社長の一言集

第129号 「決断は終わりではなく、始まり」

2017/03/22
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「決断は終わりではなく、始まり」
                            2017年129号
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人生にも、経営にも大きな決断をしなければならない時があります。
「攻める(始める)」決断、「撤退する(止める)」決断です。
いずれも、最後には大きな勇気が必要となりますが、「攻める」勇気より、
「撤退する」勇気の方が格段に上ではないでしょうか。

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 「事業はすべて、進むより退く方が難しい。
         撤退時期を逸したら、あとは泥沼でもがくしかない」
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この言葉を残したのは日清食品株式会社の創業者、安藤百福氏の言葉です。

世界的なヒット商品であるカップヌードルの発売から4年後の1975年に、安藤
百福氏は、日本政府から余剰米の消費促進の協力を要請されて、カップライス
を商品化しました。
投資額は、当時の日清食品の資本金の約2倍、年間利益に相当する30億円です。

カップライスの試食会には、歴代の農林大臣、当時経団連の会長だった土光敏
夫氏も出席されました。
熱湯をかけるだけで簡単に食べられる「エビピラフ」「ドライカレー」「チキ
ンライス」などを試食して、出席者の誰もが「即席ライスとしてこれ以上望む
ことはない」と大絶賛しました。

ところが発売してみると、まったくと言っていいほど売れません。
1個200円のカップライスは、1袋20円の即席麺の10個分にも相当し、一般の消
費者には高すぎたのです。
小麦粉の5倍もする米を原料にしていたので、価格を抑えることは困難でした。

安藤百福氏は、市場のニーズを読み違えた事に気づき、カップライスの撤退を
早々に決断します。
社内では、もっと根気強く消費者に価値を訴えかけ残すべきと、反対がありま
した。
しかし、「撤退の時を逃したら、泥沼でもがくことになる。」多数の意見に流
されて、決断を先延ばししたら、本業の即席麺まで危うくなると安藤百福氏は
判断したのです。

「未練」、「期待」、「見栄」、「責任回避」に囚われ、決断を延ばしを続け、
致命的な損失と禍根を残した事例が今も、昔もたくさんあります。

経営には、いつの時代でも機会をとらえ挑戦することが必要です。
しかし、次のチャンスに挑戦できる余力を使い果たさないように「撤退基準・
ルール」を定めておくことが必要です。
撤退基準・ルールを用いることにより、まわりにも、自分にも撤退の「未練」、
「期待」、「見栄」を断ち切ることが出来ます。

『心を高める、経営を伸ばす』稲盛和夫著 PHP研究所より
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 <撤退の決断をする>
 経営者の決断において、難しいことのひとつに、事業からの撤退という問題
 があります。
 ある事業が十分な収益を生まなかった場合、どこでやめるかということです。

 少しばかりトライして退くようでは、何をやっても成果をあげることはでき
 ませんし、逆に深入りし過ぎては取り返しがつかなくなります。
 私は、狩猟民族が獲物を追いかけるように、成功するまで追求を止めないと
 いうことを原則としていますが、中には途中で撤退したものもあります。

 その場合に、なぜそういう決断をしたのかといいますと、「刀折れ、矢尽き
 た」という精神状態であったからです。
 物質的な要素はともかく、情熱がなければ、新しい事業や開発などできませ
 ん。
 もし、情熱が尽きるような状態まで追求して、それでも成功しないのであれ
 ば、私は満足して撤退します。

 根の限り戦うことが、まず前提です。
 しかし、すべてが思い通りになるわけがありません。そのときに、真の引き
 際が判断できなければなりません。
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経営では、どんな時代でも、予期せぬ落とし穴、技術革新、天災等によって、
まったく収益が見込めなくなる事態が起こることがあります。
ましてや、現代のような社会構造の変化、技術革新の進む時代ではなおさら
です。

そのような状況下で、何を基準に決断を下すべきなのでしょうか?

『松下幸之助に学ぶ指導者の三六五日』木野親之氏著 コスモ教育出版より
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 「君、それは自分で決断せんとあかんな」
 私が助言を求めに行った時に、幸之助に言われた言葉です。

 指導者たるもの人に助言を求めることも大切だが、
 決断は自分でしなければならないと教わりました。

 決断は指導者の一番大事な仕事です。
 決断を経営理念に照らして行えば、成功することは間違いありません。
 経営理念が熟慮の基(もと)となり、断行の勇気となるのです。
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経営理念に照らした時に、なぜ「攻める」べきなのか、なぜ「撤退」すべきな
のか、その本質的な理由に気付くことが出来ます。
そして、難しい決断の裏付けになりますから、勇気百倍です。

人生も経営も、決断という節目が多いほど、「しなやか」に成長しているよう
です。
又、その節目から大きな気づき、チャンスが生まれることもあります。

正に「決断は終わりではなく、始まり」です。

                       株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光
                                                                  
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