社長の一言集

第50号 思考の三原則

2010/07/30
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 思考の三原則 
                                            2010年50号
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戦後、陽明学、帝王学に立脚し、「実践的人物学」、「活きた人間学」を元に
多くの政治家や財界人の精神的指導、御意見番として活躍した有名な人物が
安岡正篤(やすおか まさひろ)師です。安岡正篤師がよく説いていた物事の見方で
「思考の三原則」があります。それは物事をきちんと見るには「長期的に見る・
多面的に見る・根本的に見る」事が大切だという事です。

私もそうですが、凡人はどうしても忙しさにかまけて目先のことに意識が
行きがちです。
そして、自分の経験や価値観で、物事を偏った見方で判断してしまいます。
経営もそうですが、囲碁・将棋の世界もプロとアマの差は「先を多面的に読む
深さ」によって決まると言われます。

しかし、誰もがそういうプロの見方が出来ないのは何故なのでしょう?
その答えは『ローマ人の物語』でカエサルによって述べられています。

「人間ならば、誰にでも現実のすべてが見えるわけではない。
       多くの人は見たいと欲する現実しか見ない。」ということです。

実際、日本人は誰も、日本の将来について、自分たちの会社の未来について、
不安を感じながらも根本的な危機感は持ってはいません。その危機は、もう少し
先のことだ、自分には関係ない、誰かがなんとかしてくれると心の何処かで
思っているのではないでしょうか。高齢化社会も、少子化も、日本経済の減速も、
会社の業績も、自分が老いることも、自分の危機とは思いたくないのです。
※経営では過去の成功に囚われてしまう事もあります。

当事者になってみなければ、その危機が及ぼす本当の苦しさ、大変さは
分かりません。私も含め「茹で蛙」状態で今日を生きているのが実情です。

真のリーダーは、この危機を認識して、どのような対応をしていくべきなのかを
しっかり戦略として掲げ、実行しています。
評価の差はあるかもしれませんが、日本の代表的経営者として活躍している
孫正義氏も柳井正氏も生い立ちの中でどん底を経験していたからでしょうか、
業績の良し悪しに関わらず、どんな時にも決して楽観的ではありません。
常に、とてつもない目標を掲げ組織を鼓舞し、過去との比較ではなく、目標
(マーケットシェア)との比較で、危機感を常に組織に与え続け、組織の原動力に
しています。孫氏は300年企業を目指し、柳井氏は5兆円構想を掲げ、時流の風に
乗ろうとしています。
正にマーケットを長期的に見る・多面的に見る・根本的に見る天才です。
そして、経営理念、ビジョン、人材力をとても重要視している経営者です。
ある面、非情なまでに。

昔、松下幸之助氏と将棋十五世名人大山康晴氏が将棋対決した話を聞いたことが
あります。松下幸之助氏も将棋は大変好きだったようですが、相手は大山名人です。
みなさんはどちらが勝ったと思いますか?

結果は、松下幸之助氏の勝利だったそうです。その理由は、難しい局面になると
松下幸之助氏が「こういうときはどうしたらいいですかね?」と大山名人に尋ねた
から、その答えを教えているうちに結局、名人が負けてしまったという事です。
松下幸之助氏は、聞くことの名人ですから、分からないことはどんな人にでも
素直に聞いたのですね。

これは、思考の三原則を更に超える境地です。
長期的に見る・多面的に見る・根本的に見る、更に分からないことは素直に聞くのが
経営者、人間としての松下幸之助氏の偉大さです。

「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」は、織田信長。
「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」は、豊臣秀吉。
「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」は、徳川家康です。

松下幸之助氏は、「鳴かぬなら それもまたよし! ホトトギス」と語っています。
何事も受け入れる力、適応する力、そして深い感謝力の塊が、松下幸之助氏です。
だから、誰もが素直に教えてくれたのではないでしょうか。

今回で「社長からの一言」も50回を迎えることが出来ました。
皆さんの温かい励ましに支えられこの節目が迎えられましたことを、
心よりお礼申し上げます。
今後もよろしくご指導お願い申し上げます。

そして、よろしければご一緒に「素直名人」を目指しましょう。
ありがとうございます。

                        株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光

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