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【商業施設トレンド×出退店データ Vol.01】習い事費用の増加がもたらす商業施設への影響は!?

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少子化が進む一方で、1人の子どもにかける教育投資は年々増加しています。こうした社会的な背景は商業施設における出店動向にも少なからず影響を与えていると考えられます。

本記事では、弊社が毎月独自に調査・収集をした「SC FORCE」のデータベースを基に、習い事に関連した業種・ショップの出退店動向を分析します。

商業施設を運営するご担当者様にとって、リーシングや施設活性化の検討材料として、ご参考にしていただければ幸いです。ぜひ最後までご覧ください。

少子化でも子ども1人あたりの習い事費用は
年々増加している

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出典:ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査2024」(※26頁に記載)


まずは、子ども1人あたりの習い事費用が増加している背景について、どのような要因があるのかを掘り下げてみます。

どの世代が習い事費用の増加に影響をもたらしているか網羅的に確認するため、小学生~高校生までを対象とした調査である、ベネッセ教育総合研究所の「子どもの生活と学びに関する親子調査2024」を確認しました。

この調査によると、2024年の習い事費用は、2015年比で小学生~高校生までの全世代で増加しており、なかでも小学1年生~3年生の増加率が顕著に表れています。2024年には月額13,947円となり、2015年比で約3,000円の増加(1.27倍)、年間で約3万6,000円の増加です。

小学1年生~3年生での増加が顕著だったことを踏まえ、さらに年齢を下げて、未就学児の習い事費用についても見ていきます。

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出典:ソニー生命「子どもの教育資金に関する調査2025」


ソニー生命の「子どもの教育資金に関する調査2025」によると、未就学児の習い事にかけている費用は、年々増加していることが分かりました。2025年の月額は9,201円で、調査開始時の2016年の4,164円と比べて約5,000円の増加、おおよそ2.2倍となっており、未就学児の費用増加も全体を押し上げる一因となっていることがうかがえます。

上記2つの調査から、未就学児と小学1年生~3年生といった幼少期の早い段階で、習い事に通う子どもが増えており、それに伴って1人あたりの費用も増加している傾向があると読み取れます。

幼少期の習い事費用が増加している背景

幼少期の習い事費用が増加している背景として、まず挙げられるのは、早期教育への関心の高まりです。

昨今、テレビや本、SNSなどを通じて幼少期からの学びの重要性が発信されており、「うちの子の可能性を広げたい」「出遅れたくない」「脳が柔軟なうちに始めたい」「小学校入学前に最低限の読み書き・計算・英語に慣れさせたい」といった考えから、保護者の間でもこうした学びへの関心が高まりつつあると考えられます。こうした心理から、幼少期の早い段階から習い事を始める家庭が増えていると考えられます。

実際に、ベネッセ教育情報の「習い事についてのアンケート」によると、約75%の子どもが小学生になるまでに習い事を始めており、特に3歳~5歳のうちに始めるケースが多いようです。

また、共働きの家庭が増えたことにより、子どもの習い事に一定の費用をかけることを許容する家庭も増えていると推測されます。共働き世帯は世帯収入が相対的に高くなりやすく、教育や習い事への投資にも前向きで、子どもに対し「できるだけ良い環境を整えたい」と考える家庭も少なくないでしょう。

他にも、未就学児を対象とした習い事の選択肢が多様化していることや、子どもの数が少ない家庭が増える中で、1人ひとりに手をかけたいという思いも、幼少期の早い段階から習い事を始めさせたいという意識の高まりに影響していると考えられます。

出典:ベネッセ教育情報「習い事についてのアンケート」

商業施設における習い事に関連した業種の出退店動向

ここからは、商業施設における習い事に関連した業種の出退店動向を見ていきます。本記事では、弊社が提供する「SC FORCE(エスシーフォース)」を活用し、2017年1月~2025年3月までの動向をデータから読み解きます。

「SC FORCE」とは、全国3,500カ所の商業施設に出店する16万ショップ(325業種)の出退店データをBIで活用するクラウドサービスです。

「SC FORCE」において、子どもの習い事に関連したショップは、大業種「サービス」>中業種「カルチャー教室・学校」の中に分類されています。

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ここには、大人向けの教室も含まれますが、商業施設に出店している店舗数は2017年1月時点の4,937店舗から、2025年3月には7,013店舗へと、約2,000店舗増加(伸び率142%)と大きな伸びを見せている分野です。

