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【子育て世代の男女1,000人に聞いた】商業施設に行く理由、行かない理由 ~利用者へのアンケートから見えた商業施設に求められていること~

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商業施設を取り巻く環境は、ECサイトの拡大や消費行動の多様化により大きく変化しています。こうした状況の中で施設の魅力を最大化するためには、運営側の目論見だけでなく、実際に訪れる消費者の声を把握することが大切です。

そこで今回、1か月に1回以上商業施設を訪れる子育て世代の男女1,000人を対象にアンケートを実施しました。

本記事では、調査結果をもとに「商業施設に求められていること」を多角的に整理しご紹介します。

【アンケート概要】
調査期間:2025年8月27日~8月28日
調査対象:1か月に1回以上商業施設を訪れる、子どもを持つ20~59歳の男女(全国)
有効回答数:1,000人
調査主体:株式会社リゾーム
調査方法:アンケート調査サービスを利用したインターネット調査

子育て世代の男女1,000人に聞いた
「商業施設アンケート」

今回のアンケートでは、次の3つのテーマについて質問しました。

Q1:商業施設に訪れる理由(来館理由)
Q2:訪れるのをやめた/先延ばしにした理由(来館を控える理由)
Q3:ECサイトより商業施設で買う理由(商業施設の強み)

ここからは、各問いの結果を詳しく紹介します。

来館理由は「購入したい商品がある」が
他を大きく引き離し1位

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商業施設に訪れる理由としては、「購入したい商品があるため」が55.9%で、他を大きく引き離し1位となりました。多様なショップが並ぶ商業施設だからこそ、「欲しい商品があるから行く」という動機が、やはり一番の理由になっているようです。

次いで、「イベント・セールがあるため(35%)」が選ばれています。1位とは約20ptの差があるものの、イベントやセールが来館を強く後押ししていることが分かります。

その後は、「利用したい飲食店があるため(32.8%)」「利用したいサービスがあるため(29.8%)」と続き、いずれも商業施設内のショップ利用を目的とした理由が上位を占めています

また、5・6位に選ばれた「家族や友人と過ごすため(28.3%)」「子どもと楽しむため(25.5%)」は、これまでの「何をするか」という回答とは異なり、「誰と過ごすか、どう楽しむか」という視点が表れています。

一方で、ワンストップショッピングを強みとする商業施設ならではの「用事をまとめて済ませるため(20.1%)」や「施設の雰囲気や非日常を味わうため(15.6%)」は、来館の中心的な動機ではなく、付随的な理由として挙げられる傾向が見られました。

来館を先延ばしにした理由は「混雑」「高い(駐車場・価格帯)」「行きたいショップがない」が上位

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商業施設に訪れる予定をやめたり、先延ばしにした理由として最も多かったのは、「館内の混雑(41.5%)」でした。次いで「駐車場が混雑している・料金が高い(35.2%)」が挙げられています。

混雑は単に人が多いというだけでなく、レジや飲食店での待ち時間、駐車場での待機や移動のしづらさといった不便さを伴います。特に子ども連れの世帯にとっては、長い待ち時間や混雑した空間での移動が大きな負担となりやすく、結果として来館を控える要因につながっていると考えられます。

3番目に多く選ばれた「価格帯が高い(34.5%)」については、様々な視点が考えられますが、利用者ごとの価値観や生活スタイルによって受け止め方が分かれる部分となっています。

一方で、低価格帯のブランドや手頃なショップをラインナップに含めることで、「全体的に高い」という印象を和らげることもでき、来館者の施設に対する印象が変わります。

加えて、「行きたいショップがない(33.9%)」も2・3位とほぼ同水準の割合で選ばれており、その次に多かったのは「イベント・セールがない(25.1%)」です。

また、「子ども向け設備やファミリー対応が不十分(14.9%)」や「快適に過ごせない(11.6%)」といった項目は一部に見られるものの、ファミリー層の来館を左右する要素として注視が必要です。

ECサイトよりも商業施設で買う理由は
「当日入手」「現物確認」「比較・体験」が上位

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3つ目の問いである、ECサイトよりも商業施設で買い物をする理由は、「欲しいものが当日手に入る(46.3%)」が最も多く選ばれました。ECサイトでは、早くても翌日の受け取りになることが多いため、当日入手できることは商業施設を選ぶ大きな理由となっています。

同程度に多く選ばれたのが「現物を確認できる(43.7%)」です。これはECサイトでは得られない価値であり、サイズ感や質感を確かめてから購入したいというニーズが強く、この点が重視されている傾向があると考えられます。

次いで、「その場で商品を比較できる(35.7%)」「試着・試飲・試用などの体験ができる(29.4%)」が選ばれており、これら上位の理由はいずれも、ECサイトにはない価値を求めて商業施設で買い物をしていることがうかがえます。

また、割合としては多くありませんが、「ネットよりも効率が良い(14.2%)」を選んだ方も一定数おり、食品から日用品、衣類まで多様なショップが揃う商業施設ならではの利点が表れています。

