社長の一言集

第211号「あの日のあなたより強くなりましたね」「あの日のあなたより美しくなりましたね」

2024/01/30

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「あの日のあなたより強くなりましたね」「あの日のあなたより美しくなりましたね」

                2024年211号
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2024年の始まりです。まだ、年が明けて1ケ月余りなのに、大きな地震災害、羽田事故、政治不祥事が続いています。
能登半島地震で被災されました皆様には、心からお見舞い申し上げます。

随分昔に購入した、作曲家故遠藤実氏の『しあわせの「源流」』という本を、改めて読み返してみました。
「しあわせ」、「有難い」を胸に秘めて、多くの名曲を残された遠藤氏の私たちへのメッセージがありました。

『しあわせの「源流」』 作曲家 遠藤実氏著 1997年 講談社発行
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あとがきにかえて---------人生の苦労は九六とも書く

苦労とは九六とも書くように、人生を百とするならば、九六の山坂があると思う。
百から九六を引くと残りは四つ。人の一生のうちに四つの幸福を得られたならば、
「自分の人生はついていない」と嘆くこともないだろう。

その幸福の
一つは両親に孝行が出来たという実感に浸れること。
二つ目には生きていく仕事を教えてくれた、
つまり仕事のうえの親、兄弟姉妹に感謝の心を表せるようになったこと。
三つめは社会の福祉に微力ながら貢献できるようになれたこと。
四つ目は自分自身よくここまでやったね、と自分自身にいたわりの言葉が
言えるようになったこと。
これが人生の四つの幸せではないだろうか。

人には誰でも、それぞれの生きざまがあり、口には出さず、また書くこともせず、
哲理を修得され、黙々と世のために限りない愛を贈り続けている「人生の鉄人」と
讃えなければいけない大人物も存在するであろう。
まだ人生の奥殿に到達もせぬ、一介の歌創りの私が、現在の日本人を見て、職もなく、
住む家もなく、戦後間もなく十四歳で社会に出て歩いてきた六十数年の道のりで
得たことを書いたのは、特に若い人々が「こんな日本もあったのか」と考え、
いかに現代が豊かになり、食する不自由もなく、着る不自由もなく、
親まかせで温室の中で育てられたかを知ってもらえたらと、そんな私の希望、
幸福の存在がいかに有難く、また難しいかを理解してもらいたかったからである。
全国のご両親も、教育者も、生徒も、すべての国民が、この一冊の本から、一つでも、
これはいい考え方だと共鳴していただければこの上ない歓びである。
平凡なことを実践することの難しさを知り、当たり前の話を聞いて感動する
素直心がなければ、たとえどんな立派な肩書を持っていても、どんな財を成した人でも、
世の中の人々には、おそらく歓迎されないであろう。
(中略)
風は存在するが形は無く、しかし風は、私たちのそばを通って日本を駆け抜け、
海を渡り空を駆け、世界を旅することであろう。
そして、その風が世界を一周し、再び自分のそばを通るとき、
「あの日のあなたより強くなりましたね」「あの日のあなたより美しくなりましたね」
という風の歌を、私自身聞きたいと思っている。

感謝 合掌 遠藤実
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遠藤氏が作曲された「北国の春」・「星影のワルツ」・「みちづれ」などの、昭和の名曲は、今でも日本だけでなくアジア、中国で愛され歌われています。

論語の中の言葉で「一以貫之<いちをもってこれをつらぬく>」という言葉があります。これは、一つのもの(仁:思いやり・誠実さ)をもって、あらゆる事柄に対処すべきという孔子の有名な言葉です。
私は、遠藤氏の数々の歌の中にも「一以貫之」があり、仁を貫くために、人の心の「強さ」と「美しさ」の尊さを、歌の中に残されたのではないかと思いました。

今年7月には、新札の発行が開始されます。新一万円札の肖像は「論語と算盤」で有名な渋沢栄一氏ですが、渋沢栄一氏は論語の中でも「一以貫之」を好んで用いたそうです。

政治も、経済も不透明さは続きますが、「あの日のあなたより、強く、美しくなりましたね。」
という風の歌が心地よく駆け抜けてくることを祈ります。

株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光