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デベロッパー企業の挑戦!商業施設の新たな収益源とビジネスモデル Vol.1【前編】

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近年、商業施設を取り巻く環境は急速に変化し、従来の不動産賃貸以外の事業を強化する動きや、新たなビジネスモデルの可能性を模索する動きが広がっています。

特に、賃料収益を主軸とする「場所を貸すビジネス」においては、テナントのコスト負担増や人手不足の深刻化による出店控えを招き、その結果、空き区画の増加といった課題が顕在化しており、収益の安定化が難しくなっています。

商業施設を運営するデベロッパー企業は、こうした状況を打開するため、新たな収益源の創出に挑戦しています。

本記事では、国内外の事例を通じて、商業施設のビジネスモデル変化の兆しや、新たに生まれつつある収益モデルについて詳しく掘り下げていきます。前編では国内事例、後編では国外事例や他業種の事例を商業施設に応用する可能性などをご紹介します。

商業施設を運営するご担当者にとって、新しいアイデアやヒントとなる内容をお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。

本記事の後編はこちらから
デベロッパー企業の挑戦!商業施設の新たな収益源とビジネスモデル Vol.1【後編】

新たな収益モデル①「自社ショップの運営・育成」

近年、商業施設の賃料以外の新たな収益源の構築として多くの企業が取り組み始めているのが、自社ショップの運営・育成です。

不動産デベロッパーが自社ショップを運営することは、商業施設内の区画(場所)を貸すビジネスから、商品やサービスを提供して利益を上げるビジネスに変わり、新たな収益源となります。

また、運営する商業施設内で空き区画が生じた際には、自社ショップの出店で補うことができ、さらにショップ育成が進めば、施設の価値向上にもつながります。

自社ショップを実際に運営することで得られる店舗運営ノウハウや育成の知見を活用し、テナント支援の質を高めることができます。このような知見に基づくサポートは、出店テナントの成長を後押しし、自施設への出店価値を向上させることにつながります。

ここからは、実際に自社ショップを運営している不動産デベロッパーの事例をいくつかご紹介します。各ショップの商業施設への出店有無や出店数は、SC GATE(※)のデータを参考にしております。

※SC GATEとは、全国の商業施設6,200施設、24万ショップ、13万のショップブランド、4万のショップ運営企業等の情報を搭載したデータベースです。

大手不動産デベロッパー:
広がるシェアオフィス運営の取り組み

近年の大手不動産デベロッパーによるシェアオフィス運営の取り組みは、依然として広がりを見せています。ここでは、その中でも代表的な不動産デベロッパー2社の運営事例をご紹介します。

1社目は野村不動産株式会社です。サテライト型の時間貸しシェアオフィス「H¹T(エイチワンティー)」を運営しています。

法人向けのサービスではありますが、都内ビジネスエリアを中心に提携店も含めて全国に290か所展開し、商業施設への出店数は約30店舗です。

他社のオフィスビルや商業施設にも多数出店し、ビジネスの幅を広げるとともに、競争力を高めるためサービス内容やブランド力の強化にも取り組んでいることが伺えます。

2社目は三井不動産株式会社です。法人向けシェアオフィスである「WORK STYLING(ワークスタイリング)」を運営し、オフィスビルへの出店が中心ですが、三井不動産が運営している商業施設にもテナント出店しています。

不動産各社がいずれもシェアオフィスの運営に取り組んでいることから、不動産デベロッパーと相性の良い業態といえるでしょう。

出典元:
野村不動産株式会社 「H¹T」公式サイト
三井不動産株式会社 「WORK STYLING」公式サイト

株式会社アトレ:
長年の運営ノウハウを活かした新たなショップ展開

長い期間をかけて自社ショップを育成している事例として、アトレが運営する「Champ de Herbe(シャン・ド・エルブ)」についてご紹介します。

Champ de Herbeは、化粧品や雑貨を販売しているショップで、一号店の出店は1990年です。現在はアトレの商業施設を中心に13店舗出店しています。

また、2024年11月にこれまでに培ったテナント運営の知識を活かし、Champ de Herbeがプロディースした傘専門店「さっと」がオープンしました。無人決済システム「TTG-SENSE SHELF」を活用した常駐販売員のいない完全キャッシュレスの無人販売店舗で、アトレが運営しています。

