社長の一言集

第179号「万境直観」

2021/05/31

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万境直観

                2021年179号
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コロナ禍で、国家、企業、リーダーの今まで見えなかった本質が露呈しはじめました。
先が見えない、予測ができない未経験の国難の中での、決断力、現場力、結果の現れです。
そして、コロナ禍は、私たちの生活や仕事の中で、さまざまな気づきと、機会をもたらしました。

機会は「好機」、「危機」、「転機」として考えられます。
自分たちにとって、今をどの「機」としてとらえるのか?
限られた資源と時間を、どの「機」に集中させるべきか、の決断が求められます。

経営者の心構えとして、「順境悲観」・「逆境楽観」と言われます。
転機の時の「観」はなんなのでしょう? 私は「万境直観」なのではないかと思います。
「万境直観」は、私の造語なのですが、「万境」は禅の言葉で、『心は万境に随って転ず、転ずる処、実に能く幽なり』から用いました。


<万境の解釈>
変化する外界に柔軟に対応しながら、何事にもとらわれず、自由に自分の本性をしっかり認識して生きていく。目先の事に一喜一憂しない。他者と比較せず自分独自の生き方をする。

今を「転機」としてとらえ、活かすためには、会社の本業、戦略、人事等の大転換を伴います。
誰も経験した事がない、過去に事例もない中で、大きなリスクを伴う最終決断は、正に経営者の「万境直観」だと思います。

過去の事例を振り返っても、危機感の欠如、混迷、硬直化する組織の結末は悲惨です。

そのような組織は、外部より内部の事に気を取られ、未来よりも今の事(目先)に目が奪われ、リスクより安定を優先します。更に、責任者不在の場当たり発想と、現場丸投げ策が、最悪の結果をもたらします。まさか、あの企業が?という、大きくて歴史のある会社が、今まで多く破綻してきました。

理由は外部要因だけではなく、会社内部、特に経営トップ層に要因がありました。政治も同じです。

危機が破局にならないように、好機が後悔にならないように、「CXへの挑戦」が必要です。
※CX(コーポレートトランスフォーメーション)とは、企業の根幹からの変革です。

最近、気になる経営者がいます。サッカーの本田圭佑氏です。
「俺にとってサッカーは人生のウォーミングアップだ。」
「ひとつのことに人生をかけるという生き方を選ばない。」という彼のメッセージに共感しました。

本田氏は、サッカー選手でありながら、プロサッカチームの経営、サッカー教室等の教育事業、スタートアップ企業等への投資等、色々な顔を持つ人物で、今までの日本のスポーツ界、実業界では稀な存在です。

実は、昨年7月からリゾームは、30周年事業でB-PARKというバッティングセンター併設の野球教室を新たに開業しました。子どもたちの夢と人生の応援事業です。

元プロ野球出身のコーチ達が、弊社社員として入社して、現在約90人の生徒たちに教えています。

野球教室紹介 - YouTube

彼らの経験、苦労、他のプロ野球選手達の第二の人生等、色々な話を聞きます。
コーチの森山氏はロッテの角中選手をはじめ、多くの現役選手を育ててきました。
甲子園、プロ野球入団という夢を掴んだ彼らにとって、戦力外で現役を卒業した後の人生こそが、正に本番であり、本田氏の「俺にとってサッカーは人生のウォーミングアップだ。」というメッセージがそのまま当てはまるのです。

私の目標は、彼らに野球技術だけではなく、ビジネスセンスも磨いてもらい、プロ野球時代より多い年俸を稼いでほしい。そして、「俺にとってプロ野球は人生のウォーミングアップだ。」と彼らに言ってもらう事です。

又、コロナ禍により、リアルの教室とは別にオンラインコーチの取り組みも始めました。
今まで、無理だと考えていた野球レッスンがスマホで十分出来たのです。
※4月にオンラインアプリのスタートアップ企業にもリゾームで資本参加をしました。

ITとは縁がなかった、野球一筋のコーチが、自ら動画を撮り、アプリでメッセージを生徒たちに配信し、オンラインビジネスに目覚めていく姿は、正にDXの実践です。

オンラインコーチ紹介動画 - YouTube

万境流でB-PARKをご説明すると、少子高齢化、地方の衰退、情報化、コロナ禍の到来という外部環境の変化に対応しながら、野球大好きな子どもたちの笑顔と成長のために、プロコーチにより、野球の技術、生き方をしっかり子どもたちに伝えて、「強く生きる力」を育んでいく事業がB-PARKです。

又、野村克也監督の「野球選手が現役を長く続けられるための15ヵ条」は、現役の選手の生き残りだけではなく、プロ選手達の現役後の生き方、更に私たちの経営にも通じる貴重なメッセージです。

野村克也氏『生き残る技術』竹書房

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生き残るための15ヵ条を忘れるべからず

監督時代、私はキャンプ中ほぼ毎日、選手たちを集めてミーティングを行った。そこで「野球とは考えてするものだ」ということを選手たちに理解してほしくて、野球の奥深さを選手たちに説いた。

ミーティングでは、ただのんびりだらりと私の考えを述べているだけでは選手たちも飽きてしまうから、そのような状態にならないよう「どんな言葉で伝えたら選手たちの心に響くか?」だけを考えていつもミーティングに臨んでいた。そしてその際に役に立ったのが、たくさんの書物から得た"心に残る言葉"だった。

各球団で私は選手たちに共通して伝えていたことがある。それは、ひとりでも多くの選手に長く活躍してもらうために私が考えた「プロ野球で生き残るための15ヵ条」である。

本章の締めとして、その15ヵ条をみなさんにお届けしたい。

[プロ野球で生き残るための15ヵ条]

第1条  人と同じことをやっていては、人並みにしかなれない
第2条  目的意識と目標意識を持つことがもっとも重要である
第3条  常に自信を持って挑む
第4条 「プロ意識」を持ち続ける
第5条  人真似(模倣)にどれだけ自分の(プラス)αをつけ加えられるか
第6条  戦いは理をもって戦うことを原則とする
第7条  状況の変化に対し、鋭い観察力、対応力を持っていること
第8条  セールスポイントをひとつ以上持っていること
第9条  自己限定人間は生き残れない
第10条 打者は相手投手に内角(球)を攻める恐怖を持たせ、投手は内角球の使い方がうまくなければならない
第11条 鋭い勘を日頃から鍛えておく
第12条 常に最悪を想定して対策を練り、備えておく
第13条 仕事が楽しい、野球が好きだ、の感覚を持て
第14条 時期(そのタイミング)にやるべきことを心得ている
第15条 敗戦や失敗から教訓を学ぶこと

以上が、私が選手たちに伝えていた15ヵ条である。ぜひ、みなさんも参考にしていただきたい。

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「状況の変化に対し、鋭い観察力、対応力を持っていること」の教訓を含め、どれも今だからこそ私たちに響く、貴重な教えですね。

「万境直観」を発するには、日頃からの心構え、学び、実践、反省の積み重ねが必要だと思います。
「備えてこそ、真の打ち手あり」ですね。

将来、「あのコロナ禍のおかげで今がある。コロナ禍は今の人生のウォーミングアップだった」と言える社会を子どもたちに残すために、新たな挑戦、更なる精進が必要です。

株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光