社長の一言集

第196号「良き日本になる木」

2022/10/27

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「良き日本になる木」

                2022年196号
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江戸時代に「金のなる木」という話が庶民の間で流行りました。

ある時、徳川家康が家臣に「金のなる木を知っているか?」と尋ねました。
しかし、誰一人として知る者はいなかったそうです。
そこで、家康はおもむろに自ら筆をとり、三本の幹を描き、それぞれの幹に
「しようじ木(正直)」
「じひぶか木(慈悲深き)」
「よろずほどよ木(よろず程良き)」と書き、
この三つの木を常に信じ、実践すれば、必ず富貴になれると諭しました。

すると、側近の細川三斎が御前に出て、幹の左右にこのように枝を付けてはいかがでしょうと進言し、
「あさお木(朝起き)」
「いさきよ木(潔き)」
「しんはうつよ木(辛抱強き)」
「ゆたんな木(油断なき)」
「かせ木(稼ぎ)」
「ついえのな木(費えのなき)」
「やうしやうよ木(養生良き)」
「かないむつまし木(家内睦まじき)」を書き加えたそうです。

これは家康の「金のなる木」の教えですが、400年後の今、「良き日本になる木」に例えても良い木がありそうです。
「いさきよ木(潔き)」は、日本国の自立による国際社会の平和、安定のための貢献の木
「しんはうつよ木(辛抱強き)」は、成功するまで諦めない粘りと、信じきる木
「ゆたんな木(油断なき)」は、世界で不足するエネルギー、食糧、水問題に早急に備える木
「かせ木(稼ぎ)」は、未来の成長事業育成と、生産性向上、実質賃金の増額の木
「ついえのな木(費えのなき)」は、政治、税金の無駄遣いを削減する木
「やうしやうよ木(養生良き)」は、元気で健康年齢の長い現役高齢者を増やす木

しかし、どの木を育てるにしても強い推進力、交渉力含めインテリジェンスが求められます。


『一日一話読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』 致知出版社より
<国際情勢を見る四つの要諦> 中西輝政 京都大学名誉教授
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日本の政治とメディアの未成熟さの背景について述べておきたいことがあります。

昔から、政治・外交上の優れた知恵を大切にしてきたイギリスでは、世界の政治や外交、経済の動きを正しく見る場合、「四つの要諦」があるといわれてきました。

第一に物事の動きはできるだけ早く見つけること。
二つ目には、見つけたら、なるべく時間をかけておもむろに行動すること。
第三に、交渉の局面に入ってくると、常に粘り強く主張し、それでいて時至れり、となれば、行きがかりを捨てて潔く譲歩すること。この四つです。

日本で政治・外交上の決断や行動の選択が遅れる原因は、得てして日本人の慎重さが災いすることも多いのですが、それだけではありません。
それ以上に重要な問題として、情報の収集力、分析力、つまり国や企業でいえば、インテリジェンスの能力が著しく欠落していることが挙げられます。

集団や組織のリーダーは時代の局面を敏感に読みながら、当面の問題には堅実で的確な手を打ちつつも、状況の変化によっては時に自説を覆してでも柔軟に対応していく力が求められます。
そして、その鍵を握るのがインテリジェンス能力なのです。

歴史上の優れたリーダーたちが国を揺るがす出来事に遭遇しながらも、それを見事に乗り越えていくことができたのは、何をおいても情報への敏感さと判断の柔軟さによるものであり、その陰で正しい判断を得るために情報収集に人一倍エネルギーを割いていたのです。

大変残念ながら、政治家に限らず現代の日本のリーダーたちのインテリジェンスに対する、この「生きるか死ぬか」というほどの意識は極めて希薄であると言わざるを得ません。

私は国際情勢を正しく見る上での「四つの要諦」について述べましたが、
物事を「早く見つけ」、
それでいて「じっくりと行動」に移し、
交渉に入ると、「粘り強く交渉」し、しかし時至れり、となると、一挙に「潔く譲歩する」。
これは政治や外交に限らずどの組織のリーダーにも必要な行動の哲学といえるでしょう。

これらの言葉は一見、相矛盾しているようにも思えます。しかし、そこには一本の軸が貫かれています。
それは「タイミング(時機)を読む」ということです。行動するにしても譲歩するにしても、時機を逸してしまうようでは成るものも成らなくなるからです。そして、この時機を正しく読むために欠かせないのが何よりも情報力なのです。

日本人はこれまであまりにもインテリジェンスの重要性について無知でした。
政治のリーダーだけでなく、それぞれの分野のリーダーたちが、この我われの欠点を克服し、情報への感覚を研ぎ澄ましてゆくことで、日本全体が新しいステップに立つことができるようになると私は強く確信しています。
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このメルマガも今回で196回を迎えさせて頂きますが、約16年の期間で、これほど世界規模で大きな混迷、リスクを抱えた時代はなかったと思います。

「Risk(リスク)」という言葉の語源は、イタリア語の「Risicare(リジカーレ)」で、意味は「勇気を持って試みる」ということだそうです。

今こそ、「良き日本になるための木」をしっかり育てる事が必要です。「四つの要諦」も含め、多くのリスクの中、勇気を持って這ってでも前進しなければいけません。


戦いでは強い者が勝つ。辛抱の強い者が。

徳川家康 

株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光