社長の一言集

第55号 明日への夢

2010/12/27
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 明日への夢
                                            2010年55号
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新たな2011年へ向けて、世間では様々な予測や思惑が述べられていますが、
総じて日本は政治・経済・国際問題等、全般的に明るい年とは言えない状況です。

陽明学者の張詠の言葉に「事に臨むに三つの難あり」という考えがあります。
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能く見る、一なり。
見て能く行ふ、二なり。
まさに行ふべくんば必ず果決す、三なり。
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大事に対して、その与えられた条件下で確実に成果を得るためには、本当に重要
な事を明確にして「一を以て之を貫く」決断が必要です。その為にまず、徹底的
に情報を集める、全身で観察・洞察する、分析する。次に勇断し、緻密且つ徹底
的に行動する。最後に、他の選択肢、可能性を捨て去る覚悟が必要である。とい
う事だと私は理解しています。

これからの日本は、更に多くの経験した事のない新たな変化の波が押し寄せます。
その変化の波を、危機と見るか?チャンスと見るか?それが、経営者の「三つの
難」に対する取り組みの重要な分岐点となります。余命三年と宣告される程厳し
い日本経済の中で、限られた時間と、限られた経営資源をいかに機会に集中させ
るかで、未来へ向けた大部分の勝負が決まります。

ジェームズ・C・コリンズ氏ので衰退
していく企業の衰退進行レベルが述べられています。
第一段階 成功から生まれる傲慢
第二段階 規律なき拡大路線
第三段階 リスクと問題の否認
第四段階 一発逆転の追求
第五段階 屈服と凡庸な企業への転落か消滅 

業種、規模を問わず企業の多くが、既に第三段階から第四段階へ入りつつあります。
厳しい現実を直視し、コアコンピタンス経営による方向付けと、組織の意識改革、
経営理念の深い理解が必要です。正に「三つの難」がそこに求められてます。

先月(11月)、アジアの最貧国のバングラデシュへ行ってきました。有名な山口社長
の会社マザーハウスさんのバッグ工場と、グラミン銀行の視察の旅です。マザーハ
ウスさんの工場は首都ダッカのビルの一角にある100坪ほどの素敵な空間です。
そして、そこで働く人々は生産のための工員ではなく、誇りを持って商品づくりに
取り組む職人達の姿でした。それは、山口社長のミッションを目指し、汗と涙で実
現した「理念の館」です。
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「途上国」という言葉で一括りにされた場所にも
素晴らしい資源と可能性があることを伝えたい。
それが、マザーハウスの使命です。
途上国にある工場で、同じテーブルに向かい合い、
同じ言葉で議論をし、同じ目標に向かって、
一つ一つ丁寧にもの作りをしています。
同じ目標、それは、お客様の心を動かす商品を
「途上国発のブランド」として胸を張ってお届けすることです。
よりよい社会をつくるために情熱をかたむける一企業の活動が、
今まで「貧しさ」という暗闇の中で見過ごされてきた途上国に、
希望の光を灯すことを証明したいと思います。 (マザーハウス様HPより)
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マザーハウスさんは、バングラデシュでは憧れの職場です。日々、多くの人たち
が面接に訪れるそうです。

私は、現地責任者のモインさんに「どのような基準で採用するのですか?」とお尋
ねしました。彼は「しっかりした夢を持っている人です。」と答えてくれました。
更に、「夢がある人は、苦しい事や、辛い事があっても、それを乗り越える事が出
来る。逃げ出しません。仕事に誇りを持って取り組み、仲間を大事にして、お客様
を心から愛しています。」と胸を張って答えてくれました。

私は、もう一つ質問しました。「その人たちの夢はどんな夢ですか?」モインさん
は、「彼らの夢は、村に残してきた家族を幸せにする事。将来、村のために自分た
ちの工場を建てたい。この国を豊かにしたい。そして何よりも自分たちに夢を与え
てくれたマザーハウスを、よりグローバルで大きな会社にしたい。」と、嬉しそう
に答えてくれました。

その言葉に私は、胸を強く突かれ、目頭が熱くなりました。
「この国は、決して最貧国でも途上国でもない。生活は貧しくても働く人々の心は
希望と夢に満たされている。そしてグローバルな変化の中で、確実に凄い勢いで成
長している。」と全身で感じました。

与えられた豊かさに包まれ、何事にも傷つき易い「井の中の日本」の人々の夢は、
「自分のため」・「好きな事をするため」・「今のために」が多いのではないでしょ
うか?育ててくれた親も、自分たちの会社も大切に出来ない大人が多すぎます。そ
のような価値観から、独創的な戦略や世の中に貢献できる素敵な商品・サービスが
本当に生まれて来るのでしょうか?

「一を以て之を貫く」。その覚悟は、誰の為なのか、何の為なのか?その答えこそ
が、自らが定めるべき「果決」の唯一の基準なのかもしれません。「明日への夢」
は、その難を実践する"一心"の中から生み出されると思います。夢は外部から与
えられるものではありません。

人間の底力は凄い、本性は輝いている。沢山の仲間がいる。使命に溢れている。
それを実践し、証明する始まりの年が2011年でありたいと願います。

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今年最後のメルマガです。本当に一年間ありがとうございました。
皆様からお寄せ頂いたメッセージ、お会いした時の励ましのお言葉、大変嬉しかった
です。いつも皆さんの顔を思い浮かべながら、毎月、赤面原稿に挑んでまいりました。

お知らせです。
来年とても素敵な大企画があります。
今回ご紹介させて頂きました、マザーハウスの代表兼デザイナー山口 絵理子さん
を講師にお迎えして、3月15日(火)に東京で特別セミナーを開催させて頂きます。
沢山の元気と、新たな気づきをもらって下さい。
詳しくは、今後のご案内でご確認ください。そして是非ご参加ください。

変化の波乗りには、健康が一番です。どうぞ、お元気で良いお年をお迎え下さい。

                        
追伸
クリスマスは過ぎましたが、とても感動した実話を掲載した過去のメルマガがあり
ます。お時間がございましたら、是非ご一読下さい。

「志が縁をつくり、感謝が縁を活かす」(RHIZOME PRESS〔Vol.026〕)
 http://www.rhizome-e.com/topics/hitokoto/hitokoto026.html

                        株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光

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