コロナ禍を機に需要が拡大した「ペット」でも122.7%の伸びにとどまっていますが、「カルチャー教室・学校」はそれを大きく上回り、習い事費用の増加という社会的な流れが、商業施設における出店傾向にも何らかのかたちで反映されているように見受けられます。

「カルチャー教室・学校」における
小業種・ショップ別の動向

中業種である「カルチャー教室・学校」には、さまざまな小業種が含まれています。この分類だけでは大まかな傾向しか見えてこないため、ここからは小業種別に、商業施設における店舗数やその伸び率を詳しく見ていきます。

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まず、小業種の中で最も顕著な規模を示しているのが、「フィットネス・スポーツクラブ」です。直近の店舗数は1,662店舗に達しており、他の小業種を大きく引き離す規模となっています。伸び率も197.4%を示しており、継続的な店舗数増加がうかがえます。

次に、注目したいのが、2019年から店舗数が増え続けている「ダンス」です。2017年1月から、2019年の春ごろまでは、90店舗前後で推移していたのですが、同年の夏ごろから店舗数が増え始め、直近では191店舗まで規模が拡大しています。2019年の夏ごろから店舗数が増加した背景には、あるショップが大きく関係しており、詳しい内容は以下にて解説しています。

最後に、ご紹介したいのが「学習塾・予備校」です。前述した通り、昨今は早期教育への関心が高まっているため、小学校に通う前から思考力や学びの土台を育てることを目的に、未就学児が学習塾に通うケースも広がりを見せています。

実際に、未就学児向けに発想力や記憶力、表現力などを向上させる学習塾も多数展開されています。こうした背景も関係してか、店舗数は小業種の中で三番目に多い831店舗、伸び率も166.2%となっています。

以上の動向を踏まえ、上記で取り上げた3つの小業種における、注目のショップを見ていきます。

「フィットネス・スポーツクラブ」で注目のショップ

「フィットネス・スポーツクラブ」は、他の小業種を大きく引き離す規模となっていましたが、大人向けのショップも含まれています。

そこで、子どもの習い事に焦点を当ててショップ別の動向を見ると、「ネイス体操教室」(運営:ネイス株式会社)が躍進しています。2017年1月時点では4店舗のみでしたが、直近では65店舗まで拡大し、伸び率は驚異の1,625%に達しています。

「ネイス体操教室」は、子ども向けの一般的な体操教室とは異なり、幼児特性を理解したレッスンや声かけ、運動神経の向上に特化した「脳育体操」を取り入れているのが特長です。また、2歳~3歳向けのクラスも設けられており、幼少期から習い事を始める家庭が増えているなか、初めての習い事として選ばれる機会も多いと考えられます。

ビジネス面においては、フランチャイズによる展開が進んでいることが、この数年での店舗数増加につながっている可能性があると推測できます。(※フランチャイズ店は、65店舗に含まれておりません。)

「ダンス」で注目のショップ

「ダンス」は子ども向けのショップが多く、その中でも圧倒的な店舗数・伸び率を示しているのが、「セイハダンスアカデミー」(運営:株式会社セイハダンスアカデミー)です。

2019年の夏ごろから「ダンス」の店舗数が増え始めましたが、「セイハダンスアカデミー」も同じ時期から店舗数を伸ばしており、この成長をけん引する存在となっていると考えられます。直近での店舗数は63店舗となり、伸び率は484.6%です。

「セイハダンスアカデミー」は、ダンサー・振付師のパパイヤ鈴木氏がプロデュースする、子ども向けのダンス教室です。すべての教室が商業施設内にあるため、幼少期からでも安心して通える環境が整っており、共働き家庭など忙しい保護者にとっても空き時間を買い物や用事に充てられるなど、利便性の高さが特長です。

「セイハダンスアカデミー」が短期間で店舗数を拡大できた背景には、セイハグループの運営ノウハウや、商業施設との信頼関係などといった土台の強さがあると考えられます。

「学習塾・予備校」での注目ショップ

「学習塾・予備校」では、2つのショップの動向をご紹介します。

1つ目が、前述したセイハグループが運営している「そろばん教室88くん」(運営:セイハネットワーク株式会社)です。この小業種の中では、圧倒的な規模を誇り、直近の店舗数は167店舗です。毎年着実に店舗数を拡大しており、伸び率は491.2%となっています。

「セイハダンスアカデミー」と同様に、商業施設内にのみ展開しており、数字に興味を持ち始めた3歳からでも通えるようになっています。

また、セイハグループは2024年7月に「SEIHA ENGLISH PARK」を商業施設内に開校しました。英語を教えるのではなく、体験を通じて自然に身につける探求型のカリキュラムと、通い放題の仕組みを組み合わせた新しいスタイルの英会話スクールです。

