社長の一言集

第154号 「真の富とは道徳に基づくものでなければ決して永くは続かない。」

2019/05/25

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「真の富とは道徳に基づくものでなければ決して永くは続かない。」
                            2019年154号
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四十、五十は洟垂れ小僧
六十、七十は働き盛り
九十になって迎えが来たら
百まで待てと追い返せ。
5年後の2024年の新一万円札の肖像に採用された渋沢栄一氏の言葉です。

現在は「人生100年時代」と言われ、本当に60代、70代は働き盛りという
言葉が現実化しつつあります。

渋沢栄一氏は天保11年(1840年)生まれで、91歳で亡くなるまでに、明治
維新を迎えた日本国のために、500社近い会社、600の社会事業の設立に尽
力し「日本資本主義の父」と言われた人物です。

経営学者であり社会学者のドラッカー博士はその著書『マネジメント』の
序文で渋沢栄一氏を名指しし、「私は、経営の『社会的責任』について論じた
歴史的人物の中で、かの偉大な人物の一人である渋沢栄一の右に出るものを
知らない。
彼は世界のだれよりも早く、経営の本質は"責任"にほかならないという
ことを見抜いていた」と高く評価しています。

月刊誌致知の2015年7月号に、渋沢栄一氏のお孫さんでエッセイスト鮫島純
子さんの渋沢栄一氏のエピソードの記事がありました。

『すべてに感謝する心が新たな扉をひらく』
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 鮫島/祖父は一代で五百以上の会社設立に関わってきましたが、その根底に
 あったのは、みんなが幸せと感じる世の中をつくりたいという思いだけでし
 たから。
 もちろん経済的なレベルで差が生じるのは仕方がないことですが、
 心が満足するようにと考えていたように思います。

 ですから、どんなに困っている人がいても、ただ物をあげるということは
 していないようです。
 これまでもいろいろな方に「お祖父様のおかげで」とお話しいただきまし
 たが、祖父のやり方というのは、物品援助というよりその方の特性を
 引き出し、働いて役に立っている喜びを引き出し、それに見合う以上の
 報酬を差し上げるという形をとっていたようです。

 -特性を引き出す。

 鮫島/例えば私のお習字の先生は小学生の頃、週にいっぺんくらいお稽古にい
 らしてくださいました。
 その頃はまだ私も幼くて何も存じませんでしたが、そのおばあ様は徳川慶
 喜公の側近中の側近、平岡円四郎さんのご遺児でした。

 祖父はこの円四郎さんのおかげで慶喜公の家来に取り立てていただいた
 経緯がありました。
 ところが円四郎さんはあらぬ疑いをかけられて水戸の浪士に暗殺されて
 しまわれました。

 祖父は円四郎さんのご恩に対し、残されたご遺族のご生活を考え、
 その方がいきいきと生きられるようなご援助の仕方が大事だと考えるわけ
 です。
 家も差し上げていましたが、ご遺児の方は書がお上手と分かり、孫たちの
 先生として各家をお稽古をして回っていただき、その月謝という形でご援
 助をしていたようです。

 -お祖父様の人柄が伝わってくるエピソードですね。

 鮫島/他にも思い出すのは、後に運輸大臣におなりになった永野護氏です。
 護氏は私の父・渋沢正雄とは第一高等学校時代からの親友でした。

 東京帝国大学在学中に、広島でお寺のご住職をしておられた護氏のお父様が
 八人のお子さんを残して早くに亡くなられてしまったそうです。
 このままでは長男である護氏が勉学を続けられなくなることを憂えた父は、
 このことを祖父に相談しました。

 その時も祖父はただ広島にある永野家にお金を送るようなことはしません
 でした。
 護氏は成績がよかったので、父を含めた息子と親友たちの家庭教師とい
 う資格で学生寮に引き取り、永野家のほうには、報酬以上のものを送って
 いたと聞いています。

 -渋沢栄一というと大事業家というイメージが強いですが、そういった
 細やかな心配りもされていたのですね。

 鮫島/そうですね。あれだけの事業に関わっていたのだから、大きなことだ
 けに目を向けていたように思われるかもしれませんが、母から聞いた話によ
 ると、お客様が来られる際には、必ず「便所の紙は整っているか」と注意を
 促されたそうです。

 -そんなところにまで気を配られていたのですか。

 鮫島/大きな仕事をしているのに、「お礼状は出したか」等細かいところまで
 気を配る思いやりに、母は後年感歎していました。
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企業にとって利益追求は当然ですが、渋沢栄一氏は「論語と算盤」の
著書の中で、「道徳経済合一説」の理念を唱えています。
一部の企業が利益を独占するのではなく、国全体を豊かにする為に富は社会
に還元することの必要性を説いています。

又、論語の中の「一以貫之〈いちをもってこれをつらぬく〉」という言葉が
あります。
これは、一つのもの(仁:思いやり・誠実さ)をもって、あらゆる事柄に
対処すべきという信念の孔子の言葉です。

この原稿を書きながら、2024年の新一万円札の肖像に渋沢栄一氏が選ばれた
背景に込められた意味を改めて考えさせられました。

渋沢栄一氏の言葉
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真の富とは道徳に基づくものでなければ、決して永くは続かない。
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                       株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光

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