どの業務でも、専門用語の理解はその業務をスムーズかつ正確に進めるために欠かせない基盤です。専門用語を理解していないと、コミュニケーションの齟齬や誤解が生じ、業務効率の低下につながるリスクがあります。
特に、商業施設における販売促進業務は、キャンペーン企画、広告運用、顧客データ分析、法令対応など業務範囲が広く、社内外の多くの関係者と連携しながら進めるため、専門用語の正確な理解が一層重要です。
今回は、販売促進業務に焦点を当て、初めて担当する方が押さえておくべき専門用語を簡潔にご紹介し、実務で役立つ基礎知識をまとめました。
また、運営業務に関する専門用語については、すでに一部記事を公開しており、今後も順次ご紹介していく予定ですので、ぜひご注目ください。
■商業施設運営業務において知っておきたい専門用語集
・リーシング業務 編(記事を読む)
・売上管理業務 編(記事を読む)
・施設・テナント管理業務 編(記事を読む)
※その他、各業務の専門用語についても近日公開予定です。
商業施設の販売促進業務に関する専門用語
販売促進業務では、広告手法やプロモーション施策、マーケティング戦略、顧客分析、法規制など多くの用語が使われます。これらの用語をしっかり理解することが、業務を円滑に進めるための助けとなります。
ここでは、商業施設の販売促進業務において特に重要と思われる専門用語をご紹介します。
商圏
商圏とは、商業施設や小売業、飲食業が対象とする潜在顧客が存在する地域や範囲を指す。商圏は事業者側の視点から設定される一方、消費者の視点からは「生活圏」とも呼ばれる。
商業施設では、店舗が提供する商品やサービスに基づき、対象となる消費者を考慮して商圏が決定される。商圏は距離や交通手段、業態などに応じて設定され、特に大型商業施設では広い範囲を対象とすることが多い。
来店頻度に基づき、最も来店者が多い地域を「1次商圏」、次いで「2次商圏」「3次商圏」と区分され、1次商圏は潜在需要の20~30%以上、2次商圏は10%以上、3次商圏は5%以上を引き付ける範囲とされる。
エリアマーケティング
エリアマーケティングとは、市場を生活者の実際の居住・行動圏として捉え、その地域特性に合わせて施策を設計する地域密着型マーケティングとも呼ばれる市場細分化戦略を指す。
マスマーケティングでは拾い切れない成熟市場の多様な需要に応えるために発展した手法であり、地域住民の生活意識・習慣・購買行動を細かく把握し、店舗づくりや品揃え、販促活動へ反映させるきめ細かな対応が重要となる。
ターゲットマーケティング
ターゲットマーケティングとは、市場を細分化し、狙う顧客層を選定したうえで、自社の製品・サービスをそのニーズに最適化して位置づける戦略を指す。
具体的には、 ①市場を分割するセグメンテーション、②魅力度や自社資源を踏まえて対象セグメントを選ぶターゲティング、③選定したセグメントで自社商品を差別化するポジショニングの三段階を踏むため、STPマーケティングとも呼ばれる。
マスマーケティング
マスマーケティングとは、特定の顧客層ではなく、不特定多数の一般大衆を対象に商品・サービスを広く訴求するマーケティング手法を指す。
テレビCM、ラジオCM、新聞・雑誌広告などのマスメディアを活用し、認知拡大と大量販売を目的に情報を一斉に届けるのが特徴で、特に幅広い層に受け入れられる商品や全国的に展開したいサービスに有効。
高度成長期の大量生産・大量消費社会において広がりを見せ、現在でも認知度向上やブランディング施策として活用されている。
ワントゥワン・マーケティング
ワントゥワン・マーケティングとは、顧客一人ひとりの情報に基づき、個別のニーズに合わせて対応するマーケティング手法を指す。市場全体に一律の訴求を行うマスマーケティングとは対照的で、顧客ごとの購買履歴や嗜好を活用し、最適なコミュニケーションやサービスを展開するのが特徴。
インターネットなどの双方向メディアや、ポイントカード・クレジットカードの利用履歴などが活用される。
オムニチャネル
オムニチャネルとは、店舗・EC・アプリ・SNSなど複数の顧客接点をシームレスに連携させ、一貫した購買体験を提供する販売・コミュニケーション戦略を指す。
顧客の商品探索・比較・購入・受取といった各段階に応じてチャネルの役割を最適化し、多様な媒体で価値を発信しながら連携させる点が特徴。
複数チャネルを保有していても相互連動せず各チャネル内で完結するマルチチャネルとは区別される。
CRM(Customer Relationship Management)
CRMとは、「顧客関係管理」とも訳され、顧客との良好かつ継続的な関係を構築することを目的とした経営手法・マーケティング戦略を指す。
自社の商品やサービスを継続的に利用してもらうために、顧客の属性・購買履歴・行動傾向などのデータを活用し、一人ひとりのニーズに応じた最適なアプローチや販促活動を行うことが基本となる。顧客満足度やロイヤルティの向上を図りながら、長期的な収益性の改善を目指す考え方である。
