社長の一言集

第88号 「もっと速い馬が欲しい。」

2013/09/30
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 「もっと速い馬が欲しい。」
                                                       2013年88号
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NTTドコモからiPhoneが9月20日より発売されました。
いよいよ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイル、NTTドコモの3キャリアによる
熾烈な販売競争が始まります。
NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏は、他社と比べたドコモの強みについて
「ネットワーク」と「サービス」を強調しています。

iPhoneとiTunesを生み出したAppleとiPhoneの販売ノルマを課せられた
3キャリアの関係が、私には鵜飼の鵜匠と鵜の関係に見えてしまうのですが、
考え過ぎでしょうか。
そして思い出したのは、ドラッカー氏の定義する、マーケティングと販売の
違いです。

ピーター・ドラッカー博士『マネジメント』の著書より
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 これまでマーケティングは、販売に関係する全職能の遂行を意味するに
 すぎなかった。それではまだ販売である。
 われわれの製品からスタートしている。われわれの市場を探している。
 これに対し真のマーケティングは顧客からスタートする。
 すなわち現実、欲求、価値からスタートする。
「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。
「われわれの製品やサービスにできることはこれである」ではなく、
「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」と言う。
 実のところ、販売とマーケティングは逆である。
 同じ意味でないことはもちろん、補い合う部分さえない。
 もちろん何らかの販売は必要である。
 だがマーケティングの理想は、販売を不要にすることである。
 マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスに合わせ、
 おのずから売れるようにすることである。
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しかし、顧客ニーズの理解は単純な事ではないようです。

アップルの創業者のジョブス氏は、自動車を普及させた立役者、ヘンリー・
フォード氏の言葉を好んで用いていました。 

「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、
   彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう。」と。

交通手段が馬車だった時代、自動車を知らない人々は、早い馬を求め、
「自動車をつくってくれ」とは言わない。
客が欲しいと言う物ではなく、自分が欲しい物、客に欲しいと思わせるものを
自分で考えることが重要でクールだとジョブス氏は信じ、実践しました。
映画監督の小津安二郎氏の言葉に
「どうでもいいことは流行に従う。重大なことは道徳に従う。芸術は自分に従う。」
とありますが、まさにジョブス氏の経営は芸術であり、アートですね。

有名な「ハングリーであれ、愚かであれ」のメッセージに込められた意味を
「常に挑戦者であれ」、「多数派(顧客)の信じることに反してでも自分の信念に
 従え」と解釈してみましたが、いかがでしょう?

2006年NBC出演のジョブス氏のメッセージより
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 何かをして、
 それがとても上手くいったとする。
 そしたら、
 何か別の素晴らしいことを始めるべきだ。
 あまり長くそこに留まっていちゃいけない。
 次を探すんだ。
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まだ未発表のアップルの次の作品としてジョブス氏は何を遺していたのでしょう?
期待を裏切るほどクールな作品を期待したいですね。

                        株式会社リゾーム
                         代表取締役 中山博光

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