社長の一言集
第139号 「風ひとすじにやれよ」
2018/01/19
---------------------------------------------------------------------- 「風ひとすじにやれよ」 2018年139号 ---------------------------------------------------------------------- パナソニック(旧松下電器産業株式会社)が、2018年3月で創業100周年を迎えます。 1月13日の日本経済新聞に ゛自問する社長100年目の挑戦/パナソニック、家電出展なし「何の会社か」゛ という気になる見出しの記事がありました。 米ラスベガスで開催された家電見本市「CES」のパナソニックのブースに家電製 品の出店がないことに対して、津賀一宏パナソニック社長の発したコメントに対 する記事です。 ---------------------------------------------------------------------- <記事より抜粋> 「何の会社なのか....。それは正直言って私も自問自答している」。 自身の言葉でパナソニックを表現してほしいと現地で問われ、津賀氏は答えた。 「創業者が始めた家電事業の存在感が大きいため、家電が主軸ではないと言った 途端に喪失感があるのはぬぐいきれない」とも言う。この100年で培った日本国内 首位の家電メーカーというプライドは、ジレンマにもなっている。 津賀氏は自らテレビ用液晶パネル生産やプラズマテレビから撤退し、住宅や クルマ、企業向けシステムに経営資源を集中して業績を立て直した。 ポートフォリオ(事業構成)を組み直す中で、利益を出しにくいテレビや大きな 成長が見込みにくい白物家電よりも新たな稼ぎ頭として世界で戦える事業を重視し てきた。 住宅とクルマを2本柱にする経営方針は明快だ。両事業がいつまでも成長を けん引すれば問題は無いが、いずれも競争は激しい。 津賀氏は「何か1つの事業で次の10年、100年生き残れるのか」とも語った。 -------------------------------------------------------------------------- 誰も経験したことのない社会の大きな変化に対して、多くの会社が自社の未来を 確信を持って描けない、経営苦難の時代が始まっている。 今年になって、なんとも表しようのない先行きへの不安を強く感じます。 そうした時、過去のメルマガを読み返し、改めて先人の言葉に気づかされ、 救われます。 「永遠であるものはない」リゾームメルマガ 2014年94号より 松下幸之助氏著「社長になる人に知っておいてほしいこと」PHP研究所発行より ------------------------------------------------------------------------- それは十数年前のことですが、ある高徳な禅僧と対談したことがありました。 その時に私は、「和尚さん、禅宗は将来どうなりますか」とお尋ねしたんです。 そうすると、「それは自然消滅でしょうな」という答えが返ってきたんです。 それには私も驚きました。 他の人ならともかく、現に禅宗に身をおく、しかも高僧といわれるような人が、 そう言い切られるのですから。 その私の驚きを察したのか、その人はこうつけ加えられました。 「松下さん、それは寿命ですよ。すべてのものに寿命がある。それがお釈迦様 の説かれた諸行無常という事です。 だから、禅宗といえども、時が来れば消滅するのです」 「しかし、和尚さん、そんなことではあなたご自身、布教やお説教に力が入ら ないのではないですか」 「いや、そんなことはありません。いつ寿命が尽きるか分からないけれども、 その最後の瞬間まで私は禅宗に生きます。それが私のつとめですからね。 しかし、それはそれとして『禅宗は将来どうなるか』と聞かれたら、 今のようにお答えするしかありません。それが仏教自体の教えなのですから」 「そうすると和尚さん、わたしのやっている松下電器もいつかは消滅すると いうことですか」 「そのとおりです」 というようなことで、最後は笑い話になったのですが、私はこの会話から 非常に啓発される思いがしました。 ---------------------------------------------------------------------- 何事にも「素直」を心掛けた松下幸之助氏は、この会話で交わされた言葉に 無常観を感じながらも、更に踏み込み『日々新た』という未来に向けた言葉を 考え、大切にしたそうです。 更に、同一の形態の事業では長期的な永続は難しいと、喝破しています。 「自分たちの会社は、何の会社なのか?」 これは、経営トップが会社が消滅するまで、常に繰り返さなければならない 自問自答です。 松下幸之助氏は、1932年に第1回創業記念式を挙行しています。 その式典で、建設時代10年、活動時代10年、社会への貢献時代5年、合わせて 25年間を1節とし、これを10節繰り返すという250年計画を発表しています。 1節毎に、新たな事業を生み出しづける苦しみは経営の必定であると覚悟しな ければならないのですね。 色々調べていたら、昔の松下電気の発展をほうふつとさせるエピソードが ありました。 「今、松下幸之助ならどうする?危機・逆境を好機に変える成功法則」 大西宏氏著 実業之日本社より ---------------------------------------------------------------------- これは、当時の扇風機事業部長から聞いた話だが、 「(扇風機が冬には売れないので)冬季の赤字は夏に挽回します」 という説明を彼が幸之助にしたときに、それこそ目から火が飛び出すくらい 叱られた。 「武士の真剣勝負では切られて血(赤字)を出せばそれでおしまいではないか。 夏に息を吹き返すとでもいうのか」 それからというもの、事業部は、「風ひとすじにやれよ」という幸之助の助言を、 徹頭徹尾、追求し続け独立会社(松下精工)として風中心に事業をきわめ続けた。 その後、換気扇、除湿機、清浄機、送風機、換気装置、排水浄化装置、 風力発電機、防霜装置・・・・などの新商品・技術開発に次々と成功。 今や時代の波にのり時流をつくり、松下電器の環境機器ビジネスの原動力とも なっている。 幸之助は自分が言った言葉について気にしたのか、特にこの゛風ひとすじ゛の 部門に強い関心を持ち続け、陰に陽にサポートしたという。 そしてそれから二十数年たって松下精工を訪れた幸之助は「専業に徹せよ」という 自らの言葉が生み出した驚くべき結末に、 「えらいものだ。こんなに広がっているのか」とたいへん感慨深げに喜んだという。 ------------------------------------------------------------------------- 「風ひとすじにやれよ」という幸之助翁の言葉に、素直な清々しさを感じます。 大きな苦難の先には、命を震わせる寿の風が必ず待っていると信じたいですね。 遅くなりましたが、今年もご指導よろしくお願い申し上げます。 株式会社リゾーム 代表取締役 中山博光 +---------------------------------------------------------------------+