社長の一言集

第59号 正念場

2011/04/28
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 正念場
                                            2011年59号
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正念場は「性根場」とも書き、仏教用語で悟りを得るまでの基本的な実践項目の
一つと言われます。雑念、邪念を振り払い「正しい真理」を念う事と定義されて
います。

3月11日に発生した東日本大震災は、複合連鎖危機を引き起こし、津波、停電、
原発事故、経済の低迷、雇用不安とその拡がりは想像を超えて国内外に大きな課
題を投げかけています。津波の被災地、放射能の汚染地区の方々は、今も修羅場
にじっと耐えていらっしゃいます。
正に、日本にとっても、私たち一人ひとりにとっても、大きな大きな正念場です。

会社にとっての「正しい真理」とは何なのでしょう?
私は、「経営理念」と「ビジョン」ではないかと思います。
予測を超えた非常事態、思いがけない土壇場で何を基準に行動するか?
それが経営者、会社の本性、性根です。

損か得かで行動する会社。
善か悪かで行動する会社。
その場、その時の判断、感情で行動する会社。
なんとかなるさと茹で蛙状態で傍観するだけの会社。
そして経営理念に基づいて行動できる会社。です。

経営理念は、平常時はその真の価値を知る事はありません。このような時にこそ
掲げなければならない錦の御旗だと私は思います。経営者自らも従わなければな
らない最上位の価値基準です。ある意味、土壇場で魔が差す事の制御機能、ブレ
ーキ、根の部分です。

そして、ビジョンは未来の自分たちのあるべき姿です。
このような時だからこそ、現実を素直に受け入れて、希望ある未来を描ける構想
力が求められます。躍動する幹としての推進機能、アクセルです。

このブレーキとアクセルを上手に機能させながら経営する事がプロの経営者だと
思います。

松下電器(現パナソニック)の経営理念は「共存共栄」でした。
万物がつながりあって成立しているこの社会で、ひとつのものだけが栄えること
は、一時的にはありえても決して長続きするものではない。
すべてが共に栄える、共存共栄する、ということでなければ真の発展、繁栄はあ
りえない。と述べられています。
今回の震災で分かった事は、全てが支え合って、繋がっていたという事です。
東北の工場が被災し稼働できなくなった事で、世界中の車の生産が止まり、iPad
の発売が遅れるなど、不測の事態が様々な業種で起こっていたのです。国内も世
界も共存なくして栄える事はないという事を、70年も昔に経営理念として掲げて
いた松下幸之助翁の経営観はさすがです。

「金を残す人生は下、事業を残す人生は中、人を残す人生こそが上なり」と名言
を残した後藤新平は、関東大震災後、帝都復興院総裁として将来ビジョンに基づ
き震災復興計画を立案・推進し、現在の東京の都市としての骨格を創り上げまし
た。復旧から復興へ、そして100年後へ向けた改革へというビジョンを持って取り
組んだ卓越した構想力です。

正念場を節目として、深く根を張り、新しい芽を育てる事です。

                        株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光

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