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デベロッパー企業の挑戦!商業施設の新たな収益源とビジネスモデル Vol.1【後編】

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近年、商業施設を取り巻く環境は急速に変化し、従来の不動産賃貸以外の事業を強化する動きや、新たなビジネスモデルの可能性を模索する動きが広がっています。

特に、賃料収益を主軸とする「場所を貸すビジネス」においては、テナントのコスト負担増や人手不足の深刻化による出店控えを招き、その結果、空き区画の増加といった課題が顕在化しており、収益の安定化が難しくなっています。

商業施設を運営するデベロッパー企業は、こうした状況を打開するため、新たな収益源の創出に挑戦しています。

後編である本記事では、国外の事例や他業種の事例を商業施設に応用する可能性などについて深く掘り下げてご紹介します。

商業施設を運営するご担当者にとって、新しいアイデアやヒントとなる内容をお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。

まだ前編をご覧になっていない方は、こちらからご覧いただけます。
デベロッパー企業の挑戦!商業施設の新たな収益源とビジネスモデル Vol.1【前編】

新たな収益モデル④
「D2Cブランドの出店を包括的に支援」

近年、自社のECサイトを通じて商品を直接消費者に販売するD2Cブランドが増えています。事業の初期段階では資金繰りの制限からデジタルのみで販売を開始し、一定の規模に達すると実店舗という販売チャネルも検討されるケースが増えます。

しかし、店舗出店や運営のノウハウを持たないD2Cブランドが、自社だけで店舗展開を完結することは難しいのが現状です。

そんなD2Cブランドの出店を包括的に支援するビジネスモデルが海外で生まれています

ここでは、米国の大手不動産デベロッパーであるサイモン・プロパティ・グループが投資した企業の事例をご紹介します。

サイモン・プロパティ・グループ:
D2Cブランドの実店舗展開を支援

米国の大手不動産デベロッパーであるサイモン・プロパティ・グループ(以下、サイモン)は、小売支援プラットフォーム「Leap(リープ)」に多額の投資を行いました。

Leapは、D2Cブランドと物件所有者の間に立ち、物件調整から店舗運営の代行まで、実店舗の運営に必要なあらゆる機能を提供する「ゴーストリテイラー」と呼ぶにふさわしいプラットフォームです。

この投資には、Leapを活用してD2Cブランドを取り込み、自社モールの競争力を高める一方、不動産デベロッパーがこうしたサービスを提供することが今後のあるべき姿であるという考えが背景にあると推測されます。

実際に、投資を行った2022年中に4つのD2Cブランドが、サイモンが運営する商業施設内に出店しています。

日本でも近年D2Cブランドの台頭が進んでいますが、実店舗の出店に必要な人材の確保は難しく、経験の浅いスタッフで対応せざるを得ないケースが多いのが現状です。

このような状況下で、商業施設を運営する不動産デベロッパーが、Leapのように出店計画から運営まで代行するサービスを提供すれば、新たな収益源を確保できるだけでなく、D2Cブランドの出店による他施設との差別化も図れるでしょう。

Leapのように出店計画から日々の運営までを包括的に支援するサービスはまだ少なく、ショップの人手不足が深刻化する中、こうしたサービスへのニーズが今後さらに高まることが予想されます。

出典元:サイモン・プロパティ・グループ プレスリリース

新たな収益モデル⑤
「商業施設のメディア化による広告収益」

5つ目の新しい収益モデルとして、商業施設のメディア化についてご紹介します。

近年、「リテールメディア」という広告の仕組みが注目されています。小売店が運営するECサイトや店舗内サイネージ広告などが代表例ですが、購買意欲の高い顧客が集まる商業施設もまた、広告収益を生み出す「メディア」としてのポテンシャルを持つと言えます。

ここでは、小売店のリテールメディアやその他の広告サービスを参考にしながら、商業施設におけるメディア化の可能性を掘り下げていきます。

株式会社ヤマダデンキ:
リテールメディアで広告効果を最大化

まずは、小売の中でもリテールメディアに注力しているヤマダデンキの事例をご紹介します。

ヤマダデンキでは、顧客IDを購買データと紐づけたデータ基盤を構築し、それを活用した広告サービスをメーカーに提供しています。

例えば、特定の期間に競合製品を購入した顧客に対して、別のメーカーが買い替えを促す広告を配信するなど、ファーストパーティデータを活用した広告展開が可能です。

この仕組みを商業施設に応用すれば、ポイントカードやアプリを通じて得た購買データを活用し、ショップ向けの広告サービスを提供することが考えられます。例えば、アパレルショップでの購入頻度が高い顧客に対し、アパレルショップがアプリから直接広告を配信すれば、マス広告よりも高い効果を期待できます。

