社長の一言集

第208号「会社は終わりのないドラマ」

2023/10/30

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

会社は終わりのないドラマ

                2023年208号
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

日本一元気で、個性あふれる創業者・代表取締役会長兼最高経営責任者の永守重信氏の率いる日本電産株式会社は、2023年から社名をニデック株式会社に変更しました。日本電産は、2023年に創立50周年を迎えるにあたり、国内外の連結子会社も含めて、グループ統一の「ニデック」を冠した社名に変更することで、グローバルグループ一体経営を進化させ、更にM&Aについても従来の再建支援型から、同意なき買収に踏み切りました。岡山の工作機械メーカーの株式会社TAKISAWAの株式公開買い付け(TOB)を実施するなど、事業拡大を一気に加速しています。このように、新しい取り組み、変革をすすめながら、2022年度の2.2兆円の売り上げを、2030年度に10兆円まで伸ばす計画です。実はTAKISAWAは弊社の本社のご近所で、以前社長をされていた滝沢修三氏とも、あるプロジェクトでご縁があり、是非、両社にとっていい方向での合意が出来ますことを期待しています。永守会長は、あるインタビューで、会社が成長するための「永守3大経営手法」というユニークな経営手法を語っています。井戸掘り経営、家計簿経営、千切り経営の3つです。井戸掘り経営というのは、ビジネスを井戸掘りに例えたものです。井戸を掘れば水は出てくるが、次々と新しい井戸を掘ってくみ上げ続けないと、新しい水は手に入らない。経営も同じで、改革・改善のためのアイデアを常に出し続ける。現状に満足することなく、貪欲に新しいことに挑戦を繰り返すという姿勢が大事だということです。2つ目の家計簿経営とは、収入に見合った生活をすること。家計のやりくりと同じです。景気が悪くなって実入りが減ったらそれに見合った生活をする。そして子供の教育やマイホームのような将来への投資はしっかり対応する。会社経営も経費を収入の範囲内に収め、投資にも目を配ることが大切だということです。そして3つ目の千切り経営とは、何か問題が起きたら、それを小さく切り刻んで対処する。難しい問題も、細かい要素に分けて考えれば、問題解決がしやすくなる。又、「規模は大きくしても管理は小さくする」という方式で、管理単位を小さくすることでよりきめの細かい改善提案も出やすくなり、井戸掘り経営をさらに深められるという効果に繋がるということです。永守会長の凄いところは、当たり前のことを誰が聞いても分かりやすい言葉にして伝え、徹底して日々続けているところだと思います。1998年に初版本が出て、2019年に再発行された永守会長の『「人を動かす人」になれ!』(三笠書房)は、時代を超えても色あせない、組織づくり・部下の育て方の名文です。『「人を動かす人」になれ!』より----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------絶対忘れてはならない。指示を出す手順わたしは「会社は終わりのないドラマ」だと思っている。最初はまったくの白紙の状態から、スタッフを集めてどんなドラマをつくるのかというイメージを描き、シナリオをつくってキャストを選んでいく。テレビのドラマなら本番が終わればそれですべてが終了するが、会社の場合はエンドレス。毎日がリハーサルと本番の繰り返しだ。各部門や社員一人一人には、ドラマと同じように役が与えられる。その役を見事に演じきった人は喜びや満足感も大きくなるが、それよりもはるかに大きい感動は、全員の心が一つになって、自分たちの演技に自分たちで酔いしれてしまうことであろう。しかし、なかに一人でも、「どうせつくりものなのだから」と手を抜いたりイヤイヤやる人間がいると、それですべてがぶち壊しになってしまう。こんなところも会社とドラマの共通点である。では会社における部門の役割とは、いったい何か。それを永守流にまとめたものが、次の「会社各部門の役割」である。・利益を生み出すのは製造部門・会社の将来をつくり出すのは技術開発部門・会社を成長させるのは営業部門・よい会社に導くのは間接支援部門・会社を強くするのは経営者エッセンスだけを凝縮し、簡単明瞭にまとめた。各部門のリーダーはこの短いエッセンスの上っ面だけではなく、奥にある深い意味も読み取ってほしい。たとえば、製造部門は利益を生み出すとなっているが、そのためには価格やコストダウンはもちろんのこと、品質や納期、ヒト、設備、他部門との連携なども含めて利益アップを図っていく必要があるということだ。まずは、言葉の意味を正確に理解する。そして、自分なりの解釈を加えて部下一人一人の仕事のなかに落とし込んで、具体的に何をすべきかの目標を与えて、指示を出す。指示も出しっぱなしにするのではなく、進捗具合のチェックやフォローも行い、目標を達成するまで見届ける。これがリーダーの本来やるべき仕事で、目標設定や指示が適切であれば部下は必ず動く。この手順を忘れてはならない。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------企業経営は「人で始まり、人で栄え、人で変わり、人で終わる。」という宿命と対峙する、最高の長編ドラマです。しかし、永守会長も後継者選びでは、「人」の人選について自身の失敗を語っています。----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------麓(ふもと)から重い荷物を担いで登っていくのが経営の王道であり、真に人物を修める道                                  永守会長の言葉----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------カリスマ経営者のドラマの結末を期待したいと思います。

株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光