社長の一言集

第74号 「自分たちの市場はどこなのか?」

2012/07/31
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 「自分たちの市場はどこなのか?」
                                                       2012年74号
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暑中お見舞い申し上げます。

先般は、九州を中心とした記録的な豪雨による大災害が発生しました。
又、日本だけではなく、中国北京でも多くの犠牲者が出ているようです。
被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

7月7日から14日までマイクロソフト社のWorldwide Partner Conference 2012
(WPC 2012)に参加してきました。
全世界からカナダのトロントに14,000人以上が参加した超大型イベントです。
マイクロソフトの最高経営責任者スティーブ バルマー(Steve Ballmer)の
基調講演も圧巻でした。
Windows 8、Windows Phone 8、Windows Server 2012、Windows Azure 、KINECT等
今後の展開についての情報を直接聞けたことは大いに参考になりました。
特にWindows Azureのクラウド事業とWindows8タブレット(Surface)の販売は、
既存のマイクロソフト製品の販売パートナーの事業領域を脅かす存在にもなりか
ねませんが、時代の変化に取り残されないための生き残りをかけた大きな決断と、
事業領域改革の本格的な始まりだと感じました。

時代の変化について、
1980年代までさかのぼります。
ちょうど私が独立間もない頃、文具コクヨさんの全国代理店さん向け小売の
勉強会で講師としてお世話になった事があります。
当時の文具業界でのコクヨさんの全国販売店網は圧倒的なシェアと結束力があり
ました。街の文具屋さん全盛の時期です。
それに出遅れたプラスさんが、80年代にカタログ販売で翌日納品「アスクル」と
いう新しいビジネスモデルで攻勢をかけてきたのです。
販売店網を持つコクヨさんは、なかなかそのビジネスモデルに対抗する事が出来
なかったようです。
強力な販売店網を持っていたことが、逆に足かせになったのです。
1999年には大塚商会さんの「たのめーる」がはじまり、2001年からコクヨさんも
「カウネット」を立ち上げて追撃をはじめましたが、時期を逸した分、その後の
シェア挽回にはご苦労されています。
 又、100円ショップの急激な拡大も、当時の文具業界にとっては想定外の外部
環境の変化だったと思います。
時代の変化はそれだけではありません。
今月アスクルさんはヤフーさん傘下の道を選びました。
BtoC事業で圧倒的ナンバーワンを短期間で目指すための大きな意思決定です。
10年前には考えられないような変化の波が押し寄せています。

人口構造の変化
ネットビジネスの更なる拡がりと技術の進化
政治の低落と国民の政治意識の変化
人々の価値観の変化
資源・エネルギー構造の変化と技術の進化 等
新しい変化の波は、着実に押し寄せています。

ドラッカーはその著書「実践する経営者」の中でこう述べています。
 成長についての最大の問題は、どれほどの成長を望むかではない。
 市場の成長が見込まれる中にあって、限界的な存在に落ち込まないためには
 どれほどの成長が必要かが問題である。
 答えを出すことは容易ではない。見方は分かれる。
 自らの市場をいかに定義するかによって変わってくる。
 ある産業では、十分によい位置であっても、他の産業では限界的であるかも
 しれない。
 そのうえ、市場の定義と産業構造は、市場と技術の実態によって変化する。
 それも劇的に変化する。

この視点で捉えると、アスクルさんのヤフーさんとの提携は必然ですね。
真の競合は、コクヨさんでも大塚商会さんでもなく、他の産業であったAmazonを
中心としたネット関連会社です。

今後、全ての業種において市場の定義が最も重要な意思決定になります。

                         株式会社リゾーム
                          代表取締役 中山博光  

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