社長の一言集
第239号「自然体の構え」
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「自然体の構え」
2026年239号
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世界は今、政治、為替、金利、物価、資源、サプライチェーンなど、これまでのあたりまえが一気に変わり、世界中の人々が翻弄されています。一方では、AIの劇的進化によって、あらゆる分野でAIの影響が及び始めています。また、安全面でとんでもないリスクを振りまく可能性のあるAIも登場してしまいました。
今後、私たちはこれらの状況から、何を読み取り、どう解釈し、どう備えるかを求められます。最後は、トップの直観と判断力、いい意味での老獪(ろうかい)さも重要な要素となります。
さらに、不確実な未来の最終の備えとは、何事も絶対視しないことです。外部環境の突然の変化や、実行現場の予想外のサインに気づいたとき、すぐに修正できる柔軟さです。決めたことをやり切る意志と、違うと分かれば変える潔さ。この両方が揃って、これからの本当の備えになります。
齋藤孝氏の著書『定義』には、次のような言葉があります。
齋藤孝 著『定義』(2023年12月 筑摩書房 刊)より
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「構えとは、起こり得るすべての状況に対応できる準備である。」
ブルース・リーはカンフー映画『燃えよドラゴン』で世界のハートをつかんだ伝説の武道家です。この言葉の肝は「起こり得るすべての状況に対応できる」という点です。
そのために「自然体の構え」をするということでしょう。だから武芸の達人はゆらりと立っているイメージがあります。力が入っていて固まっていては、次に動きにくいからです。仕事でも同じことが言えます。
私は大学院生の時に、長野県の小学校の先生の素晴らしい授業を見ました。三好達治の『土』という詩を題材にした授業でしたが、先生は前日に入念な準備をしていたのに、当日はそれを全部捨てて、子どもたちに自由に発言させていました。
子どもたちが詩を読む声を聞いた時、先生は自分が想定していたよりも解釈が深いと感じたからです。その時のライブ感覚を大切にすることが準備であり、構えです。
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十数年前に剣道六段の方から伺った話があります。
全日本剣道選手権で何度も優勝した警視庁の老剣士と対戦する機会があったそうです。
相手が年配者だからと見くびっていたものの、いざ構えてみるとまったく隙がなく、緊張のあまり体が動かなかった。結果は、あえなく一本負けだったそうです。
その後、その先輩剣士から受けた指導は、驚くほど基本的なものでした。
高度な技でも、難しい精神論でもなく、竹刀の握り方、足の構え方といった、初心者に教えるような基本の徹底でした。そのとき、本当の強さとは、特別な技術ではなく、基本を深く身につけ、当たり前のことを当たり前に実行する力なのだと痛感されたそうです。
自然体の構えを極める人は、必ず基本を大切にし、日々鍛錬を重ねています。
鍛錬とは、深い技術を体得するために、長い時間をかけて自分を磨き続けることです。
千日(約3年)の稽古でようやく「鍛」の段階、万日(約30年)の稽古を積んで初めて「錬」の域に達するともいわれます。
今の時代、私たちは30年もの月日をかけることはできませんが、日々「当たり前のことを大切にし、きちんと実行し続ける」ことはできます。そこで自身の努力で身についた基本の構えこそが、企業を守り、未来を切り拓く経営の要諦なのではないでしょうか。
株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光