社長の一言集
第81号 情報活用は「観世音」の心で
2013/02/27
---------------------------------------------------------------------- 情報活用は「観世音」の心で 2013年81号 ---------------------------------------------------------------------- 幕末に六百十余の藩や村の財政危機を立て直し、多くの人々を救った二宮尊徳 (金次郎)について、明治十七年に門弟の福住氏が「二宮翁夜話」にまとめました。 この教えは渋沢栄一、豊田佐吉、松下幸之助等の日本の発展を支えた名経営者に 多大な影響を与えたようです。 現代版として、村松敬司氏が編著した「平成版=二宮翁夜話」を久しぶりに読み 返してみて、改めて幾つかの気づきがありました。 <平成版=二宮翁夜話>より -------------------------------------------------------------------------- 「二人の田舎者が江戸へ出て水を売っているのを見て、 一人は江戸では水すら買わねば暮らせぬと驚いて、すぐ村へ帰ってしまった。 もう一人は江戸では水を売っても商売になると、喜んで江戸に残った。という 逸話がある。」 ※この二宮翁夜話を松下幸之助翁が読んで、後に語った内容が更に続きます。 「一杯の水を売っているというのは、事実は一つですが、その見方はいろいろで あり、悲観的に見ますと、心がしぼみ絶望へと通じてしまいます。 しかし、楽観的に見るなら、心が躍動し、さまざまな知恵や才覚がわいてくる ということを、尊徳翁は言いたかったのでしょう。 僕もその通りだと思います...。 十九歳で大阪に奉公に出て来てから今日まで、意識的にも、水売りの姿を見て 江戸に残った若者のように物事を積極的に明るく積極的に見てきました。」 ---------------------------------------------------------------------------- 松下幸之助翁の陽転発想、プラス思考の源は、正にここにあったような気がします。 この文章を読んで、私が連想したのはセコムさんです。 松下幸之助翁は「電気」について新たな価値づくり、用途の拡大を図りましたが、 セコムさんは安全はタダと言われた時代に、安全をお金(価値)にして大きく発展 した会社です。創業者飯田亮氏は、日本で警備の新規ビジネスを立ち上げる際、 その決断は30分とかからなかったそうです。 偉大な事業を確立した創業者の直観と、諦めない不断の努力の積み重ねの賜です。 <平成版=二宮翁夜話>にもうひとつ興味深く、共感する文章があります。 ---------------------------------------------------------------------------- 「商業を営む者は、扱う商品にかかわらず、総て世の音信(情報)をとらえ、 かつ、それを利益が出るように活用せねばならぬ。 これをうまくやれるように念ずる対象を、観世音と名づけたのだよ。 観という字は、ただ肉眼で見るのではなく、心の眼でよくよく見ることを いう字なんだ。このことを、よくよく考えてみることだな。」 ---------------------------------------------------------------------------- これは、情報活用を生業とする私どもにとっては驚きでもあり、大きな教訓とも 言えます。 江戸時代に、世の中のニーズを情報として捉え、単なる販売実績・数量を分析する だけではなく、お客様の視点でその数値に隠された背景を掴んで商品に 活かす事を語っています。 セブン&アイ・ホールディングスCEOの鈴木敏文氏は、データから仮説をつくるの ではなく、データは仮説の検証に使うべきだと語っています。 例えば、お客様がAという商品を購入したいとお店に来店され、その商品が 欠品していたのでBという商品を購入し、B商品の前年比が伸びたとします。 データから判断すると、前年比の伸びたB商品の発注を増やせとなってしまう訳です。 「コンビニは手ぶらで店を出ない、だから逆に怖い。」という鈴木氏の言葉が 観世音の教えと重なります。 今の日本も、政治、経済、外交で飛び交う情報にどのような仮説を持って国家の 舵とりに臨むかが問われます。 株式会社リゾーム 代表取締役 中山博光 +--------------------------------------------------------------+