RFM分析(Recency Frequency Monetary)
RFM分析とは、顧客の購買履歴をR(recency)=直近購買日、F(frequency)=累計購買回数、M(monetary)=累計購買金額の三指標で評価し、優良顧客を抽出・区分する手法を指す。各指標の重要度は業種・商材により異なるため、重み付けそのものが企業ノウハウとなる場合が多い。
ケースによっては三指標すべてではなく二指標の組み合わせ、または M のみで分析することもある。ただし未購買の潜在顧客の価値や、次回購入商品といった質的要素までは評価できない。
FSP(Frequent Shoppers Program)
FSPとは、「Frequent Shoppers Program(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)」に基づく考え方で、会員制度やポイントサービスなどから得られる購買データを分析し、顧客の来店頻度や購入金額に応じてセグメント化し、最適な販促施策を立案するマーケティング手法を指す。
顧客のロイヤルティ向上や固定客の育成を目的として活用される。
KPI(Key Performance Indicator)
KPIとは、「重要業績評価指標」と訳され、設定した目標に対して業務プロセスがどの程度進捗しているかを定量的に測定するための指標を指す。企業の戦略や目標に基づき、部門やプロジェクトごとに定められ、一定の期間ごとに計測されるのが一般的である。
月次で管理されることが多いが、業種や業務特性によっては週次や日次で評価される場合もある。KPIの推移は業務改善や戦略の見直しに活用され、目標未達時には原因分析と対応策の検討が求められる。
ソーシャルメディアプロモーション
ソーシャルメディアプロモーションとは、SNSなどのソーシャルメディアを活用し、商品やサービスの認知向上や販売促進を図るマーケティング施策を指す。ユーザーと直接つながるメディア特性を生かし、コンテンツ投稿やコメント対応、広告配信、インフルエンサーとの連携などを行う。
なかでも「SNSプロモーション」は、主要な手法のひとつで、ターゲットに応じた情報発信や共感を軸にした拡散が可能である。
インストアプロモーション
インストアプロモーションとは、店舗や商業施設内で実施される販売促進活動を指す。来店中の購買意欲の高い消費者に訴求でき、店外広告に比べ、購買行動への影響が大きい。
売場のPOPやポスター、試食や実演販売、割引・特売などが代表的であり、価格で訴求する「価格主導型」と、売場演出や接客で購買意欲を高める「非価格主導型」に分けられる。
クーポンマーケティング
クーポンマーケティングとは、クーポンを用いて集客や購買を促すマーケティング手法を指す。割引やキャッシュバックをはじめとする多様な形態があり、「お得感」を喚起することで来店や購入を促す。
単なる値引きにとどまらず、購入単価の向上やリピーター獲得にも寄与する施策として活用される。近年はデジタルクーポンが主流となり、配信や利用状況の管理もしやすくなっている。
クリアランスセール
クリアランスセールとは、期末や商品入替え、売場改装などのタイミングで在庫を一掃することを目的に、通常価格より大幅に値引きして販売するセールを指す。店舗内の特設売場のほか、館外イベントスペースやホテル会場など特別なチャネルで実施されることもある。
商業施設では、館全体で統一して実施されることも多く、在庫処分と同時に集客・売上を促進する代表的な販促施策のひとつ。
シーズナルキャンペーン
シーズナルキャンペーンとは、季節や特定のイベントに合わせて需要が高まる商品やサービスに焦点を当て、効果的な販売戦略を展開する手法を指す。
クリスマスやバレンタインなどの行事、夏・冬といった季節性に応じて、限定商品やキャンペーンを実施し、消費者の購買意欲を喚起する。期間限定のプロモーションを活用することで、注目度を高め、売上拡大やブランドの想起率向上につなげる。
ダイレクトメール(DM)
ダイレクトメールとは、販促用の印刷物などを選定した消費者へ郵送するプロモーション手法を指す。見込客を狙い撃ちで届ける点が最大の特徴で、ターゲットリストの精度が成果を左右する。
専門店や通信販売事業者、高価格帯商品を扱う企業で採用例が多いほか、商業施設ではポイントカード会員や周辺商圏の世帯に向けてバーゲン情報やイベント招待券を送付し、来館促進とテナント売上の底上げを図る用途が一般的。
回遊性
回遊性とは、人が施設内や街中を自由に歩きまわること、または自然と歩きたくなるような環境や導線設計を指す。語源は、魚が生息環境を移動する「回遊」に由来し、商業施設や都市開発の分野では、複数の店舗やエリアを巡ってもらうための空間構成や動線計画の工夫を意味する。
限られたスペースの中でも、賑わいと快適さを両立させることが、回遊性を高める上で重要な要素となる。
ワンストップショッピング