ショップが他社広告に割り当てていた費用をより高い効果を提供できる、こうした広告サービスに振り替えることで、ショップ運営企業は既存の販促費用をより効果的に運用し、デベロッパー企業は新たな収益源を得るといったwin-winの関係が構築できるかもしれません。

データの整備やパーソナライズ広告の仕組みを構築するには課題も多いですが、成功すれば商業施設にとって新たな収益源となる可能性があります。

出典元:株式会社ヤマダデンキ プレスリリース

来場者データを活かしたトイレ広告の仕組みを構築

最近では、商業施設内のトイレにデジタルサイネージを設置し、広告サービスを展開しているケースが徐々に増えつつあります。ただし、多くの場合、広告サービス自体は外部企業が運営し、商業施設は場所を提供するだけにとどまっています。

しかし、もし商業施設が自社でこの仕組みを運営することができれば、広告収益という新たな収益源を確保することができます。

従来、商業施設内に設置されるデジタルサイネージは、主に共用部などの人通りが多い場所に配置されており、移動中に視認されることが多いため、広告内容が十分に伝わりにくいという課題があります。

これに対し、トイレ広告は利用者が比較的長時間1人で過ごすプライベート空間で訴求できる点が大きな特徴です。さらに、人感センサーを活用すれば、利用者がトイレに入ったタイミングで広告を開始することも可能です。

また、ターゲットごとにゾーニングされている商業施設では、映画館や子供向けフロア、レディースファッションフロアなどに隣接するトイレで、エリア特性に合わせた広告を配信することで、広告効果を一層高めることが期待できます。

このように、商業施設を運営する企業ならではのデータを活用した広告は、広告主にとっても費用対効果の高い選択肢となるでしょう。

商業施設のメディア化を具現化するメーカー直営店舗

最後は、広告サービスではありませんが、商業施設自体がメディア化している事例として、メーカーによるショップ出店をご紹介します。

これまで小売店を通じて商品を販売していたメーカーが、自社のブランディングや認知拡大を目的に、ショールーム的な店舗を商業施設に直接出店させるケースがいくつか見られます。

例えば、2024年春にリニューアルオープンしたCoCoLo新潟には、菓子メーカーの「ブルボン」がコンセプトショップを出店しました。また、文具・オフィス用品メーカーの「コクヨ」は、羽田エアポートガーデンに自社製品の魅力を発信するショップを出店しています。

これらの事例は、商業施設が単なる「売り場」ではなく、商品の魅力を直接発信する「メディア」としての役割を果たしていることを示しています。

さらに、2024年4月にオープンした「ハラカド」は、商業施設のメディア化において注目すべき代表的な施設と言えるでしょう。商業施設のメディア化については、今後も動向を追い続けていきます。

メーカー企業によるショップ出店の事例については、こちらの記事をご覧ください。
【商業施設のメディア化で広がる新たな出店企業】注目のコンセプトショップ・ショールームをご紹介

新たな収益源創出のためには
まずは既存業務の効率化を

商業施設における新たな収益源の創出には大きな労力が伴います。そのためには、既存業務の効率化を進め、時間やリソースの余裕を生み出すことが不可欠です。

リゾームは、デベロッパー企業様の業務効率化に役立つソリューションを、豊富に取り揃えています。

▼業務ソリューション
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後編まとめ

後編である本記事では、国外の事例として「D2Cブランドの出店を包括的に支援」をご紹介するとともに、「商業施設のメディア化における広告収益の可能性」について深く掘り下げました。

従来の不動産賃貸のみに依存しない事業展開によって、新たな収益源を確保する可能性を感じていただけたら幸いです。

商業施設において、新たな収益源を生み出すことは容易ではありませんが、他業種の成功事例を参考にすることで、収益源の多様化につながる可能性が期待できます。

前編では、国内のデベロッパー企業における、商業施設に新たに生まれつつある収益モデルについてご紹介しています。新しいアイデアやヒントが得られる内容となっていますので、ぜひ前編もご覧ください。

デベロッパー企業の挑戦!商業施設の新たな収益源とビジネスモデル Vol.1【前編】