社長の一言集

第107号 「事業再定義の決断こそが、経営トップの仕事」

2015/04/30
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「事業再定義の決断こそが、経営トップの仕事」
                                                       2015年107号
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弊社東京オフィスのすぐ横に、家族で切り盛りしている居酒屋があります。
築地の近くなのでネタが新鮮で、お客様をお連れすると美味しいと大変喜んで
頂けます。

先日、社員さんとそのお店に入ると、奥の方で盛り上がっている4人連れの
先客がいました。への字の眉で笑顔が特徴的な男性を囲んでの歓談です。
その方をお見かけするのは久しぶりでした。

このへの字の眉の男性に私が興味を持ったのは2000年の頃です。
北海道で安売り家具を生産販売し、ずいぶん業績を伸ばしている会社があると、
広告代理店の知人から聞いたのが最初でした。
次は2010年、その男性のセミナー終了後の意見交換でした。
短い時間でしたが、今まで会ったことのない「異質で、非常に勉強熱心、
長期展望に基づき、着実に手を打ち続けている経営者」という印象でした。

その男性は、日経新聞の連載『私の履歴書』で「面白すぎる」と話題だった
㈱ニトリホールディングス(以下、ニトリHD)の創業者似鳥昭雄社長です。
従来の『私の履歴書』で登場した経営者のイメージとはかけ離れ、似鳥社長の
記事は壮絶なエピソードや赤裸々な失敗談ばかりです。
かつて、「いじめられっ子のお調子者」だった経営者は毎日、読者に元気と
笑いを提供してくれました。

ニトリHDは 28年連続の増収増益を達成し、売り上げは4173億円を突破。
自己資本比率も76.4%の超優良企業です。
しかし、既存店売上の伸びは最近頭打ちで、2014年度は売上前年比101.6%
客数は98.0%に落ち込んでいます。
前年比を伸ばしているのは103.6%の客単価増です。
※㈱ユニクロについても、今年3月の既存店客数は97.4%となっています。
 両社とも新規店舗が既存店の客数に影響を及ぼしているとしても、
 国内の売り上げ拡大については楽観出来ません。

ニトリHDについては、主要施策の一つである「事業領域の拡大」の取り組み
によって、家具以外の商材の販売が客単価の増加に繋がっているのではないか
と思います。
似鳥社長は早い時期からニトリHDのビジネスを「製造流通小売業」と定義して
いました。「家具販売業」と定義していたら、「事業領域の拡大」など実現
できていません。

人口減少の中、流通業は既存の商品、サービスだけでは確実に売上減少です。
コンビニがコーヒーやドーナッツを新たに取り扱ったり、牛丼店やファミリー
レストランが「ちょい飲み」を始めたことは、正に「事業領域の拡大」です。
「事業領域の拡大」とは、同業他社との戦いではなく、異業種のマーケットを
奪い取る戦略です。

㈱セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は、
㈱セブン-イレブン・ジャパンの設立40周年の記念式典のあいさつで
「(社会)変化がわれわれの業態(が拡大するの)には大変なプラスになった」
と述べました。

ドラッカー博士 『未来への決断』ダイヤモンド社 より
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 事業定義が陳腐化してきたときの最初の反応は、保身である。
 現実を直視せず何事も起こっていないかのように振る舞う。
 次によく見られる反応が、小手先の対策である。
 こうして気がついたときには惨事となっている。
 今日の日本の苦悩の最大要因である。

 「事業の定義が陳腐化しつつあることが分かったならば、新たな定義を行い、
 事業の方針と方法を変えなければならない。自らの行動を、市場の現実と、
 自らの使命として規定すべきものと、獲得すべき強みに沿ったものにしな
 ければならない」
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事業再定義の決断こそが、経営トップの仕事です。

最後に、への字の眉で笑顔が特徴的な似鳥社長のエピソード
日経新聞「私の履歴書」③より
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 ヤミ米の配達には毎日かり出される。冬のある日、配達先で震えていると、
 玄関を後にした直後、母から殴られた。
 「相手先の家ではきちんと挨拶して、にこにこしろ。
 震えている姿なんて相手が不愉快なだけだ」と。
 確かににこにこしていると、リンゴやみかんをもらえる。うれしくて芯まで
 食べたものだ。以来、一歩家を出たらとにかくにこにこするようになった。
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人生も経営も、ニコニコ顔で命がけです。

                       株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光 

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