ワンストップショッピングとは、日用品から比較購買が必要な商品・サービスまで、幅広いニーズを一つの施設内でまとめて満たす買物スタイルを指す。
消費者にとっては複数の目的を一度に達成できる利便性が高く、事業者側にとっては顧客の滞在時間や購買機会を増やすことで、囲い込みが期待できる。多様な店舗が集積する商業施設では、こうした利便性が集客力の源泉となっている。
SC共同販促
SC共同販促とは、商業施設全体として実施する販売促進活動を指す。一般的には、デベロッパーとテナント会が連携しながら企画・運営を行う形式がとられている。
ただし、テナントごとの意見を反映しすぎると、コンセプトが曖昧になり、全体としての統一感や効果が薄れる傾向があるため、近年では、テナント会から一定の裁量を委ねられたうえで、デベロッパーが中心となって企画を主導するケースが増えている。
共同販促費
共同販促費とは、商業施設において集客や施設のブランド強化を図るために実施される販促活動に対し、デベロッパーやテナントが共同で負担する費用を指す。
内容としては、イベント開催、広告、装飾などの広報・プロモーション施策に充てられ、テナント会が主体となって運用する場合もあれば、デベロッパー主導で進められる施設もある。
この場合、テナントからデベロッパーへ直接販促費が納入され、施設全体としての戦略に基づいた一体的な施策が展開される。
媒体費
媒体費とは、新聞・チラシ・テレビ・SNSなど各種メディアで情報を発信する際に発生する販促コストを指す。商業施設では、施設イメージやテナント・商品・セール・イベント情報を告知する主要費目となる。
関連費目として、統一バーゲンや文化催事、即売会などを行う際の催事費、館内演出やPOP・イベント装飾に充てる装飾費があり、いずれも賑わい創出と回遊性向上が狙い。
景表法
景表法(不当景品類及び不当表示防止法)とは、過大な景品提供や誤解を招く表示で消費者を誘引する行為を抑止するための法律を指す。
1962年に制定され、1996年改正で景品額の上限が一般懸賞10万円、共同懸賞30万円へ引き上げられ、同年に百貨店など大型店への景品販売禁止(特殊指定)も解除された。
2003年改正では優良誤認表示の取り締まり強化と地方自治体の執行権限が拡充され、2014年改正で企業に不当表示防止体制の整備義務と課徴金制度が導入された。
個人情報保護法
個人情報保護法とは、個人情報を取り扱う事業者に対し、その適正な取り扱いと個人の権利保護を目的に定められた法律を指す。
正式名称は「個人情報の保護に関する法律」で、2005年に施行された。5,000人以上の個人情報を保有する事業者が主な対象だったが、2017年の法改正により小規模事業者も含まれるようになった。
主な内容として、利用目的の明示と限定、適正な収集方法の確保、データの正確性維持、安全管理措置の実施、第三者提供の制限、本人からの開示・訂正・利用停止の請求への対応義務などがある。改正により、指紋や顔などの身体的特徴も個人情報として扱われるようになった。
特定商取引法
特定商取引法とは、訪問販売や通信販売など、消費者との間でトラブルが起きやすい取引形態に対して、事業者の不当な勧誘や誇大広告を規制する法律を指す。
契約後に無条件で解約できるクーリング・オフ制度が盛り込まれており、ネット通販なども規制の対象とされている。対象取引には、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供(エステ・語学教室など)などがある。
2012年には訪問購入も追加され、2009年には冠婚葬祭業、映画館、スポーツ施設、学習塾など7業種が新たに加わり、規制対象は計28業種となった。
著作権法
著作権法とは、文学・音楽・美術・映像などの著作物を創作した著作者に対し、複製や公開、送信などの利用に関する権利を保障する法律を指す。特許権などと異なり、著作権は作品を創作した時点で自動的に発生し、登録を必要としないのが特徴。
著作権法の目的は、著作者や関係者の権利を保護すると同時に、公正な利用とのバランスを図り、文化の発展に資することにある。著作権法の保護対象には、著作者本人の権利だけでなく、歌手・演奏者・放送局などの「著作隣接権」も含まれる。
販売促進業務に役立つリゾームのソリューション
リゾームでは、商業施設の販売促進業務に役立つソリューションをご用意しております。
▼販売促進ソリューション
テナント買い回り施策 「KOCHILAE(コチラエ)」
施設内の客数アップ・買い回り施策を
多彩なクーポン配布(LINE利用)で実現
まとめ
本記事では、商業施設の販売促進業務に関する専門用語をまとめてご紹介しました。
専門用語の理解は業務を円滑に進めるための基本です。今回ご紹介した用語は、販売促進に直結するものを中心に、顧客分析や法規制に関わるものも含まれており、いずれも日常業務で使われます。
特に、初めて業務を担当する方にとって、これらの知識は業務の基盤となり、理解を深め基礎を固めることが、業務の成功と効率化に繋がります。