事"のためにとっておく」
「"今日は自分の最後の日"と思って生きる」
「"今日1日限りの命"のつもりで人に接する」
「自分や人生を笑う心のゆとりを持つ」
「小さなことをおろそかにしない」
「毎日、朝を笑顔で迎える」
「大きな夢も毎日、少しずつやれば達成できる」
「人生を取り仕切るのは、あなた」
「災いの中に"福の種"を探す」
「真の幸福はあなたの内にある」
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稲盛和夫氏(元京セラ名誉会長/日本航空名誉会長)の言葉にも味わいがあります。

「人生の節々で善きことを思い、善きことを実行していけば、運命は善い方向へと変わっていく」

偉人達には、宿命、運命の向こうに目標以上の天命があるのですね。

「人間力とは、どんな時も、何があっても、その運命を楽しめる力」にほかなりません。

株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光