常駐販売員を配置しない仕組みであるため、不動産デベロッパーが運営する場合でも追加の人手を確保する必要がなく、店舗数拡大を視野に入れやすいと考えられます。

これは、アトレにとって初の無人販売店舗であり、自社ショップ運営の新たな業態であると同時に、出店テナントが直面する人手不足の課題解決に向けた有効な取り組みとなる可能性があります。

出典元:
株式会社アトレ プレスリリース
Champ de Herbe 公式サイト

J.フロントリテイリング株式会社:
協業で実現する百貨店ならではのリユース事業

大丸、松坂屋、パルコなどを運営するJ.フロントリテイリングも自社ショップによる新たなサービスを展開予定です。

J.フロントリテイリングは2024年11月に、宝石・貴金属、時計、バッグ、アパレルなどの販売・買取りを行っている「コメ兵」と合弁会社の設立に関する合弁契約を締結しました。2025年3月を目途に、リユース事業を行うジョイントベンチャーを設立し、買取専門店を大丸、松坂屋、パルコへ展開していく予定としています。

また、百貨店ならではのビジネスである「外商顧客」も買取サービスの対象とするようです。

外商顧客を対象にすることで、他のリユース事業者との差別化を図り、高品質な商品を取り扱う信頼性の高い取引環境を提供しながら、リユース市場への参入を強化する狙いがあると推測できます。

出典元:J.フロントリテイリング株式会社 プレスリリース

新たな収益モデル②
「従来のテナント支援の範囲を拡大」

2つ目の新しい収益モデルとしてご紹介するのは、ショップ運営のサポートや施設全体の価値向上において重要な「テナント支援」、その従来の業務範囲を拡大させたサービスです。

これらのサービスは、不動産デベロッパーにとって新たな収益源の確保につながる仕組みになると共に、テナント側にもメリットがあり、双方にとってwin-winの関係を実現します。

ここでは、こうしたテナント支援に基づいたサービス事例を2つご紹介します。

三井不動産株式会社:
商業施設の枠を超えたテナント支援の新たな形

三井不動産は、2024年6月に日本の名店と共創する厳選お取り寄せグルメサービス「mitaseru(ミタセル)」の本格事業化を決定し、本サービスの運営主体となる「株式会社mitaseru JAPAN(ミタセル ジャパン)」を設立しました。

国内販売に加え海外販売も実現し、2030年までに事業規模50億円を目指すとともに、日本の食文化継承に貢献すると発表されています。

mitaseruでは、知る人ぞ知る名店やミシュランガイド掲載店など、厳選された店舗の料理を自宅で楽しむことができます。

出店店舗は三井不動産の商業施設に出店していない店舗も含まれていますが、このサービスは出店テナントにとって、実店舗以外での新たな収益源を確保しつつ、ブランド認知や集客力の向上を図るきっかけともなる新たなテナント支援の切り口です。

出典元:三井不動産株式会社 プレスリリース

三菱地所株式会社:
飲食テナント支援の枠を超えた新収益モデル

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三菱地所は、大手町・丸の内・有楽町エリアのオフィスビルや商業施設に出店している飲食テナントを支援し、街に新しい価値を創出しながら、新たな収益源を生み出すサービス「MEC PANTRY」の試験運用を開始しました。

その第一弾として、千葉県匝瑳市や鳥取県江府町の農家から直接仕入れたお米を受注ごとに精米し、エリア内の各飲食テナントへ配送する「丸の内精米店」を展開しています。

このサービスにより、飲食店は精米したての高品質な白米をオンラインでタイムリーに発注できるだけでなく、小ロットから仕入れ可能で、自社単独での仕入れに比べてコストダウンが期待できます。

