社長の一言集

第108号 「過去、現在、未来の点はつながり、感謝の道となる」

2015/05/29
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過去、現在、未来の点はつながり、感謝の道となる
                                                       2015年108号
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1960〜70年代に日本で電卓戦争というものがありました。
50社以上もの企業が電卓の将来性に着目し、開発競争にしのぎを削り、
小型化低価格を徹底的に追求したのです。
当初、30㎏以上もあり、価格も車1台分だったものが、10年後には300gで
5万円を切るまでになりました。

そうした激烈な開発競争で、最終的にはシャープ、カシオなどの数社を残し、
ほとんどの企業は、多額の赤字を出して撤収していきました。
小型化・低価格も今の技術では、ほぼ限界まで達したと誰もが考えました。

しかし、戦いは更に続き、カシオは12800円の低価格商品を登場させました。
購入ターゲットを一般個人に絞り、そろばん代わりとして従来8桁表示だった
電卓を6桁の電卓として発売してきたのです。
その電卓は圧倒的な価格力で200万台を超える大ヒット商品となりました。

一方、シャープの倉庫は売れ残った電卓の山です。
シャープ本社の役員会で、ある役員から開発陣に不満発言がありました。
「他社は、電卓を8桁から6桁にして大きなコストダウンが実現した。」
「どうして、そんな簡単なアイデアがわが社では出せなかったのか?」と

誰も答えることができませんでした....。

すると、早川徳次氏(シャープ創業者)が静かな口調で話し始めたそうです。

「そんな8桁を6桁にしたら。などという姑息なやり方では技術は進歩しない。
 うちは液晶の技術を開発しているんだから、それでまっすぐ堂々と
 勝負をしたらいいんだ。」

「わたしは物事に対して五段構えをたてている。ひとつにつまずけば、
 すぐに第二へ、そして第二がつまずけば、第三へと用意した策で
 応じていくようにしている。
 わたしの経験からして大抵の問題は五段まではかからない。
 きみたちもそういう心得で次の時代を担う液晶の実用化を実現してほしい。」

早川徳次氏が目指していたものは、目先の電卓の販売競争ではなく
液晶の技術を活かした更なるビジネスの拡大だったのです。

そして、早川徳次氏が招聘した開発トップの佐々木正氏を中心に技術開発を
進め、ついに太陽電池を搭載した液晶表示の薄型カード電卓を創り上げた
のです。

その後、この電卓戦争がシャープの「太陽電池」・「液晶技術」という
次世代の新技術の進化、高収益の黄金期に繋がっていったのです。

しかし、その黄金期に危機は生まれていました。
液晶TV戦略の大誤算で、現在、シャープは大きな苦境に立たされています。
どこで、なぜ道を間違ってしまったのでしょう?

1985年、自らが創業したアップル社を辞任させられ、失意のどん底だった
スティーブ・ジョブズ氏がシャープの佐々木正氏をアポなしで、突然訪ねて
きたそうです。

彼の関心は「その後の電卓はどうなっているの?」にあったそうです。
佐々木氏は「これからはネットワークの時代になるからポータブル性のある
IT機器が求められる。そしてIT機器はポケットに入るものが主流になる。」
と話したそうです。

更に、再生機能だけのヘッドホンステレオ「ウォークマン」をジョブズ氏に
紹介し、その存在を知らなかったジョブズ氏に、「ウォークマン」を買って
一度自分自身で試してみるように勧めたそうです。

ジョブズ氏の米スタンフォード大卒業式(2005年6月)スピーチより
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 あなたは、将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎ合わせることなど
 出来ません。
 できるのは、後からその点をつなぎ合わせることだけです。
 だから、私たちはいまやっていることが、いずれ人生のどこかでつながって
 実を結ぶ事を信じるのです。
 自分の運命、人生、カルマ、何でもいいでしょう。
 その点が繋がり、道となると信じることで、自分の心に自信を与えます。 
 私はこのやり方で後悔したことはありません。
 むしろ、今になってその事が大きな差をもたらしてくれたと思います。
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ジョブズ氏最後のスピーチですが、彼がどん底の時に訪問した佐々木正氏との
「点」もつながっているのでしょうか。
点と点のつながりとは、人と人のつながりでもあるのですね。

早川徳次氏のメッセージ
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 私の苦労は宿命のようだった。時代も違っていた。
 私は自分が過去にやってきたことを、いまの人たちに強制しようという
 気持ちはさらさらない。
 ただ苦労に明け暮れたころが、いまとなってみると限りなく楽しい思い出と
 なっているのである。
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「過去、現在、未来の点はつながり、感謝の道となる。」

                       株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光  

2012年75号のメルマガで早川徳次氏の生い立ちを掲載しております。
http://www.rhizome-e.com/topics/hitokoto/hitokoto075.html
                       
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