...まず、ルクア大阪の概要と現状についてお聞かせください。

ルクア大阪はJR大阪駅に直結し、東館の「ルクア」と西館の「ルクアイーレ」の2館で構成される西日本最大級の駅ビルです。地下2〜地上10階の12フロアにファッション、雑貨から食品、飲食まで多様な業種のテナントが出店しています。「ルクア」は2011年に開業し、「ルクアイーレ」は2015年にオープンしました。

コロナ禍以前は、右肩上がりで売上を伸ばしていました。また、昨年にはイーレ6階にアウトドアフロアが新設され、これまで来店されなかった男性客やファミリー客が増え、客層が広がりました。ただ、この1年は厳しい状況が続いています。

6月21日には大阪府の緊急事態宣言が解除され、まん延防止措置に移行したことで、久しぶりに全館営業が再開されました。ファッションや雑貨の店舗もオープンし、お客様には全フロア買い回りを楽しんでいただける環境に戻っています。飲食フロアに限っていえば、現在の入館客数は6~7割程度まで回復しました。

...営業統括グループの業務内容は。

ルクアとルクアイーレを合わせて24層のフロアがあるので、3〜4人がチームを組んで2〜3フロアを担当する体制をとっています。私は、地下2階の「バルチカ」と「ルクアフードホール」、地下1階の食物販店舗を担当し、日々の店舗運営に関わる業務や販促、後継テナントのリーシング業務などを行なっています。

...コロナ禍によって都心の商業施設や飲食店は大きな打撃を受けましたが、ルクア大阪では新しい施策として昨年秋から「時差ランチ」というサービスをスタートされました。その狙いは。

JR大阪駅に直結していることもあり、12時〜13時半のランチタイムは常に混雑していました。ところが、コロナ禍になってからはピークタイムの利用に対して不安を覚えるお客様が増えています。時間を前後に少しずらしていただくことで"密"を回避し、安全にご利用いただくのが一番の狙いです。対象時間内に利用されたお客様に対しては、感謝の意味も込めて特典を付与しました。お客様に安心感とちょっと得した気分を味わってほしいと思っています。

そもそも客数が減ったのは、ランチの中心顧客だった周辺企業のオフィスワーカーが、テレワークの普及によって激減したためです。最近は主婦層や若年層が戻りつつありますが、入店客数を取り戻す狙いもあります。加えて、コロナ禍以前から、ピークタイムの売上げを伸ばせないという課題を抱えていたので、各店にランチタイムを長く設定していただくことで売上げの最大化をめざしています。

...「時差ランチ」の具体的な特典内容と参加店舗は。

特典は、割引や次回に利用できるクーポン券、1ドリンクサービス、時差ランチ限定メニューの販売、デザートのサービスなどがあり、店舗によって対象時間帯は異なります。ルクア大阪には約110店舗の飲食店がありますが、現在30店舗が参加しています。業績が落ち込んでいるなかで特典を付与することに消極的な店が多かったため、昨年秋に16店舗からスタートしました。今年に入ってから参加店が徐々に増えてきています。

01.png6月末時点で30店舗が参加。対象時間に利用すると1ドリンクサービスや時差ランチ限定メニュー、
次回使えるクーポン券などの特典を得られる




...「時差ランチ」のアイデアは、どなたが考案されたのですか。

フロア担当の業務の一環として、売れ筋などの情報を集約した週報を、毎週作成しています。テナントへのヒアリングのなかで、近隣企業で時差出勤が普及、定着していること、ランチタイムのピークの時間帯に変化が見られることを知りました。その情報をヒントに、時差出勤者が安心して利用できるサービスを提供できないかと思い、考案しました。

...企画を進めるうえで苦労されたことはありますか。

事前に弊社社長にも企画の相談をしていたので、既に前向きに取り組む環境にはありました。ただ、売上げの効果測定がむずかしい施策なので、一人あたりの利用件数や参加店舗数など達成度合いがわかりやすい目標をKPIに設定するなどの工夫をし、会議にあげました。企画が通ったのは、コロナ禍でお客様のニーズや生活様式が変化しているため、前年踏襲型の販促ではなく、新しい施策だったことも社内の理解を得られた要因だと思います。

