社長の一言集

第183号「幸福のための経済」

2021/09/30

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幸福のための経済

                2021年183号
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14年ほど昔、ドラッカー博士の著作のほとんどを翻訳、紹介された上田惇生先生の「ドラッカー博士の経営学講座」の勉強会に半年間、参加する機会がありました。

特に印象的だったのは、よい組織とは、そのメンバーが「われわれは何をもって憶えられたいか」ということを常に考えている組織であるということです。

「何をもって憶えられたいか」を考えていると、毎日の一つ一つの行動が少しずつ変わってくる。それが積み重なって、5年後、10年後には組織だけではなくメンバーの人生も変わるという事です。

会社の経営ビジョン・ミッションは、おそらくこの「憶えられたいゴール」から生まれると思います。
そして、経済(売上・利益)は目的ではなく、「憶えられたいゴール」到達のための手段だと認識しなければなりません。

一般財団法人日本総合研究所会長/多摩大学学長 寺島実郎「『幸福のための経済』を模索せよ」
『理念と経営』コスモ教育出版社 2021年3月号より
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全体知から分断知へと向かう危険性

「DXは、リアルとの融合が大事だ」と述べましたが、私たちはそろそろ、DXの影の部分にも気がつかなければなりません。ここにきてアメリカでは、独占禁止法でGAFAMを規制しようという動きが出てきていますが、その背景にはDXが生み出している新たな不条理があると思われます。

それは、デジタル社会に人間が隷属させられ、人間性が摩耗しているということです。そういうことに気がつき始めた海外の論者たちは、「デジタル・プロレタリアート」という言葉を使っています。

どういうことか。身近なところで言えば、SNSがわかりやすいと思います。スマートフォンさえ持っていれば、誰でも情報を発信し、自撮り写真で自分をアピールすることができます。そうすると、その個人は、まるで自分が主役であるかのような錯覚を起こすのですが、何のことはない、主役でも何でもなく、ただデータリズムの中に囲い込まれて個人情報を搾取され、その中で走り回っているだけの人間になってしまっているのです。

近年私が学生たちと議論して危惧していることは、若い人たちの人間性が摩耗して、精神世界が小さくなっているのではないかということです。彼らの主な情報収集源のインターネットやSNSは、個人の関心や興味を狭める特性がある上に、情報発信する自分が主役であるかのような錯覚を起こさせるので、関心領域が狭く小さく、自分の頭で自ら考える逞しさが失われているような気がします。
いわば、SNS社会の知というものは、社会とつながる「全体知」からどんどん遠ざかって、自分だけの小さな「分断知」に埋没する危険性があるのです。

ともあれ今、世界には、新しい経済学、新しい分配の理論が生まれかけようとしています。まだ混沌としていますが、大きな臨界点が迫っていて、私たちはその波の先端に立っていることを、ある種の予感として私は感じているところです。

そういう時代にいることを理解しながら、私たちは、「幸福のための経済」というものを模索していかなければなりません。

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ラッカー博士の世界は大きすぎて、私のような凡人には捉えようがありませんが、どんなに時代が変わろうとも経営者にとっての「不変の道しるべ」だと思っています。
経済目的のデジタル化は、情報搾取社会の到来と、貧富の格差拡大をもたらしています。


セレクトショップBEAMSの2017年のお取引先様忘年懇親会で、設楽社長のご挨拶にハッとさせられ、感銘を受けた一言です。


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「利益を最大化させるためにAIを利用するのではなく、BEAMSは、温かい会社をつくるためにAIを活用したい。」

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人を活かす経営者は、デジタルという武器を花束にも変えるのですね。

株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光