2つ目は、小学1年生~6年生を対象とした、高知能児(IQ130以上)向けの英才教室「トイズアカデミー」(運営:株式会社TOEZ)です。最低限の勉強時間で知的能力を育てる教育メソッドを提供しており、効率よく力を伸ばせる点が特長です。

入室には条件があり、同社が運営する3歳〜6歳向け教室「キッズアカデミー」の卒業生は過去1年以内の検査でIQ130以上を満たしていることが求められ、それ以外の子どもは申込時の知能検査でIQ130以上の成績を残すことが求められます。

2020年7月に2店舗目を展開して以降、順調に出店を重ねており、現在までの伸び率は1,600%に達しています。トイズアカデミーは、入室に条件がある限定的な習い事教室ですが、同社は0歳からの「ベビーパーク」や、3歳〜6歳向けの「キッズアカデミー」といった年齢別の教室も展開しており、0歳〜12歳までを見据えた継続的な顧客獲得につながっていると考えられます。

商業施設での展開はまだ限定的だが
注目したいショップ

最後に、「SC FORCE」の新着ショップ機能を活用し、商業施設での展開はまだ一部にとどまっているものの、子どもの習い事市場で着実に店舗数を伸ばしているショップや、新しい切り口で注目されているショップをご紹介します。

biima sports

「biima sports(ビーマスポーツ)」(運営:株式会社biima)は、最新のスポーツ科学と21世紀型幼児教育学を融合した「総合キッズスポーツスクール」です。

大きな特徴は2つあります。1つ目は、野球・サッカー・テニス・体操など7種類以上のスポーツを約2か月ごとに実施し、運動能力を構成する7つの基本要素をバランスよく伸ばすプログラムを提供している点です。

様々な運動をバランスよく体験させたい保護者や、どの競技が子どもに合っているかを見極める目的で、幼少期から通わせる家庭も多く、初めての習い事として選ばれるケースもあるでしょう。

2つ目は、少人数グループで協力しながら課題解決に取り組む「プロジェクトラーニング型」の学習方法を採用しており、非認知能力の向上にも力を入れています。

現在は、フランチャイズ店を含め、全国で400教室以上を展開し、その数は年々増えて続けています。

ベネッセの英語教室 BE studio グローバル思考力特化校

「ベネッセの英語教室 BE studio グローバル思考力特化校」(運営:株式会社ベネッセビースタジオ)は、英語技能と共に「思考力」をグローバル基準にアップデートすることを目的とした、ハイレベルな英語塾です。

英語と日本語の両方を用い、自分の意見を論理的に伝える力や表現力を育むカリキュラムが組まれており、外国人・日本人講師による2名体制で指導が行われています。

将来の海外大学や国内難関大学への進学、グローバルな舞台での活躍を見据えて、英語力に加えて思考力・表現力を幼児期から大学受験期まで継続的に育てたいというニーズに応える内容となっています。

「ベネッセの英語教室 BE studio」はすでに多数展開されていますが、本特化校は2024年9月に開校したばかりにもかかわらず、すでに4店舗を展開しており、そのうち3店舗は商業施設内にあります。開校から短期間での出店実績を踏まえると、今後さらに店舗数が拡大していく可能性も高いでしょう。

まとめ

本記事では、子どもの習い事にかける費用が増加しているという社会的背景が、商業施設での出店動向にどのような影響を与えているのかを、データをもとに分析しました。

その結果、習い事関連のショップが含まれている「カルチャー教室・学校」は、サービス業種で最も店舗数が多く、伸び率も142%と好調でした。

その中でも、習い事費用の増加率が顕著だった幼少期から通える「ネイス体操教室」や「セイハダンスアカデミー」、「トイズアカデミー」などは、着実に店舗数を増やしています。また、「biima sports」や「ベネッセの英語教室 BE studio グローバル思考力特化校」も、商業施設での展開は限定的ながら、今後の広がりが期待される注目ショップといえるでしょう。

子ども向けの習い事に関連する出店の動きは、ファミリー層の来館促進や施設の価値向上にもつながる可能性があります。

そのうえで、商業施設は路面店に比べて安心・安全な環境で子どもが習い事に通えることや、保護者は習い事の待ち時間を活用して買い物や用事を済ませられる利便性などの魅力も多く、今後の動向にも引き続き注目していく必要がありそうです。

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