社長の一言集

第190号「65年前の "トランスフォーメーション" 」

2022/04/27

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65年前の "トランスフォーメーション"

                2022年190号
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今まで私たちが経験したことのない時代の到来です。日本の歴史的変革は、諸説があると思いますが 私は、明治維新、戦後、そして令和という「今」ではないかと思います。これから数十年後、過去を振り返った時に、令和という時代に生きた私たちが、世界で「どんな事が起こったのか」、「なぜそうなったのか」、「どう乗り越えたのか」をしっかり心に刻み、後世に戒めと物事の道理を伝えていくことが重要ではないかと思います。 

約65年前の、興味深い文書を見つけましたのでご案内させて頂きます。 
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< 経済企画庁の年次経済報告書の結語より抜粋 >

新しきものの摂取は常に抵抗を伴う。経済社会の遅れた部面は、一時的には近代化によってかえってその矛盾が激成されるごとくに感ずるかもしれない。しかし長期的には中小企業、労働、農業などの各部面が抱く諸矛盾は経済の発展によってのみ吸収される。近代化が国民経済の進むべき唯一の方向とするならば、その遂行に伴う負担は国民相互にその力に応じて分け合わねばならない。

 近代化--トランスフォーメーション--とは、自らを改造する過程である。その手術は苦痛なしにはすまされない。明治の初年我々の先人は、この手術を行って、遅れた農業日本をともかくアジアでは進んだ工業国に改造した。その後の日本経済はこれに匹敵するような大きな構造変革を経験しなかった。そして自らを改造する苦痛を避け、自らの条件に合わせて外界を改造(トランスフォーム)しようという試みは、結局軍事的膨張につながったのである。

 世界の二つの体制の間の対立も、原子兵器の競争から平和的競存に移った。平和的競存とは、経済成長率の闘いであり、生産性向上のせり合いである。戦後10年我々が主として生産量の回復に努めていた間に、先進国の復興の目標は生産性の向上にあった。フランスの復興計画は近代化のための計画と銘うっていた。

 我々は日々に進みゆく世界の技術とそれが変えてゆく世界の環境に一日も早く自らを適応せしめねばならない。もしそれを怠るならば、先進工業国との間に質的な技術水準においてますます大きな差がつけられるばかりではなく、長期計画によって自国の工業化を進展している後進国との間の工業生産の量的な開きも次第に狭められるであろう。

 このような世界の動向に照らしてみるならば、幸運のめぐり合わせによる数量景気の成果に酔うことなく、世界技術革新の波に乗って、日本の新しい国造りに出発することが当面喫緊の必要事ではないであろうか。

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この報告書は、私が生まれた昭和31年に発行されたものです。戦後、経済の主役が、農業から、工業化へと推移していく中で、約65年も前に、「トランスフォーメーション」という言葉が変革のキーワードとして唱えられています。

残念ながら、この報告書を執筆した人物を特定することは出来ませんが、当時、幸運のめぐりあわせに酔いしれていた日本で、未来を憂い、このような提言をした人物に心から敬意を表したいと思います。

令和になり、DX「デジタルトランスフォーメーション」で、情報化が主役の時代となりました。技術、経済、経営、教育、そして戦争ですら情報技術(IT)を駆使できる方が他に優る時代となっています。しかし、私はITそのものが力ではなく、ITは道具・手段として認識する必要があると思います。鉄鋼、家電、自動車で工業化を邁進してきた日本は、ITによる技術・経営革新を軽んじガラパゴス化し、IT先進国に取り残された状況となっています。

ドラッカー博士の多くの著書の翻訳者故上田 惇生(うえだ あつお)先生の勉強会で。
他に勝る、成長するとは「量」や「質」ではなく、「新しいことを生み出す力」であると教えて頂きました。
「新しいことを生み出す力」・「付加価値の創造」こそが、真の力でありITはそのための手段として使いこなす必要があります。
又、令和という時代は、多くのリスクと対峙し、備え、対応していかなければなりません。

自然災害・異常気象/国際紛争・制御不能の覇権国家の断末魔/秩序の消滅/感染症/経済破綻/超格差社会・貧富のさらなる拡大/物不足・資源の枯渇・争奪戦/物価高騰/治安の悪化/少子高齢化/超管理社会/デジタルパワー・GAFAMの更なる拡大/サイバーセキュリティ/テロ等々です。

今まで、誰も経験したことのないレベル、規模、事態となり、想定を超える負のドミノの連鎖を覚悟しなければなりません。

そうした中、経済企画庁の昭和31年度年次経済報告書の結語「平和的競存とは、経済成長率の闘いであり、生産性向上のせり合いである」という文章は、今にも通用する名言だと思います。

武力の競争では、結果何も残らない、勝っても負けても悲惨な結末しかないという事は、今回のウクライナへのプーチンの侵略で、誰もが認識したと思います。

経済は「経世済民(けいせいさいみん)」の略で、偉大な経営者、渋沢栄一翁が最も大切にした思想です。「世を経めて(治めて)民の苦しみを済う(救う)」という意味で、中国の古典に記載のある語句が由来だそうです。その目的をしっかり認識して、世のため人のために、新しい価値を生み出し続ける事が私たちに課せられた使命のような気がします。

そのために、①現実をしっかり認識し ②目標を定め、進路を決め ③行動し備え ④やり抜かなければなりません。


三回目の「日本の新しい国造り」のはじまりです。

株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光