社長の一言集

第223号「真の勇気をもつ」

2025/01/31

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「真の勇気をもつ」

                2025年223号
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東京商工リサーチ(TSR)の2024年「休廃業・解散企業」動向調査によると、
2024年に「休廃業・解散」した企業は、6万2,695件(前年比25.9%増)と初めて6万件を突破しました。
企業倒産は、11年ぶりに約1万件を超え、休廃業企業と倒産を合算した市場からの退出企業は
約7万2,700件(前年5万8,478件)が見込まれています。
更に、大手企業でも上場廃止の動きが出始めています。

2025年は原材料費・人件費・光熱費等の高騰、更に人手不足で厳しさが増しています。
特に、流通系では衣料、飲食、サービス業は深刻です。

一方で、2024年のM&A(企業の合併・買収)は、件数と金額ともに過去最多を更新するなど、
活発な動きを見せています。
2024年の国内M&A件数は全業種含めて2,080件となっており、昨年の1,621件から
約30%の増加となっています。(レコフM&Aデータベースより日本M&Aセンターにて集計 )
各方面で、油断、分断、断絶と「断」が押し寄せる時代の始まりです。

2025年、政治・経済・人口問題・紛争・異常気象等の不安要素は昨年以上に大きくなりそうです。
特にトランプ政権の登場、生成AIのめざましい進化は、常識を超える大波乱をもたらしそうです。
今後、私たちはあらゆる事態を想定し、最良な決定・決断のもと、迅速な対応が求められます。

決定とは、複数の選択肢の中から「正しいこと」を、衆知を集めて選び出す日常的なプロセスです。
これは、問題の種類を理解し、必要条件を明確にし、最も適切な解決策を見つけるための分析的なアプローチです。
一方、決断とは、不確実性や大きなリスクを伴う状況で、自らの意志と失敗を恐れぬ勇気を持って、
やり直しがきかない、退路を断つ覚悟でおこなう重要な選択です。

今は、30年前にドラッカー博士が唱えたような状況下であり、正に決断の時です。


P.E.ドラッカー著『未来への決断:大転換期のサバイバル・マニュアル』(1995)ダイヤモンド社刊より
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もはや、単なる社会的な転換を超えている。
人間の存在そのもののあり方の転換である。
われわれはまだ、この転換が何を意味するのか知らない。
そのような社会における価値観、献身、問題がどのようなものであるかを知らない。

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過去、先人たちはどのような覚悟で大きな決断をしてきたのでしょう?
経験の浅い未熟者の私は、先人達が数々の経験の中で残して頂いた言葉を読み返すたびに、
新たな気づきを頂いています。

松下幸之助翁、稲盛和夫氏の「決断」についての言葉があります。


松下幸之助著『道をひらく』(1968)PHP研究所刊より
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「断を下す」
ひとすじの道をひとすじに、ひたすら歩むということは、
これもまたなかなか容易ではないけれど、
東と西に道がわかれて、それがまた北と南にわかれて、
わかれにわかれた道を さぐりさぐり歩むということは、これも全く容易でない。

どうしようか、どちらに進もうか、あれこれととまどい、思い悩んでも、
とまどい悩むだけではただ立ちすくむだけ。

自分ひとりなら、長い道程、時に立ちすくむこともよかろうが、
たくさんの人があとにつづいて、たくさんの人がその道に行き悩んでいるとしたら、
わかれた道を前にして、容易でないとグチばかりこぼしてもいられまい。

進むもよし、とどまるもよし。

要はまず断を下すことである。みずから断を下すことである。
それが最善の道であるかどうかは、神ならぬ身、
はかり知れないものがあるにしても、断を下さないことが、
自他共に好ましくないことだけは明らかである。 人生を歩む上において、
企業の経営の上において、
そしてまた大きくは国家運営の上において、
それぞれに今一度、
断を下すことの尊さを省みてみたい。
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稲盛和夫OFFICIAL SITEより
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「真の勇気をもつ」
仕事を正しく進めていくためには勇気が必要です。ふだん私たちは、周囲の人から嫌われまいとして、
言うべきことをはっきり言わなかったり、正しいことを正しく貫けなかったりしてしまいがちです。

仕事を誤りなく進めていくためには、要所要所で正しい決断をしなければなりませんが、
その決断の場面では、勇気というものが必要となります。しかし、そこでの勇気とは蛮勇、
つまり粗野で豪傑と言われる人のもっている勇気とは違います。

真の勇気とは、自らの信念を貫きながらも、節度があり、怖さを知った人、つまりビビリをもった人が
場数を踏むことによって身につけたものでなければなりません。

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その決断は正しかったのか、間違いであったのか?
真の評価は、長い歴史でしか分からないものもあります。
戦前、戦中、戦後の動乱期を生き抜かれた松下幸之助翁、稲盛和夫氏が多くの決断の中で得られた
貴重なお言葉は、現在だからこそ必要な道標です。
自らの信念と勇気をもって、決断の場に挑むことでしか、未来はつくれません。

2025年という年は、日本と世界で歴史に刻まれる大きな節目の年になりそうです。
今年が戦前にならないことを祈るばかりです。

株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光