社長の一言集
第202号「徳は才の主にして、才は徳の奴なり。」
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「徳は才の主にして、才は徳の奴なり。」
2023年202号
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4月になり、街には新しい顔が目立ち始めました。
インバウンドで日本へ訪れた外国人観光客や、今年から社会人になった若者たちです。
わが社にも、4人の新卒さんが仲間に入ってくれました。
毎日、四人仲良く、社会人としての基礎を勉強中です。
彼らの表情には希望に満ちた輝きがあり、まるで眩しい光のように感じられます。
近年、学生たちが就職先を選択する際に重視する条件が変化してきています。
その中で特に上昇している項目が、「安定性」です。
さらに、その安定性を求める中でも、休みが多く、業務内容・責任が軽く、高い報酬(お金)が得られることを望む傾向が見られるようです。
彼らが重視する「経営が安定していること」は、今日のような不確実な時代を生きる上で当然のことであると言えます。
また、「楽であること」も、仕事を通じてストレスや疲労感を感じずに働けることを望む自然な欲求です。
彼らは、社会に貢献しながら高い報酬(お金)を得ることを望んでいます。
弊社の新卒さんに直接聞いてはいませんが、リゾームヘ入社する目的の中に「安定・楽・報酬(お金)」という項目は当然、当てはまっていると思います。
しかし、言葉の解釈には奥があります。
・「安定している会社」とは、歴史や規模による不動の安定ではなく、しっかりと中心を定め、その軸をブレさせず高速にコマを回転させ続けている会社。※一見すると静止しているように見える
・仕事が「楽」ではなく、仕事が「楽しい」、お客様の笑顔を見ることができる会社。
・報酬(お金)は唯一の目的ではなく、目的の一つである。本当に勝ち取らなければならないのは「自由な人生」。
それはどんなときにも、依存せず、囚われず、思いやりを持って生きていくための、人間力、仲間、多くの経験を手に入れること。
だと私は考えています。
つまり選択される会社とは「生きる」ことを常に意識し、答えを探す実践の場なのだと思います。
『生き方』稲盛和夫著 サンマーク出版より
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私たちはいま、混迷を極め、先行きの見えない「不安の時代」を生きています。
豊かなはずなのに心は満たされず、衣食足りているはずなのに礼節に乏しく、自由なはずなのにどこか閉塞感がある。
やる気さえあれば、どんなものでも手に入り何でもできるのに、無気力で悲観的になり、なかには犯罪や不祥事に手を染めてしまう人もいます。
そのような閉塞的な状況が社会を覆いつくしているのはなぜなのでしょうか。
それは、多くの人が生きる意味や価値を見出せず、人生の指針を見失ってしまっているからではないでしょうか。
今日の社会の混乱が、そうした人生観の欠如に起因するように思えるのは、私だけではないと思います。
そういう時代にもっとも必要なのは、「人間は何のために生きるのか」という根本的な問いではないかと思います。
まず、そのことに真正面から向かい合い、生きる指針としての「哲学」を確立することが必要なのです。
哲学とは、理念あるいは思想などといいかえてもよいでしょう。
それは砂漠に水をまくようなむなしい行為であり、早瀬に杭を打つのに似たむずかしい行為なのかもしれません。
しかし、懸命に汗をかくことをどこかさげすさむような風潮のある時代だからこそ、単純でまっすぐな問いかけが重い意味をもつのだと私は信じています。
そのような根幹から生き方を考えていく試みがなされないかぎり、いよいよ混迷は深まり、未来はますます混沌として、社会には混乱が広がっていく----
そうした切実な危機感と焦燥感にとらわれているのも、やはり私だけではないはずです。
(中略)
私たち人間が生きている意味、人生の目的はどこにあるのでしょうか。
もっとも根源的ともいえるその問いかけに、私はやはり真正面から、それは心を高めること、魂を磨くことにあると答えたいのです。
生きている間は欲に迷い、戸惑うのが、人間という生き物の性です。
ほうっておけば、私たちは際限なく財産や地位や名誉を欲しがり、快楽におぼれかねない存在です。
なるほど、生きているかぎり衣食が足りていなくてはなりませんし、不自由なく暮らしていけるだけのお金も必要です。
立身出世を望むことも生きるエネルギーとなるから、いちがいに否定すべきものでもないでしょう。
しかし、そういうものは現世限りで、いくらたくさんため込んでも、どれ一つとしてあの世へ持ち越すことはできません。
この世のことはこの世限りでいったん清算しなくてはならない。
そのなかでたった一つ滅びないものがあるとすれば、それは「魂」というものではないでしょうか。
死を迎えるときには、現世でつくり上げた地位も名誉も財産もすべて脱ぎ捨て、魂だけ携えて新しい旅立ちをしなくてはならないのです。
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現代社会においては、経済的な成長、ビジネスの寡占化が重視される一方で、精神的な充実や生き方の指針を見出すことが重要であることが示唆されています。
稲盛氏は、その指針となるものが、「理念」、「思想」、「哲学」だと述べています。
いくらAI技術や、経済的な才に恵まれたとしても、「才あって徳なし」では魂は磨けません。
中国の古典、菜根譚の一節です。
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「 徳は才の主(しゅ)にして、才は徳の奴(ど)なり。
才ありて徳なきは、家に主なくして奴の事を用うるが如し。
幾何(いくばく)か魍魎(もうりょう)にして猖狂(しょうきょう)せざらん。」
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意味は、「人格が主人で、能力は召使いにすぎない。
能力には恵まれても人格が伴わないのは、主人のいない家で、召使いがわがもの顔に振る舞っているようなものである。
これでは、せっかくの家庭も妖怪変化の巣窟と化してしまう。」です。
これを見つけた時に、召使いがAIに重なって見えたのは、私だけでしょうか?
株式会社リゾーム
代表取締役 中山博光