社長の一言集

第194号「真剣だと知恵が出る。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳ばかり。」

2022/08/29

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「真剣だと知恵が出る。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳ばかり。」

                2022年194号
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第104回全国高校野球選手権大会が8月22日に終了しました。優勝は東北勢として初の頂点に輝いた仙台育英でした。今年は見応えのある試合が多かったですね。昨年12月にイチローさんの臨時指導を受けた高松商業の活躍も見事でした。イチローさんは「高校野球は野球をやっている。高校野球はひたむきにボールを追いかけて、一点を取りに行く野球の原点がたくさん詰まっている。」と言います。そして、指導先で実際に、球児と一緒に全力で投げて、走って、打ってと、常に体を張って楽しんでいます。又、アジア選手で史上初めてマリナーズの球団殿堂入りが決まり、引退から5年後、資格初年度の2025年は、アジア選手で史上初めてのアメリカ野球殿堂入りが見込まれています。月刊誌「致知」2019年10月号 料理評論家山本益博氏『イチローに学んだこと』より一部抜粋------------------------------------------------------------------------------------------ ◆準備の徹底は言い訳をしないためイチローさんを語る上で、もう一つ外せないのが「準備」に関する話だ。私は年に一度マリナーズのホームグラウンドまで足を運んで彼の姿を見に行っていた。最初は彼の守備位置であるライトがよく見える一塁側の観客席に座っていたのだが、ある時、ベンチの中で何をしているのかが気になり、三塁側の観客席から双眼鏡で覗いてみた。すると、味方の攻撃中ほとんどベンチにいないのである。守備を終えてベンチに戻ると、すぐロッカールームに降りて行ってしまう。次のイニングに備えてストレッチでもしているのかと想像していたものの、本人に確認すると実際はそうではなかった。ロッカールームにアンダーウェアを十数枚置いてあり、毎イニング着替えているというのだ。「他の選手はやるんですか」「いや、僕だけだと思います」「どうしてやっているんですか」「汗が冷えて次のイニングに体調が変わるといけないので、用心のために着替えています」スポーツに留まらず、どの世界でも準備の大切さを語る人は多い。しかし、ここまでやるかというくらいに準備に準備を重ね、怠らず徹底している人はいないだろう。なぜ準備をするのか。彼の言葉が忘れられない。「言い訳を最小限度にするため」例えば、前の日にグローブの手入れを怠ったとする。翌日の試合にたまたま守備でミスをすれば、「昨日グローブの手入れをしなかったからだ」と、つい言い訳をしてしまうのが人間の弱さだ。それを許さないのは、これもやはり情熱を燃やしているからだと感じる。◆苦しみを越えた先に本当の楽しみがある引退会見の際、「貫いたものは何ですか」との記者の問いに、イチローさんは「野球を愛したこと」と言った。続けて、野球が楽しかったのは子供の頃からの夢が叶い、プロ野球選手になって三年目までだったと答えた。三年目というのは仰木彬(あきら)監督がオリックスの監督に就任し、初めてレギュラーとして使ってもらえるようになった年。それ以降は周囲から実力以上の評価をされることがしんどくなったという。また、アメリカに渡ってからも孤独を感じて苦しんだことが多々あったと述懐していた。そんな彼が引退会見の締め括りに話してくれた言葉を最後に紹介したい。「辛いこと、しんどいことから逃げたいというのは当然のことなんですけど、でもエネルギーのある元気のある時にそれに立ち向かっていく。そのことはすごく人として重要なことではないかと感じています」少年野球を始めた頃からプロ二年目までは言ってみれば「ホビー」のレベルの楽しみ。プロフェッショナルの楽しみではない。プロというのは実績で全て評価されるがゆえに、他の人が経験したことのないくらい努力して、苦しみも人一倍味わい、その中から突破口を見出し、乗り越えた先に本当の楽しみがある。苦難や逆境を楽しみに変える可能性を信じて精進し続けられる人が超一流プロであり、イチローさんはその最たる存在に他ならない。彼は一見クールに映るが、あれだけハートが燃えていて、最後まで諦めずに野球道を探求した人がいるだろうか。情熱家という言葉が似合わないようで最も相応しいと思っている。私たちが彼の生き方から学ぶべきことは多い。------------------------------------------------------------------------------------------「言い訳」について、故野村克也監督の残した言葉があります。『野村の「監督ミーティング」』(日文新書・日本文芸社) 橋上秀樹氏著より一部抜粋------------------------------------------------------------------------------------------目の前にある現実を好転させるためには、自分が変わるしかない。「最大の障害は、実は自分自身のなかにある」というのが教えだった。合言葉は「言い訳は、進歩の敵」。仕事、人生は結果でなくプロセス重視である。プロ野球とは、結果がすべての世界である。しかし、野村監督は、仕事も人生も、結果主義ではなく、プロセス主義が大切だと訴え続けた。平凡なことを継続することこそが、非凡なる結果への道なのだ。常に考えながら、テーマをもって取り組むことが、練習において重要だ。------------------------------------------------------------------------------------------今、日本では過去の不正、重要な備えに対する怠り等で、数々の問題が露呈しています。責任者不在の「間の抜けた言い訳」にどのような結末が待っているのでしょうか。真剣だと知恵が出る。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳ばかり/武田信玄公「言い訳」の戒めは、世代を超えて通じるところがあります。いつの時代も、「言い訳上手」には成長も、信頼もありません。株式会社リゾーム代表取締役 中山博光