苦労したのは、店舗への参加依頼に手間取ったことでしょうか。「時差ランチ」というワードが定着するのに時間がかかり、「お客様に説明するのがむずかしい」「わかりにくい」といった理由で参加を見合わせる店舗もありました。そのため、ランチ営業と好相性の店舗で先に実績を作ってから他店に広めていく方法を取りました。

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飲食のテナントに参加協力を依頼したときの案内状「時差ランチ」という
言葉が浸透するまでに時間はかかったが、丁寧に根気よく、説明してまわった

...昨年9月からスタートして売上の最大化を目指してこられましたが、現時点での成果はいかがですか。

時間帯別にカード会員の売上げを出してはいますが、週ごとに状況が違うので売上効果の評価がむずかしいという点はあります。ただ、利用件数が多い店舗では、1日5人以上が店頭POPやホームページを見て来店しています。従来の販促ほど利用客数はまだ多くありませんが、利用者の満足度は高いようです。

...では、実際に取り組んでみて見えてきた課題はありますか。

告知方法に課題が残りました。最近、鉄道会社でも「時差旅」を謳っていて「時差ランチ」というワードも浸透してきていますが、打ち出し方がわかりにくかったと思います。告知は近隣の会社員(20~40代男女)をメインターゲットに、ルクア大阪のホームページとインスタグラム広告、JR大阪駅1Fと館内のデジタルサイネージ、店頭POP、メールマガジンで行いました。メールマガジンは現在約21万人が登録し、その7割が開封しています。ただ、告知をしても利用につながっていないため、表現内容自体を見直す必要があります。

一方で、お客様のほうが意外と理解して活用されているので、「売上が爆発的に伸びる販促ではないが、お客様には満足いただいている」とのことです。例えば、地下2階のカレー専門店では、50代のリピーター客から「1時間ずらして来られたので心象的にも安心できた」という声が届いています。

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ホームページはもちろんJR大阪駅構内や館内のデジタルサイネージ、
店頭POPなどで「時差ランチ」を告知。さらなる認知度アップが今後の課題

...「時差ランチ」は今後も継続されますか。また、新しい施策は。

コロナ禍の影響は数年続くと予想されますので、新しい生活様式に合った形でしばらく続けていく予定です。これまではランチを提供していない店があったり、緊急事態宣言が続き販促に参加する余裕がなかったりしましたが、今後は更に活用して下さる店舗が増えるといいなと思います。

ただ、飲食店の場合、コロナ禍以前まで業績が回復するのはむずかしいと考えています。感染拡大防止策を徹底すれば、必然的に席数を間引くなど客数が減るため、7〜8割にとどまるのではないでしょうか。そこで、今年は店内飲食以外での売上げを確保し、落ち込みを補填するために、テナント各社とは「デリバリー」と「テイクアウト」の導入に取り組んでいます。現在、デリバリーサービスは約3割の店舗が活用し、テイクアウトに対応する店舗も6割に達しています。

昨年春には、事前予約ができて並ばなくてもいい「モバイルオーダーサービス」を導入しました。さらに、6月21日からはサブスクリプションサービス「LUCUAフードパスポート」をスタートしました。月額500円を支払えば、加盟する飲食店と食物販店で特典を受けられるサービスで、現在30店舗が加盟しています。買上げ客数と一人あたりの利用頻度を上げるのが狙いです。遠方からのお客様が減っているなか、館内の従業員と近隣の企業で働く会社員の来店に期待しています。

...最後に、今後の抱負を聞かせてください。

こうして日々試行錯誤しながら、さまざまな取り組みを着実に進めています。成功している店舗の事例をヒアリングして担当フロアのテナント様と共有し、共にコロナ禍を乗り越えることが目下の目標といえます。