また、三菱地所が管理する丸の内エリアのデジタルサイネージやビジョンといった広告媒体を利用し、生産者・自治体や飲食テナントのプロモーションをお米の販売とセットで展開しています。

これらの取り組みは、生産者・自治体、飲食テナント、そして三菱地所の三者に価値を生む新たなサービスであり、不動産デベロッパーとしての「テナント支援」の形を拡大させた取り組みといえるでしょう.

出典元:三菱地所株式会社 プレスリリース

新たな収益モデル③
「商業施設運営の知見を他社との協業に活かす」

3つ目の新しい収益モデルは、商業施設運営で培った知見を他社との協業を通じて最大限に活かし、生み出されるサービスです。

不動産デベロッパー単独では対応が難しい領域でも、特定の分野に強みを持つ他社と連携することで、新たなサービスを具体化することが可能です。

さらに、協業を通じて不動産デベロッパーならではの価値を広げるとともに、新たな収益モデルの構築が期待されます。

ここでは、大和リースが他社と協業し、知見を活かして展開している具体的な事例をご紹介します。

大和リース株式会社:
駐車場屋上を活用した大型遊具設置サービスを展開

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大和リースは、大型遊具メーカー国内最大手の「タカオ株式会社」と協業し、商業施設やマンション、駅、空港などにおける自走式立体駐車場の屋上スペースに大型遊具を設置するサービスを開始しました。

設計から施工、アフターフォローまで一貫して対応しており、導入企業が安心して利用できる体制を整えています。

特に、商業施設においては子供のいる家庭を中心に集客力の向上が期待されるだけでなく、滞在時間を延ばす効果も見込まれます。この結果、施設での買い物やサービス利用の増加といった相乗効果も期待できるでしょう。

また、この取り組みは大和リースが商業施設運営から得た知見を、タオカ株式会社と協業することで最大限に活かし、新たな価値を創出するものです。

大和リースは自施設での設置による集客向上だけでなく、他施設への販売を収益モデルの中心に据え、賃料収入以外の新たな収益源確保を実現に向け取り組まれています。

出典元:大和リース株式会社 プレスリリース

新たな収益源創出のためには
まずは既存業務の効率化を

商業施設における新たな収益源の創出には大きな労力が伴います。そのためには、既存業務の効率化を進め、時間やリソースの余裕を生み出すことが不可欠です。

リゾームは、デベロッパー企業様の業務効率化に役立つソリューションを、豊富に取り揃えています。

▼業務ソリューション
商業施設・商業ビル/テナント売上管理システム「SC BASE」
テナント管理システム導入で、コスト削減と業務負担を軽減!

商業施設専用グループウェア「BOND GATE」
テナント管理業務を省力化!
申請業務・アンケート・情報伝達をIT化し、質の高いコミュニケーションを実現

▼リーシングソリューション
商業施設リーシングAI「PROCOCO」
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商業施設出店テナント×路面店(飲食)データからテナント候補リストを瞬時に生成

前編まとめ

前編である本記事では、新たな収益モデルとして「自社ショップの運営・育成」「従来のテナント支援の範囲を拡大」「商業施設運営の知見を他社との協業に活かす」についてご紹介しました。

不動産デベロッパー各社が新たな収益源の創出に挑戦しており、商業施設のビジネスモデルが変化しつつある兆しを感じていただけたのではないでしょうか。

後編では、海外の商業施設運営で注目されている新たな収益モデルや商業施設のメディア化について、さらに詳しく解説します。新しいアイデアやヒントが得られる内容となっていますので、ぜひ後編もご覧ください。

本記事の後編はこちらから
デベロッパー企業の挑戦!商業施設の新たな収益源とビジネスモデル Vol.1【後編】