この連載もついに12回目、今回で完結となります。
そこで、今日は11回に亘ってお話ししてきたロジカルシンキングを実際に皆さんの仕事や生活に役立ててもらうために一番大切な点をお話ししたいと思います。
それは、「考える」を習慣にするということです。
ロジカルシンキングは知識ではなく技能です。
料理人が毎日キッチンに立って調理をするうちに包丁を使う技能を習得するように、何回も問題解決に取り組み、「考える」を習慣にすることで、問題の捉え方、真因を探る方法、解決策の発見方法が体にしみ込み、考える技能が身に付くのです。
ですから、日常的にロジカルシンキングの技法を使う習慣を身に付けることが大切です。
そのために次の二つのことをお勧めします。
(1)日常生活で問題解決に挑戦する
個人的なトレーニングになりますが、日々の生活の中で問題を発見し、解決してみることが凄く役に立ちます。
本当に小さなことから始めるのです。
例えば、整理整頓、洗濯物の干し方、献立の組み立て方、家族の会話、職場のコミュニケーション、新人の育て方、子供の躾...あらゆるフレームで日常生活を切り取ってみると問題はゴロゴロ転がっているのです。
今なら「新型コロナ感染予防対策」なんていうフレームで考えても問題は出てきます。
こうして出てきた問題を一つずつ解決していきましょう。
あくまでロジカルシンキングの手法に慣れることが目的の個人的なトレーニングですから、焦らずじっくりと本連載の第1回から順に進めてください
最初は簡単な、身近な問題から始め、成功体験を積むにしたがって、より大きな問題へ進むのです。
この方式で10個も問題を解決したら、しめたものです。
一段上がったところから物事を見ることができるようになり、多くの場面で自動的に頭が前向きに、解決策を導き出そうと周りはじめるようになります。
(2)一人一件一ケ月
組織としてロジカルシンキングを取り入れる場合に、こうしたスローガンが有効です。
言葉の通り、各人1ケ月に一つ問題解決を考えようという意味です。
これについても、最初は簡単なテーマから始めます。
「執務環境の整理」や「サーバ内のファイル格納方法の改善」といった身近なテーマが良いでしょう。
そして何度も成功体験を積んだ後、10ケ月目に一つ少し骨のあるテーマに取り組んでみる、それも3ケ月の期間で、というのが理想です。
最初は少し強引でも、社員一人一人に問題に取り組む習慣づけをすることが重要です。
最初は拒否反応を示す人も出ると思いますが、成功体験を重ねるうちに問題解決の楽しさがわかってきますので、前向きに取り組んでもらえるようになります。
社内の担当者はそのための雰囲気づくりに工夫し、モチベーションアップを促すことが何より重要です。
これを1年続けると、会社や組織は末端まで血液が巡るようになり、各現場で個々人が改善に取り組みながら業務を進める筋肉質な組織に脱皮することができるのです。
あらゆる産業について言えることですが、トップダウンよりもボトムアップで、日々現場に接している人が考えて、工夫し、改善を重ねる企業の方が最終的に生き残ると私は信じています。
非常に優れたリーダーが細部にわたって全て指示して業務を回して行く事例が沢山あります。
しかし、そうした会社は5年から10年くらいは上手く行くのですが、その後失速します。
流通業界ではそうした事例は枚挙に暇がありません。
何でも上から指示されているうちに現場は考えなくなるのです。
何も考えず、目の前で発生している問題に取り組もうとしないで「上がわかっていないから...」と諦めてしまう人達ばかりの会社はサスティナブルとは言えません。多くは早晩行き詰るでしょう。
現場に一番近い人が考える、工夫をする、改善をする筋肉質な会社になって初めて真のボトムアップ型の会社に生まれ変われるのです。
そのために、是非、このロジカルシンキングの手法を取り入れてください。弊社も微力ながらお役に立ちたいと願っております。
サポートが必要でしたら下記アドレスまでメールでご相談ください。
魚谷昌哉
米国国際ショッピングセンター協会(ICSC) 公認SC管理士
京都大学経済学部卒業後トヨタ自動車(株)を経て三井不動産(株)へ転職。
長年商業施設の開発、運営に携わる。
2012年に独立して(株)SCマーケティング総合研究所を設立。
「マーケテイングの革新と人づくり」をモットーにSC業界の人材育成に注力中。
近年は厚生労働省の人材育成助成金に適合した研修プログラムの開発やロジカルシンキング研修に取り組んでいる。
株式会社SCマーケティング総合研究所
https://www.sc-marketing.jp/
uotani-scmk@pcsu.jp