テーマは「答えを出すべき問」と考える
「ロジカルシンキングで一番大事なのは何か?」と訊かれたら、私は躊躇なく「テーマ選び」と答えます。
「テーマ選び」はまさしく全体を左右する重要事項です。それだけに熟考を重ねて疑問の余地をなくさなければなりません。
しかし、「テーマ」を考えろといわれても抽象的で、漠としていてなかなか考えが進まないものです。
ですから私は「テーマ」を「答えを出すべき問」と言い換えることをお勧めしています。(これを専門用語でイシューといいます。)
問と言い換えることで「○○するにはどうすればいいのか?」「○○を達成するために何をなすべきか」といった前向きなアクションを考えることにつながりますし、自分が目指している状態=「あるべき姿」をイメージすることにもつながります。
つまり、自分の業務の中で実際に困っていることや手が付けられていないことを、この機会に見つめなおして何を目指すべきなのか、何があるべき姿なのかを明確にすることでテーマが定まるのです。
大いに困ろう!
ところが、「業務の中で実際に困っていることや手が付けられていないことは何ですか?」と尋ねると「特にありません」という答えがよく返ってきます。
「トヨタ生産方式」を考案した大野耐一さんの有名な言葉に「困らない奴ほど困ったやつはいない」というのがあります。
「特にありません」と答えた人は、大抵の場合「顕著なトラブルが起きていない」から困っていないと思っているのです。
しかし、その人が求められているのは「現状を継続すること」ではなく「現状を改善してより良くすること」ではないでしょうか?
改善しようとする意識があれば常に「困った」状態になります。
ですから、「特にありません」と言う人は現状に満足して、改善する気のない人、または、目指しているものがハッキリしない志の低い人だと思われるので「困ったやつ」と呼ばれるのです。
このようにテーマ選びは日頃の意識や職場環境に強く影響されるものですから、ロジカルシンキングのスタートで悩んでもらうと同時に高みを目指す意識を持ってもらうことが重要なのです。
魚谷昌哉
米国国際ショッピングセンター協会(ICSC) 公認SC管理士
京都大学経済学部卒業後トヨタ自動車(株)を経て三井不動産(株)へ転職。
長年商業施設の開発、運営に携わる。
2012年に独立して(株)SCマーケティング総合研究所を設立。
「マーケテイングの革新と人づくり」をモットーにSC業界の人材育成に注力中。
近年は厚生労働省の人材育成助成金に適合した研修プログラムの開発やロジカルシンキング研修に取り組んでいる。
株式会社SCマーケティング総合研究所
https://www.sc-marketing.jp/