アンケートから見えた課題と気づき

本アンケートから見えた1つの気づきは、来館する理由と来館を先延ばしにした理由が必ずしも同じではない点です。

来館理由は「購入したい商品があるため」という購買意欲の高さを示す回答が多く見られましたが、先延ばしにした理由としては「館内の混雑」や「駐車場の混雑・料金が高い」が挙げられました。つまり、「商業施設で購入したいものはあるが、混雑で時間がかかりそうだし疲れそうだから、今回はやめておこう」といった心理的なハードルを、いかに乗り越えてもらうかが重要だといえます。

このように、商業施設の「強み」と「弱み」を正しく把握し、強みをさらに伸ばしつつ、弱みを和らげる工夫を行うことが来館者数の拡大にも寄与すると考えられます。

ここからは、アンケートで見えた弱みの部分である、「館内の混雑」と「駐車場の混雑」について、改善に取り組んでいる商業施設の事例をいくつかご紹介します。

館内混雑を解消するための取り組み事例

まず、館内の中でも特に混雑が目立つのはフードコートです。子育て世帯にとって利用しやすい場所であるため、混雑緩和は大きな課題といえます。

その対策の一例として、実際に商業施設で導入が進んでいるのが「モバイルオーダーシステム」です。フードコートの混雑は店頭での行列が要因となることも多いため、自席で注文から決済まで完結できる仕組みは有効です。これにより、商品が届くまでの待ち時間を大幅に短縮でき、結果としてフードコート全体の回転率を高め、混雑緩和につながっています。

また、子育て世帯にとっては、トイレや授乳室の混雑も気になるポイントです。単純に数を充実させるというのも手ですが限界があるため、利用時間の集中を避け、分散・平均化させる工夫によって混雑を緩和することが求められます。

具体策として、ある商業施設では館内すべてのトイレや授乳室、ベビーカー貸出台数などの「利用状況をリアルタイムで可視化するサービス」を導入しています。来館者は館内のデジタルサイネージやスマートフォンから利用状況を確認できるため、待ち時間を減らし、より快適に利用できる環境づくりにつながっています。

駐車場混雑を解消するための取り組み事例

駐車場の混雑緩和に向けては、さまざまな施設で取り組みが進んでいます。代表的なのが、チケットレスシステムの導入とAIカメラ・センサーによる混雑予測と可視化です。

従来の駐車場では、出庫ゲートでの駐車券の挿入や精算に時間がかかり、後続車両の渋滞を招くケースが少なくありません。チケットレスシステムを導入すれば、ナンバープレート認識や事前精算によってスムーズに出庫でき、結果として駐車場全体の回転率向上にもつながります。

また、AIカメラやセンサーで駐車場の混雑状況を可視化することで、来館者は最適な出庫のタイミングや出口を判断でき、混雑の分散にもつながります。館内のデジタルサイネージやアプリで各出口の状況を確認できる仕組みは、来館者の利便性を高める有効な手段です。

特に忙しい子育て世帯にとって、待ち時間を伴う駐車場の混雑は来館をためらう要因となりやすいため、このような取り組みは施設運営において重要な意味を持つといえるでしょう。

アンケートから見えた商業施設に求められること

Q1(来館理由)の結果からは、「購入したい商品がある」「利用したい飲食店がある」「利用したいサービスがある」といった、商業施設内のショップ利用を目的とした項目が上位に挙がりました。

このことから、来館者が商業施設に期待しているのは、自身の目的に合ったショップが出店していることだといえます。そのためには、立地特性や主要ターゲットを踏まえ、地域ごとに最適なショップ構成を設計するリーシングが重要となります。

また、Q3(商業施設の強み)からは、ECサイトでの購買が一般化する中でも、商業施設ならではの価値が見えてきました。

最も多く選ばれた「当日入手」を実現するには、来館者が求めるブランドやショップを揃えることが欠かせません。例えば、「特定ブランドのTシャツが欲しい」というニーズがあっても、そのブランドが出店していなければ来館にはつながりにくいでしょう。この点は、前述した「消費者のニーズを的確に捉えたリーシング」の重要性と重なります。

さらに、「比較」や「体験」といった理由も上位に挙げられました。ECサイトでは得られない、実物を手に取って比較することや、試着・試飲・試用などの体験を提供できるショップを誘致することで、商業施設ならではの強みをより発揮していくことが期待されます。

総じて、アンケート結果からは消費者ニーズに沿ったショップを誘致できるかどうかが、商業施設の成否を分けるカギとなります。

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まとめ

本記事では、子育て世代の男女1,000人を対象にしたアンケートの結果から、「商業施設に求められていること」をいくつかの視点で分析しました。

そこから見えた大きな気づきは、来館理由と来館を先延ばしにする理由が必ずしも一致しないという点です。そのため、来館を促す「強み」と、来館を妨げる「弱み」の両面を把握し、それぞれに向き合うことが重要といえます。

さらに、ECサイトでの購買が一般化する中で、商業施設での購買を拡大するには、「施設ならではの価値」を高める取り組みが欠かせません。

消費者の声を反映することは決して容易ではありませんが、こうした分析が自施設の魅力を最大化するための一助となれば幸いです。