社長の一言集
第241号「お客様のために」はウソ、「お客様の立場で」が正しい
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「お客様のために」はウソ、「お客様の立場で」が正しい
2026年241号
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このたびの熊本県を中心とした地震により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
被災地の皆様におかれましては、不安な日々をお過ごしのことと存じます。
一日も早く安全で平穏な生活を取り戻されますことを、社員一同心よりお祈り申し上げます。
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それでは、今月のご案内をお届けいたします。
総務省がおこなう、2025年経済構造実態調査(2024年実績)によると日本の全産業の年間の総売上高は1,968兆円でした。売上順位では卸・小売業542兆円、製造業475兆円、金融・保険業162兆円、医療・福祉業144兆円、情報通信業79兆円と続きます。
又、2025年の経済産業省の小売業の業態別売上を調べると、小売業の年間総売上は157兆円で、スーパー17兆円、コンビニエンスストア13兆円、ドラッグストア9兆円、百貨店6兆円と続き、最後にその他103兆円となっています。
実はその他にはショッピングセンターの約33兆円が含まれているのですが、業態として定義されておらず、具体的な販売額は報告されていません。多くの売上(納税)、雇用、日本全国の社会インフラ、災害時対応を支えている小売業について、今後の役割、課題、対策を論じ、手を打っておくことの重要性を感じます。
戦後、復興から高度成長期にかけて、人口増加の波に乗り多くの小売企業が生まれました。
1970年から1980年代にかけて特に目覚ましかったのが、大型量販店(GMS)の躍進です。
中内さんのダイエー、伊藤さんのイトーヨーカ堂、堤さんの西友、西端さんのニチイ(後にマイカル、現イオンリテール)、岡田さんのジャスコ(現イオン)等の創業経営者が業界を牽引されました。
しかし、当時は商店街や中小小売店の危機として、1973年に定められた大規模小売店舗法で、強力な規制、反対運動もありました。
そうした中で、「大型店と小売店は共存できる」という信念のもと、1974年にコンビニエンスストアを日本で初めて開店したのがイトーヨーカ堂に中途入社された鈴木敏文氏でした。アメリカのサウスランド社と、セブン-イレブンの日本でのライセンス契約を締結したのですが、当時のアメリカのセブン-イレブンはガソリンスタンド併設の、タバコとアルコール中心の雑貨店のような店だったようです。
しかし、鈴木敏文の手腕で独自の進化を重ね、1991年には経営難に陥っていたアメリカのセブン-イレブンの親会社であるサウスランド社を買収するまでに成長したのです。
残念ながら、株式会社セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問鈴木敏文氏は今年2026年5月18日に93歳でご逝去されました。生前、多くの講演、書籍等でお言葉を残されていますが、セブン&アイグループの広報誌「四季報」のホスト役を務め、対談された会話の中で気づかれたり共感されたことをまとめられた書籍の中から、一部をご紹介させて頂きます。アイドルグループAKB48の敏腕プロデューサー秋元康氏、ビートたけし氏との対談です。
鈴木 敏文 著『売る力 心をつかむ仕事術』(2013年10月 文藝春秋 刊)より
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「普遍的な笑い」は「視点」が面白い
秋元さんによれば、お笑いの世界でも、「普遍的な笑い」と「飽きられる笑い」があるといいます。
その年の流行語になるような言葉を生み出しても、それに頼っていると、その言葉が飽きられたら終わりです。
それが「飽きられる笑い」です。一方たけしさんなどは、そういう「飽きられる笑い」ではなく、いま話題になっていることを「ネタ」にして、それを自分の「視点」を通して、何か面白いことをいったり、やったりしてくれる。
その笑いの「視点」が面白いので飽きられないというのです。
さらに興味深かったのは、変わらない「視点」と新しい「ネタ」との関係を、秋元さんが「漢方薬」と「抗生物質」にたとえて話されたことです。新しいものを生み出すときには、長い間処方して体質改善する「漢方薬」のように長期的に持続する姿勢、すなわち、変わらない「視点」を基盤としてもち、そのうえで「抗生物質」のように即効性のある要素、つまり、新しい「ネタ」を取り込み、その結果としてヒットが生まれるのが理想だというのです。
秋元さんが作詞とプロデュースを手がけ、美空ひばりさんの遺作となった大ヒット曲『川の流れのように』はその典型だといいます。人の人生を川の流れにたとえる日本人特有の感性の世界を基盤にしながら、波瀾万丈の半生を送った美空ひばりさんが歌う人生の応援歌という即効性のある新しい要素を取り込んだ。結果、長年のファンからも、若い人たちにも支持される名曲になったというわけです。
聞くところでは、秋元さんがこの歌を作詞されたのは、ニューヨークに住んで一年ぐらい経ったところで、次第に望郷の念にかられ、「自分は何をやっているんだろう」と思いつつ、部屋の下を流れるイーストリバーを眺めていたとき、『川の流れのように』のタイトルと歌詞が浮かんだといいます。異郷での体験が、既存の演歌とは異なる新しい要素をとり入れさせたのかもしれません。
変わらない「視点」と新しい「ネタ」が飽きられない「普遍的な笑い」を生み出す。「漢方薬」のような持続的な姿勢を基盤にもったうえで、「抗生物質」のような即効性のある要素を取り込んでヒット商品を生み出す。
このような取り組み方は、ほかでもいろいろな分野で見られるように思います。
(中略)
「お客様のために」はウソ、「お客様の立場で」が正しい
つまり、「お客様のために」といっても、「売り手の立場」で考えたうえのことであり、そこには、過去の経験をもとにしたお客様に対する思い込みや決めつけがある。これに対し、「お客様の立場で」で考えるときには、売り手としての立場や過去の経験を否定しなければなりません。
(中略)
みんなが賛成することはたいてい失敗し、反対されることはなぜか成功する。
それはわたしの経験に限ったことではないようで、これまでお会いした方々も同様の経験をお持ちのようでした。
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鈴木氏は、2016年にセブン&アイ・ホールディングスの会長兼CEOを自らの意思で退任されました。
名誉顧問として実権から外れても、亡くなる直前まで生みの親として、しっかり見守られていたのではないでしょうか。
ご退任の3年前に出版された本書にこのような文章がありました。
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もし、わたしが現在の職を失い、転職の市場に放りこまれたら、はたしてわたしを雇う企業があるかといえば、ないでしょう。なんの技術も資格もないし、売り場で数字を稼ぐセンスもない。経営のノウハウをいくらか実践しているとはいえ、それも限られた業態のなかのことです。逆にわたしが人事担当者でも、社長経験者は雇いません。
だから、わたしも毎日が真剣勝負で、「昨日の経験は引きずるものか」と自分を厳しくいましめ、常に一歩踏み込んで挑戦し努力しようとするのです。
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経営者であり、商人として「あきない」を貫かれた、鈴木氏のご冥福をお祈り申し上げます。
経営道は、生み出す苦しみ、育てあげる苦しみ、引き継ぐ苦しみをもって、真の道を知ることが出来ます。
昭和生まれの名経営者、企業の多くが「引き継ぐ」で難儀されています。
小売・飲食業の事業承継も日本の大きな課題です。
株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光