社長の一言集
第226号「三つの善知識」
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「三つの善知識」
2025年226号
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今、世界がトランプ大統領に振り回されています。
今年1月の就任以降、わずか100日の間に、追加関税の乱発とその修正、さらには外交・安全保障に関する発言により、世界の秩序を大きく揺るがしています。
一方、国内では「ゾンビ企業」と呼ばれる倒産予備軍が50万社を超える状態(※東京商工リサーチ試算)で、関税の影響、金利の上昇、人手不足、経済の先行き不安といった要因が重なり、倒産リスクは高まるばかりです。
企業の成長過程は、設立期から始まり、成長期、成熟期を経て、衰退期に至ります。
最後は、人の一生と同じように、企業も必ずいつかは終焉を迎えます。
昨今では「人生100年時代」と言われていますが、企業の平均寿命は、かつての30年から最近では10年程度と年々短くなっています。
特に今年は、廃業や倒産の件数が前年比で二桁以上の伸びを示しており、成長期や成熟期を迎えることなく、終焉を迎える企業が増えているようです。
松下幸之助翁が提唱した「ダム式経営」は、私たちに多くの示唆を与えてくれます。
この経営哲学は、資金や人材に常に余裕を持たせることで、安定した経営の継続を目指すということです。
しかし、その根底には「いつでも店を閉められるように」という創業者松下幸之助翁の大きな危機感があったとされています。
(※幸之助翁は、社内では、会社ではなく店という言い方をされていました。)
一方、かつて松下電器(現パナソニック)と競合関係にあったダイエーは、なぜ落日を迎えたのでしょうか?
ダイエー創業者の中内氏を知る人物のお話で、「中内さんには、無常観がなかった。」と、しみじみ語られたことを思い出します。
当時、小売業で日本一になった中内氏でしたが、栄華の絶頂期にも必ず終わりが来るという認識が十分でなかったため、備えのないまま一つの時代を終えることになったのかもしれません。
仏教の教えで、人間には「三つの善知識」が大切だと教えてもらったことがあります。
それは、人(あるいは企業)を応援し、共に助け合い、正しい方向へ導いてくれる存在のことです。
一つ目は、外護の善知識(げごのぜんちしき)
これは、外から支え、応援してくれる人の存在です。
たとえば、経済的な支援をしてくれる人や、精神的に励ましてくれる人です。
二つ目は、同行の善知識(どうぎょうのぜんちしき)
これは、共に働き、共に学ぶ人のことです。
どんな困難な時にでも助け合いながら道を進む仲間のような存在です。
三つ目は、先達の善知識(せんだつのぜんちしき)
これは、私たちに正しい道を教えてくれる指導者や先生のことです。
大事の時に迷い、悩む中で、正しい決断について指導をしてくれる人です。
松下幸之助翁の有名な「ホトトギス」の話があります。
「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」は、織田信長。
「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」は、豊臣秀吉。
「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」は、徳川家康。
そして松下幸之助翁は、こう語ったといいます。
「鳴かぬなら それもまたよし! ホトトギス」
何事も受け入れる力、適応する力、そして深い感謝力の塊が、松下幸之助翁です。
経営も、人生も縁です。
色々な縁がある中で、善き人ばかりではありません。
悪い人との出会いであったとしても、「それもまたよし!」と受け入れ、結果、良縁へと変えてしまう松下幸之助翁の人並外れた人間力に驚嘆します。
まさに「三つの善知識」を実践し、さらにそれを超えた存在が松下幸之助翁なのではないでしょうか。
多くの人に助けられ、多くの人と共に生き、多くの人を導かれた94年の生涯でした。
坂村真民(仏教詩人)さんのお言葉
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「人間いつかは終わりがくる。前進しながら終わるのだ。」
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経営も人間の身体も段階的な成長の過程はありますが、人は"終わりの時"まで成長し続けることはできるのです。
株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光