社長の一言集

第213号「決断は終わりではなく、試練と変革の始まりである」

2024/03/28

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決断は終わりではなく、試練と変革の始まりである

                2024年213号
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おかげさまで、約18年間毎月メルマガをお送りしております。
毎号、その月の注目すべき出来事やキーワード、経営者や先人たちのメッセージ、
執筆内容などをご紹介してまいりました。
8年前の2016年第118号で、AIというキーワードが初めて登場しました。
同号のニトリ創業者似鳥昭雄氏の言葉は、今読み返してもまったく色褪せない名言です。

2016年第118号より抜粋
ニトリ創業者 似鳥昭雄氏の言葉です
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私は景気が良くなる予測は一度もしたことがありません。
景気が悪くなった時に何をするかだけです。

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好景気、不景気を繰り返すのがジェットコースターだとしたら、今の状況はジェットコースターの
土台そのものが世界規模で崩壊し始めている気がします。
誰もが予測もしない「まさか」の事態が起こり始めています。
AI(人工知能)や外国人投資家に翻弄される株価や円相場、それに影響される企業業績に
一喜一憂している場合ではないようです。

第118号を含め、私のメルマガに何度も掲載させていただいているニトリ創業者の似鳥昭雄氏は、
私が注目する経営者の一人です。
2024年はニトリにとって節目の年であり、世界中での店舗数が1000店舗を達成しました。
また、3月期の決算では売上高が9320億円、純利益は1000億円を見込んでいます。
似鳥氏は、常に景気の悪化に備え、景気が低迷したタイミングで、一気に攻めの経営を実践してこられました。

一方で、現在の日本は消費マインドが低迷しているにも関わらず、株価だけが上昇しているという状況にあります。
このような状況は、誰も予見できない不安の時代の到来を危惧せざるをえません。
さらに、AI技術はChatGPTの登場により、8年前とは桁違いの進化を邁進しています。
人類に与える影響は、計り知れないものがあります。

最近、私が気になる経営者に、中野善壽(よしひさ)氏がいらっしゃいます。
「常識や過去にとらわれてはいけない」を信条に、熱海の「ホテルニューアカオ」や
天王洲「寺田倉庫」の経営改革を手掛け、「ガイアの夜明け」やNHK「SWITCHインタビュー達人達」
で話題となっている、良い意味で異質な名経営者のお一人です。


『孤独からはじめよう』 中野善壽氏著 ダイヤモンド社刊より
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◆この世も人も、一秒で移ろうもの。
孤独の時間の中で、今に集中すればいい。

二〇二〇年に入ってから、僕はにわかに忙しくなりました。
新型コロナの影響で半世紀ぶりに日本に長期滞在することになり、やれやれと思っていた矢先、
熱海に縁ができました。
それから短期間のうちにいくつかのステップを経て、昭和の時代に団体旅行の受け皿として栄えた
観光都市にある老舗リゾート、ホテルニューアカオの経営再建を引き受けることに。

僕がやると決めたのは、熱海の土地そのものに宿るパワーに魅せられ、その力を信じられたからでした。
経営再建というと、数字を厳しく精査して・・・・という手法を想像されがちですが、
僕は過去の象徴である数字をほとんど見ません。
今動いているキャッシュフローは参考として見ますが、過去の業績の数字はほぼ見ないし、
決断の材料にはしません。
なぜなら、過去から未来予測をしても何の意味がないと感じるからです。
データの分析で成功に導けるのであれば、極論ですが、経営トップに招聘(しょうへい)すべきは
AI(人工知能)が最も適任ということになります。

しかし、「今」は常に移ろうもの。
何も変わっていないように見えますが、一秒前の世界と一秒後の世界はまつたく別物なのです。
この世に生きる姿とは、高速で流れる川に浮かぶ桶の中にいるようなもの。
桶の中の世界は静かであっても、実は周りの風景はものすごいスピードで入れ替わっている。
宇宙に生きるとは、高速の変化の中に身を委ねるということなのです。


◆「今、何をすべきなのか」自分の心に問う

だから、一秒前間の数字でさえ、僕は疑います。
隙なく蓄積されたデータの先に、未来予測は描けないと思っています。
やるべきことはただ一つ。
自分の感性を磨き、この目に今見渡せる風景を映し、耳を澄ましてわずかな音を聴き取り、
足の裏に大地の震動を感じて、自分の心に問う。
「今、何をすべきなのか?」と。
たった一人、自分で考え、決めるのです。

二〇一一年に寺田倉庫の`中継ぎ社長`を引き受けた時も、まったく同じような感覚で仕事をしてきました。
東京・天王洲エリアを「アートの街」としてリブランディングしようと発想したきっかけは数字ではありません。
それは、たった一人、感性を開き、今だけに集中する孤独の時間だったのです。

人間だけが持つ、普遍にして最強の力。
それは、孤独によって「個」の感性を磨き、今を起点に創造する力ではないかと、僕は思えてなりません。
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最近、「魔が差す出来事」が続いています。
経営、政治、スポーツ業界の「まさかとしか言いようのない予想外の大不祥事」です。
今後、どのように対応し、どういう結果をめざすのか?
まさに、「今、何をすべきなのか。」トップの決断と、行動の真価が問われる出来事です。

AIがどのように進化しても、最後はトップ自らが決断しなければなりません。
なぜなら、「決断は終わりではなく、試練と変革の始まり」だからです。
その覚悟はAIには備わっていませんし、責任も果たせません。

今まで以上に、「自分の心に問う力、答える力」をしっかり磨くことが大事な時代となりました。



株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光