社長の一言集

第149号 「自己を丹誠する」

2018/12/25

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「自己を丹誠する」
                            2018年149号
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2016年に東洋経済新報社から出版された『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』
(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著)は、
「100年人生」というキーワードを日本にもたらしました。
既に、日本政府の中に「人生100年時代構想会議」が設置されています。
「人口減少、超高齢化社会の到来」が、いつの間にか「一億総活躍社会実現」という
スローガンに代わり、ほとんどの人が、男女に関係なく何歳までも働き続けなければ
ならないのが日本の実情です。
「もう歳だから」、「退職したから」という言葉は通用しなくなりそうです。

致知 2018年11月号特集『自己を丹誠する』より
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 自己丹誠。自分という人間をまごころを込めて仕上げていく、ということである。
 この言葉は禅の高僧、松原泰道師から教わった。
 泰道師は「生涯現役、臨終定年」を座右銘とされていたが、その銘の通り、
 亡くなられる三日前まで有志の集いで法話をされ、戻られると、
 「のどがかわいた。ビールが飲みたい」と横になられた。
 その三日後に百一歳の天寿を全うされたのである。
 その泰道師は晩年よく、「空しく老いないためには自分自身への丹誠が欠かせません」
 と言われ、「一生、自己丹誠」を目標として日々を過ごされていた。
 自分自身への丹誠は死ぬまで続けなければならない、というのである。
 泰道師がよく紹介されていた詩がある。アメリカの詩人ホイットマンの詩である。
 女あり
 二人ゆく
 若きはうるわし
 老いたるはなおうるわし
 若い女性は美しいが、老いたる女性はさらに美しい、というのである。
 若い女性が美しいのは天然自然の美。
 その「うるわし」を漢字に当てるなら「麗」が相応しい。
 これに対して「老いたるはなおうるわし」の「うるわし」は、「美」の漢字が当たる。
 「麗」は生まれついてのすっきりした美しさ。
 これに対して「美」は丹誠によって生まれてくる美しさだ、と泰道師は説明されて
 いる。
 能楽の大成者、世阿弥の『風姿花伝』にも同じような言葉がある。
 「時分の花をまことの花と知る心が、真実の花になお遠ざかる心なり」
 時分の花とは若い時の花、まことの花とは修練、修養によって得られた花の
 ことである。
 若い時には若さならではの花がある。だが、それを自分の実力と思ってしま
 うと、永遠に真実の花はつかめない、というのである。
 また、世阿弥はこうも言っている。
 「住するところなきをまず花と知るべし」
 「住するところなき」は、現状に甘んじない、現状に止まらない、ということ。
 いまの状態に安心してしまわないで学び続けることこそ花だ、というのである。
 芸事に限らない。人生を生きていく上での大事な秘伝を世阿弥は私たちに教えて
 くれている。そしてこれは「一生、自己丹誠」という泰道師の言葉に呼応している。
 話を泰道師に戻そう。
 泰道師は晩年、腰痛で一人で起きるのも寝返るのも難しい状態になった。
 その頃は夜八時に就寝。夜中の十二時まではよく眠れるが、それからが眠れない。
 ヘルパーさんが来る五時頃までは、一人で専ら思索をめぐらせる時間に当てていた、
 という。そういう生活の中で師は自己を丹誠すべく、三Kを実践していた。
 三Kとは、一は感動・感激、二は工夫、三は希望。
 毎日を感動・感激をもって生きる。そのために工夫をする。すると希望が湧いてくる。
 この三Kの実践こそ、まさに自己を丹誠していく要となるものだろう。
 最後に、晩年の泰道師が杖言葉にしていた佐藤一斎の言葉。
 「たとえ視力や聴力が落ちても、見える限り聞こえる限り、学を廃すべからず」
 一道を極めた人は一様に、自己を丹誠した人である。
 一斎も八十六年、白己を丹誠し続けたのだろう。私たちも一生かくありたい。
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陽明学者・安岡正篤氏はこう述べています。
「老いてゆくということは、みんな老衰することだと思うが、そうではない。
老という字は『(慣)なれる』とか『(練)ねれる』と読む通り、
老熟するということである。
老る計りごとが大切なのであって、老年はそれだけ値打ちのあるものでなければならない。
そして、年を取れば取る程、良く変わっていかなくてはならない。硬化しては駄目だ」と。

100年人生の時代、私たちは「自分という人間を真心を込めて仕上げていく」という
覚悟を持つ必要があります。
老いても、「素直で元気に、美しく、そしてしたたかに」を目指して。

                       株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光

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