社長の一言集

第68号 創造する人間は絶えず危機の中に身を置いていなければならない

2012/01/30
----------------------------------------------------------------------
創造する人間は絶えず危機の中に身を置いていなければならない
                             2012年68号
----------------------------------------------------------------------
今月19日に、130年以上の歴史を誇る米国名門企業が経営破綻しました。
アメリカの写真用品大手「イーストマン・コダック社」です。
コダックは、デジタルカメラの急速な普及によるフィルム販売の落ち込みで
経営悪化が続き連邦破産法11条の適用申請に至りました。
しかし、驚くべきことはデジタル技術の開発は1970年代に他社に先駆けコダッ
ク社の技術陣により行われていた事です。当時の経営陣が好調なフィルム事業
の減収を恐れ封印してしまっていたのです。

昨年亡くなったアップルCEOのスティーブン・ジョブズは
「"Stay hungry, stay foolish 貧欲であれ、愚直であれ」という言葉を大切
にしていました。彼を身近で知る人々のジョブズに対する評価は様々です。
放漫で狡猾な完全主義者。一方では未成熟で、かよわくて傷つきやすい人物等。
しかし一貫して共通しているのは、仕事に対して精力的で驚嘆すべき創造性に
満ち溢れた才能の持ち主であったという事です。
お客様視点で彼が求めるアイデア、仕様、コンテンツ類は、たとえ盗んできて
も自社の製品に活かすくらいのhungry精神があったのではないでしょうか?
更に常識を超えた完成度を求める姿は、傍目にはfoolish(愚かを超えた愚直者)
に映ったし、それが彼の目指す己の姿だったのかもしれません。

詩人の坂村真民先生は、月刊誌『致知』の編集長であり創業者の藤尾秀昭氏に
「創造する人間は絶えず危機の中に身を置いていなければならない」という言
葉を残されました。私の大好きな言葉です。
創造するとは、"未知なる価値づくり"に対する挑戦です。未知なる事だから
成功する確証はありません。危機と隣り合わせだから失敗したら終わりです。
10年を過ぎ、収益が下手に安定すればするほど、会社における創造・挑戦と言
う言葉はタブー視されます。これは企業の大小はまったく無関係です。

私は、会社に創造性を保ち続けるためには、事業ドメインの定義が重要だと思っ
ています。例えば、アップル社の場合は個人向けパソコンの製造販売事業から
始まりました。ジョブズがCEOに復帰してからは、コミュニケーションハブの
ような事業ドメインを確立したのではないかと推察します。その定義により
2000年代に入り、iTunes、iPod、iPhone、iPadを生み出していったのではない
でしょうか?
個人向けパソコンの製造販売事業領域の延長線からは、決してこれらの商品
は生まれません。

私が事業ドメインの重要性を深く認識したのは、松下幸之助翁の愛弟子の木野
親之先生のお話を6年前に聞いた時です。
木野先生は、昭和37年に倒産寸前の東方電機(後に松下電送となり、現在は
パナソニック・コミュニケーションズ)の経営再建のために代表取締役として
就任し、その20年後には世界一のファクシミリメーカに育てあげられています。

その木野先生(元社長)の勉強会での一言。
「あの時は、当社はファクシミリという事業ドメインで考えていた。
 今のようにメール等で情報伝達をおこなう時代が到来した時に、膨大な
 ビジネスをカバーする事業ドメインを考えていなかった分、マーケットを
 大変狭めてしまった気がする。」
というような事を語られたのです。
私は自分たちの事業は何なのかを定義することの重要性を、この木野先生の
体験談で学ばせて頂きました。

きっとコダック社もフィルム業ではなく、例えば画像を共有し楽しむ事業的な
定義であれば独創的な事業領域が確立できたのかもしれません。
(※もっといい事業名称が必要だと思いますが)

しかし、既存の設備、社員の雇用、昔からのお取引先を考えた場合、一気に舵
を切るのは非常に困難である事も事実です。

今後、事業ドメイン、コアコンピタンスの再構築により、何を持ち、何を持た
ないかが戦略的意思決定の最重要テーマであり、行動の俊敏さの差になる事は
自明です。

チャンスは色々な形に化けて、猛スピードで目の前を通過していきます。

そのチャンスが本物かどうかは、まず自分の手で掴んでみることでしか分かり
ません。失敗する、傷つく、汚れる・・・。しかし、確信を以て、再度掴み続
ける。『あ、これが自分たちに与えられた使命だ!』と確信できる事業ドメイン
に巡り会えるまで。
儲かるではなく自分の使命と語れる事業。高粗利ではなく薄利な事業。
そして、見栄えがいいよりは地味な事業が良いかと思います。

----------------------------------------------------------------------------

改めまして、
明けましておめでとうございます。
随分間の抜けた新年のご挨拶となりましたが今年もよろしくお願い申し上げます。

1月18日〜20日の期間、横浜で開催されました第36回日本ショッピングセンター
全国大会での弊社BOND GATEのSC・専門店向けグループウェアのお披露目も
お陰さまで無事終了致しました。
当日、お越し頂いたお客様には心より御礼申し上げます。
久しぶりにお会いする方も多く、懐かしくもあり、申し訳なさも有りですが、
メルマガの激励も頂き、今年一年しっかり続けていくエネルギーを頂きました。
本当にありがとうございます。

今年は、大きな節目として捉え、社員一丸となって挑戦の年にしてまいりたいと
存じます。
よろしくご指導、ご支援のほどお願い申し上げます。

                          株式会社リゾーム
                          代表取締役 中山博光

+--------------------------------------------------------------+