社長の一言集

第184号「花も実もある人生」

2021/10/31

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「花も実もある人生

                2021年184号
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2021年も、あと2ケ月余りとなりました。コロナ禍の暗いニュースがあふれる中、エンゼルスの大谷翔平選手の投打二刀流の活躍は、毎日の楽しみのニュースでした。

サッカー、バスケットボール等様々なスポーツがありますが、野球は少年野球、高校野球、プロ野球、草野球と長年、幅広い年代に愛されてきた日本の国民的スポーツなのではないかと思います。
皆さん、それぞれにひいきのチーム、選手、監督がいらっしゃると思いますがいかがでしょう?

私は、ノムさんの愛称で慕われた、野村克也監督です。野村氏ほど球界の人づくりに貢献した人物はいないのではないでしょうか。
今シーズン、プロ野球全12球団で、選手時代に野村氏の薫陶を受けた監督が6人もいました。
阪神の矢野監督、中日の与田監督、ヤクルトの高津監督、日本ハムの栗山監督、西武の辻監督、楽天の石井監督。さらに日本代表の稲葉監督を加えれば、7人の教え子達が日本のプロ野球を率いて、私たちを楽しませてくれました。

日本野球史で、これだけ多くの監督を育てたのは、野村氏が最多ではないかと思います。

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山城真路「名将 野村克也 リーダーに不可欠な人生と仕事 『基礎』なくして『応用』はない」
『理念と経営』コスモ教育出版社 2021年10月号より

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野球も政治も経営も重要なのは人間の在り方

野村の教え方は「野村ノート」として記録されている。古田敦也が記録したという説と、池山隆寛が記録したという説がある。いずれにしても、あまり野球に関しての話をせずに、人生とは何か、人間とは何かなど基礎的な話が多かった。あえていうならば人間にとって重要な課題を基礎項目としていたようである。

人間としてしっかりしていないと、いくら有能な選手でも途中で崩れてしまう。
これはすべてのことに共通していることだ。科学者が人間的に健全な哲学を持たなければ、研究する対象も人間も駄目にしてしまう。政治の世界でも公益を忘れてスキャンダルが多いのは、人間的に確かなものがないということと同じである。確かな政策は国を預かる者の哲学次第で決まる。

企業経営然りである。「道徳なき経済は罪悪であり経済なき道徳は寝言である」と二宮尊徳翁は説いた。野村も同じ意味を野球人に説いた。基礎として人間の在り方が一番大事なのだと考えていたのだ。

野村は「基礎・基本・応用の順に身につけていないと、結果が出せなくなったときに、その打開策が見いだせなくなる。『なぜ失敗したのか』『なぜうまくいったのか』、その根拠、理由がわからないからだ」と述べる。そして、野球人の土台となる基礎の次に、基本の大切さを述べる。基本とは「仕事における判断や行動の指針」のことであり、両方とも身につけて初めて自由に技術の応用が出来るのだ。

近道思考で手に入れたものはメッキかもしれない

野村は18歳から22歳の4年間で基礎をつくり、その後25歳で基本を会得した。そして30歳で野球のテクニカルなものを応用して、三冠王に輝いた。人間力、考える力を基礎・基本として一流の仕事力を身につけたのだ。

野村はインスタントや安易な道のりを嫌う。将棋の世界でも同じように羽生善治九段は警告する。「近道思考で、簡単に手に入れたものは、もしかしたらメッキかもしれない。メッキはすぐに剥げてしまうだろう」

野村は未熟者とスランプを使い分ける。「未熟者とは、仕事に対する熱意や研究心、向上心に欠ける者のことである」。人生も仕事も経営も同じである。基礎・基本を身につけていない者の繰り言に野村は聞く耳を持たない。

スランプは「自分の仕事について絶えず研究と工夫を怠らず努力し続け、それなりの実績を残した人が経験するものだ」と言う。

世の中には自分でまいた種で苦しんで、それを困難と言って愚痴をこぼす者もいる。
親や友人の失敗のあおりで苦労しても、努力して克服して栄光をつかむ者もいる。

要するに考える力や意味を発見する力のない者が、野球界でも多かったのだろう。野村は考えて、考え抜く習慣を身につけて世に出たのだ。

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今月11日には、ドラフト会議で新人選手77名の指名が各プロ野球チームから行われました。
しかし、一方では戦力外になった選手の発表もおこなわれています。
引退試合で、西武の松坂投手のように華々しく引退する選手もいれば、一度も一軍に上がれずに若くして引退する選手もいます。

弊社のB-PARK事業の野球教室のコーチである、元プロ野球選手の森山コーチがよく話をするのですが、ドラフト指名で支払われる契約金は入社前の退職金のようなもので、引退後の保証など一切ない、実力主義の厳しい業界だそうです。野球スクール | B-PARK <ビーパーク> (bpark.jp)

今年は、特にコロナ禍の影響で、どこの球団も収益が厳しく、選手たちは戦々恐々です。

野村監督は、小さいころから野球だけで生きてきた選手たちに、現役の活躍のためだけではなく、引退後の人生についても、人間としての大切さを説き続けました。

子供たちは、レギュラーになりたい、野球の強豪校に入りたい、甲子園に出たい、プロ野球に入りたいと、誰よりも、努力をし、涙を流して夢をつかむのです。親御さんのご負担も大変です。
そして、「夢(花を咲かせた)」をつかんだとしても、花は必ず散るのです。

しかし、それまでの努力、涙は決して無駄ではなく、人生の「実」となって残ると私は思います。
すぐに剝がれてしまうメッキではない、本物の「生きる力、人間力」を育んできたのです。
礼儀、忍耐、努力、仁、多くのことを小学校低学年からずっと学んできたのです。

野村監督には到底及びませんが、B-PARK事業を通して、子供たちに「花も実もある人生」の大切さを伝え続けていけたらと思います。

お陰様で、B-PARK野球教室の生徒から、来春、全国の強豪校への入学がすでに3名決まりました。
来年からの甲子園が楽しみです。

夢の途中ですが、子どもたちの「花も実もある人生」を願いたいと思います。

株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光