社長の一言集

第87号 「企業が売っていると考えているものを顧客が買っていることは稀である。」

2013/08/30
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 「企業が売っていると考えているものを顧客が買っていることは稀である。」
                                                       2013年87号
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今週に入り、日本マクドナルドHDの原田泳幸会長兼社長の退任発表や
米マイクロソフト社CEOのスティーブ・バルマー氏の退任予定発表が続きました。
お二人とも大ベテランで、輝かしい業績を残した名経営者です。

バルマー氏は過去一度お会いした事がありますが、エネルギッシュで、強烈な
存在感があり、機関車のような人物だった印象があります。
創業間もないマイクロソフトを経営面で支え、技術肌のゲイツ氏の女房役として
マイクロソフトの躍進に、大きな貢献を果たしてきました。

しかし、将来へ向けた難しい舵取りのために、両社に新しいリーダーが必要に
なったことも事実です。

ピーター・ドラッカー博士の著書『創造する経営者』の中にあるメッセージです。
----------------------------------------------------------------------------
「企業が売っていると考えているものを顧客が買っていることは稀である。」
----------------------------------------------------------------------------
マクドナルドはハンバーガーを販売してきました。
顧客は、一般消費者とFC(フランチャイズ)加盟店のオーナーです。
マイクロソフトはWindowsを販売してきました。
顧客は、一般消費者・企業、そしてWindowsをインストールして販売するハード
メーカー等です。
マクドナルドでは、ハンバーガーを売るために、価格戦略が功を奏した時期も
ありました。
マイクロソフトでは、定期的に新しいWindowsシリーズを市場に投入してきました。
いずれも、大きな成功を企業にもたらし、業界で圧倒的な地位を占める事が出来
ました。
しかし、最近は当時ほどの成果を出すことが難しくなってきています。

スターバックスの会長であるハワード・シュルツ氏のメッセージで、次のような
言葉があります。
「私たちはコーヒーを売っているのではなく、コーヒーを提供しながら人を喜ば
すという仕事をしている。」
つまり、スターバックスが売っているのは"喜び"とシュルツ氏は述べています。
スターバックスは値引きもしません。更に、FC展開は行わず全店が直営です。

インターネットでの書籍販売から創業したAmazonは、そのロゴのデザインのよう
にAからZまで全ての商品を取りそろえるビジネスと並行して、クラウドサービス
を拡大しています。時間をかけずに導入出来て、運用コストも安く利用できる
サービスを売っています。
対抗のクラウドサービスをマイクロソフト陣営も市場に投入していますが、自社
の既存商品の販売に影響が出てしまうジレンマを抱えています。

人物観察法として論語の「視・観・察」という考え方があります。
----------------------------------------------------------------------------
 孔子曰く
 一、その人の行為をよく注意して視(み)る。
 二、その行為の動機となる原因を観(み)る。
 三、その人がどんな所に安らぎ・目的を求めているかを察(み)る。

 「その三つのレベルで掘り下げてみると、その人の本性を見抜く事が出来る。
  どうして隠せようか」と。
----------------------------------------------------------------------------
これを企業の観察に応用してみました。
一、その企業がどのような商品を誰に販売しているのかを視(み)る。
二、その商品はどのような時代背景、技術の変化を捉えているのかを観(み)る。
三、その企業はお客様にどのようなメリット、満足を提供しようとしているのかを
  察(み)る。

企業の本質的な存在価値は、「察」でみなければなりません。
それは経営理念として現せるものでもあります。

ピーター・ドラッカー博士『マネジメント』の著書より
--------------------------------------------------------------------------
 企業の使命と目的を定義するとき、出発点は一つしかない。顧客である。
 顧客を満足させることが、企業の使命であり目的である。
 したがって、我々の事業は何かとの問いは、企業を外部すなわち顧客と市場の
 観点から見て、初めて答えることが出来る。
--------------------------------------------------------------------------
「世のため、人のための経営」が王道の経営であり、進化・継続を続ける会社の
基本的な経営目的です。
モノではなく、何を自分たちは売っているのか?
その答えは「創業時の精神」、そして「深い経営理念」から生まれてくるものだと
思います。

日本マクドナルド社、米マイクロソフト社の新社長の活躍を心から期待します。

                        株式会社リゾーム
                         代表取締役 中山博光

+-------------------------------------------------------------------------+