社長の一言集

第101号 「正念場」・「修羅場」・「土壇場」

2014/10/31
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 「正念場」・「修羅場」・「土壇場」
                                                       2014年101号
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「人は人生の境地を知るために、三つの場を通る。」という話があります。
「正念場」・「修羅場」・「土壇場」です。
この三つの場を迎えた時に、それをどう受け止め、どう対応し、何を学んだかが、
人生の大きな分岐点となります。

■「正念場」は、「性根場」とも書き、自分の性根と深く向かい合って、答えを
 導き出す局面です。

■「修羅場」の語源は、古代インドの仏教の神話で、阿修羅王(あしゅらおう)
 と帝釈天(たいしゃくてん)の争いの場面を、その壮絶さから「修羅場」と現
 したそうです。

■「土壇場」は、罪人の刑を執行するために、土を盛って築いた壇の場所を意味
 する言葉で、どうにもならない場面や最後の覚悟を迫られる局面とされています。

経営活動の中で、「正念場」と向かい合うときは、経営理念が必要です。
未知なる未来へ向けた新規事業の取り組みや事業領域の再定義、統廃合等の大き
なリスクを伴う経営判断には、経営理念が意思決定の源となります。

「修羅場」と向かい合うときは、大義・戦略・戦術が必要です。
勝ち残るために、大将を誰にして、どこで、どのような武器を用い、どのような
組織で、何のために戦うかを決めなければなりません。

経営において、「正念場」と「修羅場」は、常に向き合い備える必要があります。
しかし「土壇場」は、「正念場」と「修羅場」に備えなかった時や間違った判断
をした時に向き合う事になる最後の状態です。

「正念場」と「修羅場」は、事業の成長が関わる機会の「場」であり、
「土壇場」は、事業の死につながる、迎えてはならない問題の「場」なのです。

2011年の東日本大震災では、「事後の百策より事前の一策」を誰もが痛感させら
れました。天災、人災、国災という「複合連鎖災害」で、その影響は今も続いて
います。
福島原発開発時の「正念場」で、安全性より経済性を優先するという理念なき判
断が「土壇場」を招いたのです。
しかし、その「土壇場」を救ったのは、多くの性根ある方々のお蔭です。

月刊誌「致知」に次のようなお話が紹介されていました。
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 山本のぶさんという盲目のマッサージ師がいた。
 私とは戦争前からのつき合いがあった。
 私の寺から500メートルほど離れた所に住んでいたが、
 空襲で家を焼かれて、寺へ避難してきた。
 手に持っていたのは、過去帳と杖、茶碗だけである。
 当時、寺には30人ほどの罹災者がいたが、警報が鳴ると、
 みんないっせいに逃げ出して、寺を守る者もいなくなった。
 その中で、山本さんだけは本堂に残ってお経を読んでいた。
 戦争が終わってからも、私は山本さんを呼んで、
 マッサージをしてもらっていたが、
 彼女が家の前の路地に電灯をつけたという話を聞いた。
 家といっても、もちろんバラックである。
 当時は金だけですまず、米かあるいは何がしかのプラスアルファを
 つけないと、電灯工事などしてくれなかった。
 ずいぶんなムリをしたんだな思い、さらに訊いてみると、
 電灯がついたのは家の前だけで、家の中にはついていないのだという。
 あと1メートルも延ばせば、家の中も明るくなるというのに。
 私は思わず「なんてバカなことをしたんだ」と言ってしまった。
 しかし、彼女の答えを聞いて、
 バカなのは自分であったと悟らされたのである。
 彼女は盲目である。
 したがって、家の中に電灯は必要ないわけだ。
 どこだって必要がない。杖が1本あれば足りる。
 しかし、彼女の家の前の路地は、バス通りへの近道になっていて、
 大勢の人が通るという。
 雨が降ると、ぬかるみになってみんなが難儀をするのである。
 電灯が1つでもあれば、それが少しは救いになるだろう、と彼女は考えた。
 自分にはまったく必要ない。
 しかし、他人に必要なことだから、実行したのであった。
 この話を聞いた時、私はいきなり
 心臓を突かれたような思いがしたものである。
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「一隅(いちぐう)を照らす」これも性根を表した素晴らしい言葉ですね。

今回は、2011年60号の「社長からの一言」をもとに加筆させて頂きました。
http://www.rhizome-e.com/topics/hitokoto/hitokoto060.html

                       株式会社リゾーム
                        代表取締役 中山博光

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