社長の一言集

第116号 「クリエイティブ=シンプル」

2016/02/16
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クリエイティブ=シンプル
                             2016年116号
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年が明けると、震災関連の話題が増えてきます。
早いもので阪神・淡路大震災から20年、東日本大震災から5年目を迎えます。
しかし、震災は過去のことではなく、今すぐ発生する可能性もある現実です。

高知県の黒潮町は、2012年3月に国が公表した南海トラフ巨大地震の新想定で
34.4mという日本一高い津波が押し寄せる可能性があると示されました。
追い打ちは、地震発生から津波到達までわずか2分というスピードです。

予想を遥かに超える津波のリスクと、高齢化率37%の町の住民は、避難を諦める
「避難放棄」か、住むことを諦める「震災前過疎」の選択が迫られました。

「日本一危険な年寄りの町」という厳しい現実に、黒潮町はどのように立ち向
かったのでしょう?

まず、町が取り組んだのは、犠牲者ゼロのための津波避難タワーや避難道整備
といったハード対応。
そして避難計画の策定、組織づくり、訓練等のソフト対応です。

更に、注目すべき取り組みとしては、町に新たな産業を興し雇用の場を確保す
るという、誰もが予想だにしなかった「挑戦」でした。
「日本一危険な町」の認知度を生かした防災関連事業を立ち上げたのです。

海沿いの地元の豊かな海の幸や山の幸を活かした「非常食缶詰」に着目しました。
災害時において不足する栄養バランスや、日頃食べ慣れないものを食べ続けな
ければならないストレスを考慮し、地元の食材を非常時でも簡単に、美味しく
食べられる「防災缶詰」づくりを目指したのです。

町は第三セクターである株式会社黒潮町缶詰製作所を2014年3月に設立しました。
黒潮町缶詰製作所では「おいしいから食べる。食べるから日常的に購入する。
それが備えになる。」という循環備蓄の提案として「毎日食べたい非常食=
日(ひ)常食」をブランド化しました。

驚くことに、それらの商品のブランド名が「34M」。
34.4mの津波の高さをモチーフに、青い海色の旗に、白字で34Mと染め抜いた
ロゴにしてしまったのです。
このビジネスモデル、ブランドのクリエイティブさには、心から感嘆しました。

34M(ツナグ×デキル プロジェクト)は
■34M缶詰による美味しさ、手軽さ、バランスの良い食材の提供ができた。
■34M缶詰を食べるたびに「もしも」の意識にさせる、備えの習慣化ができた。
■黒潮町に雇用を生み出し、人の流失防止と流入が図れた。
■缶詰の原料となる海産物、農産物等の地元産業に貢献できた。
■町民に危機を前向きに受け止め、創造する力を与えた。
など数々の相乗効果を生み出しました。

「クリエイティブ」という言葉は日常的によく使われますが、私は、
クリエイティブ=シンプルだと解釈しています。

クリエイティブとは、難しい、混迷している、混とんとしている、そんな状況
を解決するために、道しるべとなるコンセプト、キーワード、キャッチフレー
ズをポン!とシンプルに表現出来る、簡単な言葉に表せる高度な能力だと思い
ます。
正に、34Mプロジェクトは最高のクリエイティブ作品です。

クリエイティブ能力を発揮するためには
■与えられたテーマ・状況の本質を見抜く
■前提条件を疑う
■素直に向き合う、人の話を聞く
■考えに考えつくす ことが重要です。

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<㈱黒潮町缶詰製作所 大西社長(黒潮町町長)の言葉>
 あきらめたらいかんぞ、
 もういっぺん考えてみいや、、
 出来る方法を編み出すまでやらないかん!

<Steve Jobs (スティーブ・ジョブズ)の言葉>
 シンプルであることは、複雑であることよりもむずかしいときがある。
 物事をシンプルにするためには、懸命に努力して思考を明瞭にしなければ
 ならないからだ。
 だが、それだけの価値はある。
 なぜなら、ひとたびそこに到達できれば、山をも動かせるからだ。
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論語に「一以貫之〈いちをもってこれをつらぬく〉」という言葉があります。
あれこれと、よそ見することなく無駄を切り捨て、ただひたすらに一に徹し
貫く姿勢という意味です。

一を貫くことは、正にシンプル。
一を貫くことにより、独創性が生まれ、明快な方向付けが定められます。

経営も政治も「クリエイティブ」が、もっと必要です。

                       株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光

追伸
今年1月のSCビジネスフェアでは、皆様からメルマガご愛読のお言葉を頂き、
誠にありがとうございます。心よりお礼申し上げます。
稚拙な文章で誠に赤面の至りではございますが、今後も引き続きご指導よろし
くお願い申し上げます。

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