社長の一言集

第100号 「知恵」と「スピード」を生かす

2014/09/30
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 「知恵」と「スピード」を生かす
                                                       2014年100号
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中国の電子商取引(EC)大手、アリババ集団が、9月19日にニューヨーク
証券取引所に上場しました。
初値でのアリババの時価総額は約2,300億ドル(約25兆円)で、同業の
アマゾンやフェイスブックを上回ったことになります。
更に、アリババの株式34%を保有するソフトバンクは、8兆円の含み益を
得る事となりました。

2000年に中国のベンチャー企業20社との会談の中で、ソフトバンクの孫社長が
唯一即決で投資を決めたのが、元英語教師の馬雲(ジャック・マー)会長の起業
したアリババでした。
「会って最初の5分、話すやり取りや目つきを見て動物的なニオイで決めた」と
孫社長はアリババへの投資を決断した瞬間を振り返ります。
その時、ソフトバンクが20億円で取得したアリババの株価が8兆円ですから、
アリババは株価4000倍という超桁外れのサクセス・ストーリーです。

同じ9月、ソニーはモバイル事業が予想以上に不振となり、2014年度は2300億円
の赤字予想となり、1958年の株式上場以来初めて株式配当金を"無配"にする
と発表しました。
業績が回復している家電業界各社の中で、残念ながらソニーだけが低迷中です。

苦悩するソニーのエピソードを、冨山和彦氏がその著書「ビッグチャンス」
(PHP研究所)で述べています。
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 ソニーがアップルを凌駕できた唯一の可能性は、ソニーがiPod発売前のアップ
 ルを買収して、ジョブズの好きなように経営させる事だったと思う。
 実際、それと同じようなこと、すなわち将来有望なベンチャー企業の買収を、
 グーグルやフェイスブックなど、今や十分に大きくなってしまったデジタル
 革命の覇者たちは繰り返している。
 実はそのチャンスがあったという話を、ある人物から聞いたことがある。
 もともとソニーの大ファンだったジョブズが、アップルの経営者に経営復帰
 直後、資金繰り問題を解決するために、ソニーに大規模な出資を依頼してきた
 という話である。当時のソニーのトップは乗り気だったが、社内に「アップル
 が持っている技術で、ソニーにないものは何もない。この出資で得るものは
 何もない。」という反対が強くこの出資案件は流れたというストーリーである。
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もし、この出資案件が実現していれば、世界のIT、インターネット業界の構造は
現在と大きく異なり、ソニーの優位性と業績は突出していた可能性があります。
既存の技術を活かし、「未来へ向けた魅力的なビジネスモデルを描き、成果を出せ
る人材」の価値を見極められなかった経営組織と、元英語教師の未知なる可能性を
見極めた経営者の差が、現在のソニーとソフトバンクの姿だと思います。

井深大(まさる)氏と、共にソニーを創業した盛田昭夫氏のメッセージです。
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 「知恵」と「スピード」を生かすためにはどうしたらよいのだろうか。
 盛田は、まず頭を柔軟にすることが大切だと言う。基本は守ったうえで、古い
 しきたりを排除したフレキシブルな発想が重要だというのである。
 さらに、スピードという面では、常に未来を考えなくてはダメだとも強調する。
 「われわれを取り巻く状況は刻一刻と変わっている。今までやってきたことも、
 今やっていることも、すべて正しいと思わないでほしい。
 時代、時代に求められる発想をすることが大切で、そのためには常に10年先の
 ことを考えて仕事をする必要がある。
 未来に向けて、何が大切で何が必要なものかを考えていかなければならないので
 ある。」 (『ソニーファミリー』1993年5月号) 
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経営は、日々意思決定の積み重ねです。
意思決定の基準を何処に定めるかによって、全ての判断が変わります。
意思決定の基準は、唯一「経営理念」であるべきだと私は思います。
先人達の知恵は、会社の目指す「理想」と、揺るぎない「信念」を経営理念として
会社の「錦の御旗」にすることでした。
理念が確立されていると、経営の意思決定が明快で更にスピードが出せるのです。
大切な「経営理念」を絵に描いた餅にしてはいけません。

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「社長からの一言」も、お蔭様で100号を迎えさせて頂きました。
多くの皆様から励ましのお言葉を頂き、なんとか8年間、無事に続ける事が出来
ました。心よりお礼申し上げます。
毎回、稚拙な内容でしたが、私自身メルマガ作成を通して本当に多くの事を学ばせ
て頂きました。
最近は、自分が悩んだ時に、メルマガのバックナンバーを読み返して、改めて
先人の残された言葉の意味、解釈に気づかされる事も多々あります。
本当に私は分かっているようで何も分かっていません。

101号からは、心新たに「一言」を大切にお届けしたいと存じます。
引き続きご指導よろしくお願い申し上げます。

                       株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光

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