社長の一言集
第135号 「会社は終わりのないドラマ」
2017/09/27
激変する時代変化の中で、会社を評価することは大変難しい事だと思います。 同じ会社でも、時代背景、競合環境、技術革新等で、業績や優位性は大きく変 動します。 日本経済を牽引してきた大企業、老舗企業、有名企業等の盛衰を目の当たりに すると、長期的に勝ち残れる会社の評価とはどうあるべきか、改めて考えさせ られます。 私なりの評価方法として ①その会社が日々どういう意思決定・経営活動をしているのか。 ②それは、どのような価値観、信念、経営理念でなされているのか。 ③そして、どのような結果・人材を残したのか。 を意識しておこなうように しています。 そうした中で、日本電産(株)の永守社長の経営には目を見張るものがあります。 1998年に初版本が出て、今年3月に再発行された永守重信氏の『「人を動かす 人」になれ!』(三笠書房発行)は、時代を超えても色あせない経営の実践書で す。 業界No1企業として、結果と人材を出し続ける創業経営者の永守社長の信念、 組織論、マネジメント手法は独自性の中にも本質があり、特に「会社各部門の 役割」には、新たな気づきを沢山頂きました。 『「人を動かす人」になれ!』より ---------------------------------------------------------------------- 絶対忘れてはならない。指示を出す手順 わたしは「会社は終わりのないドラマ」だと思っている。 最初はまったくの白紙の状態から、スタッフを集めてどんなドラマをつくる のかというイメージを描き、シナリオをつくってキャストを選んでいく。 テレビのドラマなら本番が終わればそれですべてが終了するが、会社の場合 はエンドレス。毎日がリハーサルと本番の繰り返しだ。 各部門や社員一人一人には、ドラマと同じように役が与えられる。 その役を見事に演じきった人は喜びや満足感も大きくなるが、それよりもは るかに大きい感動は、全員の心が一つになって、自分たちの演技に自分たち で酔いしれてしまうことであろう。 しかし、なかに一人でも、「どうせつくりものなのだから」と手を抜いた りイヤイヤやる人間がいると、それですべてがぶち壊しになってしまう。 こんなところも会社とドラマの共通点である。 では会社における部門の役割とは、いったい何か。それを永守流にまとめた ものが、次の「会社各部門の役割」である。 ・利益を生み出すのは製造部門 ・会社の将来をつくり出すのは技術開発部門 ・会社を成長させるのは営業部門 ・よい会社に導くのは間接支援部門 ・会社を強くするのは経営者 エッセンスだけを凝縮し、簡単明瞭にまとめた。各部門のリーダーはこの短 いセンテンスの上っ面だけではなく、奥にある深い意味も読み取ってほしい。 たとえば、製造部門は利益を生み出すとなっているが、そのためには価格 やコストダウンはもちろんのこと、品質や納期、ヒト、設備、他部門との連 携なども含めて利益アップを図っていく必要があるということだ。 まずは、言葉の意味を正確に理解する。そして、自分なりの解釈を加えて 部下一人一人の仕事のなかに落とし込んで、具体的に何をすべきかの目標を 与えて、指示を出す。指示も出しっぱなしにするのではなく、進捗具合のチ ェックやフォローも行い、目標を達成するまで見届ける。これがリーダーの 本来やるべき仕事で、目標設定や指示が適切であれば部下は必ず動く。 この手順を忘れてはならない。 ---------------------------------------------------------------------- 日本電産(株)では、創業間もない頃「早飯試験」、「大声試験」、「便所掃除 試験」で世間から随分ひんしゅくを買うような採用試験を実施していた時期が ありました。 当時、私はこの採用試験の話を聞いて随分無茶な採用試験をする会社があるも のだと、世間と同様にひんしゅく気味な感想を持ったことを覚えています。 しかし、その根底にある「ベストを求めず、徹底的にベターを追求する」とい う永守社長の信念と、熱意にあふれた取組みは認識できていませんでした。 現在までの日本電産(株)の経営活動の推移、節目ごとの結果を見て、その偉大 さを改めて納得させられました。 「早飯試験」等で採用されたバイタリティ溢れる積極人材は、その後の日本電 産(株)の発展に大いに貢献してきました。 正に永守流の「歩」を「ト金」にする経営です。 この人づくりのノウハウは、日本電産(株)が世界規模で多くの企業をM&Aして いく中で、確実に業績を改善させ、強固な企業として再生させる力になってい ます。 企業経営は「人で始まり、人で栄え、人で変わり、人で終わる。」という宿命 と対峙する、最高の長編ドラマですね。 株式会社リゾーム 代表取締役 中山博光 +---------------------------------------------------------------------+