今やKPI目標はSC業界でも当たり前に設定するようになりました。
それでは、KPIの兄貴的な存在のKGIはどうでしょう?
残念ながら、あまり使われていないのが実情です。
しかし、しっかりと課題解決を行うためにはKPIだけでなく、KGIも含めて2段階に目標を設定することが不可欠なのです。
まずは、この二つの指標の意味について再確認しましょう。
ご存じのように、KPIはKey Performance Indicatorの略で、和訳すると「重要業績評価指標」となり、施策の実施状況を計測するために、実行の度合い(途中経過)を定量的に示す指標を意味します。
これに対してKGIはKey Goal Indicatorの略で、和訳すると「重要目標評価指標」となり、施策の目標(ゴール)を達成したか否かを定量的に表す指標を意味します。
ですから、この二つの指標の関係は、図のように、KGIは施策の目標そのもので、KPIはその達成のための手段の一つの実行度合いを示す指標の一つに過ぎないということになります。
単純化するとこの二つの指標は「目標」と、その目標達成のための「手段」という関係で繋がっているのです。
例えば、「ポイント機能付きのアプリの普及が進まない」という課題を解決するために、「目標」(KGI)として
Ⓐアプリ利用のポイント付与月間購買件数を倍増させることを設定し、
そのための「手段」(KPI)として
① アプリの月間ダウンロード数を倍増させる
② ダウンロードした会員の初回稼働率を3割向上させる
③ すでにダウンロードして稼働している既存会員の月間利用回数を3割増やす
の3つを設定したとします。
①と②で稼働会員総数を増やし、③で会員の利用を活性化するという標準的な戦略です。
月間購買件数=月間稼働会員総数×平均月間利用回数の式が成立していますから、この戦略で購買件数目標に到達させることが可能だと思われます。
このⒶと①、②、③との関係のように、「手段」を遂行した結果、「目標」が達成される明確な因果関係に、KGIとKPIを設定することで課題解決までの道筋がハッキリし、「迷路」にはまり込むことが避けられるのです。
ところが、このアプリの現場でよく見かけるのが、①アプリの月間ダウンロード数のみをKPIとして設定して、それに全力を集中してしまうケースです。
これでは、本来目標とすべき「月間購買件数」がどういう経路で増加するのか不明のままで、「いくらダウンロード数を増やしても、購買件数が増加しない」まさに「迷路」に迷い込んだような状況に陥ってしまうのです。
KPIのみ設定してKGIを考えなかった、つまり途中経過に力を集中して、いかにゴールするかという最も大切な所を考えなかったのですから当然の結果です。
皆さんにはこのような失敗を起こさないように、必ず、KPIの延長線上にKGIを設定することに留意いただきたいと思います。
魚谷昌哉
米国国際ショッピングセンター協会(ICSC) 公認SC管理士
京都大学経済学部卒業後トヨタ自動車(株)を経て三井不動産(株)へ転職。
長年商業施設の開発、運営に携わる。
2012年に独立して(株)SCマーケティング総合研究所を設立。
「マーケテイングの革新と人づくり」をモットーにSC業界の人材育成に注力中。
近年は厚生労働省の人材育成助成金に適合した研修プログラムの開発やロジカルシン キング研修に取り組んでいる。
株式会社SCマーケティング総合研究所
https://www.sc-marketing.jp/